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きょういく特報部

バイトの悩み、高校お助け 時給低い・休めない・残業多い

2010年9月6日

 夏休みをきっかけにアルバイトを始めた高校生も多いだろう。自分で自由になるお金を稼ぐ体験は貴重だが、「テストが近いのに休ませてくれない」「サービス残業を押しつけられる」「バイト代が最低賃金以下」などで困った場合、どうすればいいのか。生徒たちのアルバイト体験を通して「働くルール」を学ぶ授業が始まっている。(中村真理子)

■総合学習「権利」教える

 千葉県立犢橋(こてはし)高校では夏休みのある日、9月の文化祭の準備で集まった生徒たちが、バイトの話で盛り上がっていた。

 7月からファミリーレストランで働き始めた1年生の男子生徒(16)が口を開いた。「研修中なので」と時給は750円。いつ研修が終わり、契約上の時給800円になるのか、自分ではよくわからないまま働いている。店で使う靴の代金が給料から引かれそうだ、という。

 生徒会顧問の角谷(すみや)信一教諭(56)が「それは支給してもらえないの?」と聞くと「エプロンはもらうけど靴は買わされるみたいです」。

 角谷教諭の周囲では、よくこんな会話が飛び交う。きっかけは2005年から始め、今は1年生の総合的な学習の時間で取り組む「働くルール」の授業だ。「卒業しても役に立つことをしよう」と始めた。本来の担当は日本史だが、「日本史より、よっぽどみんな真剣に聞いている」という。

 「アルバイトでも半年以上同じ職場で働いている場合、有給休暇が取れるよ。知ってたらトクするよ」と教えると「バイトで有給なんて本当にあるんですか」と何度も質問にくる。給料明細を見ながら、有給休暇の欄があることを確認。それでも「うちの店長は高校生の分際で有給休暇なんてない、と言ってました」という報告を受ける。廊下ですれ違いざまに「どうしたら時給あがるの?」と聞かれることもある。

 1日働いて15分しか休憩がなかった。午前2時まで働かされた。サービス残業が5時間……。「テスト期間中も休みがもらえなかった」とこぼす生徒も。角谷教諭が店長に直談判するわけにもゆかず、「もどかしさは残るが、友だち同士でもバイトの問題を話すことが大切だ」と考える。

 昨春には、ほかの学校でも使えるように、クイズ形式で労働法を学ぶ本「絶対トクする! 学生バイト術」(きょういくネット)を出した。

 卒業後も、多くの子にとってアルバイト生活は続く。一生がバイト生活という人生も少なくない世代だ。「働くルールを知っていれば、間違っていると声を上げたり、誰かに相談したりできる。泣き寝入りしないために高校時代に学んでほしい」

■「私、最低賃金より低いよ」

 「店の品物を壊したとして、その分賃金をカットされたけどしかたない。○か×か」

 神奈川県立田奈高校では1年生の総合学習の時間に、バイト先のトラブルを題材にしたクイズをしている。

 同校では1年の終わりで4分の3の生徒にアルバイトの経験がある。「卒業してからではなく今、労働法を学び、自分のものにしなければいけない」と担当する吉田美穂教諭(45)。

 当初は、正社員を想定した教材を使っていた。だが、「正社員で働く」ことにピンとこない生徒もいるため、担当の教員たちは4、5年前から、非正規雇用の働く権利も考えられるよう教材を作り直してきた。

 その一つが、「アルバイター、フリーターの権利を考えよう!」というクイズだ。「朝礼や後片づけは労働時間に含まれない」「連続勤務6時間30分で疲れます。休憩時間は要求してもいいでしょうか」など、全部で28問。最初の「店の品物を壊してしまった」ケースの答えは「×」。しかし7、8割の生徒が「○」と間違えてしまう。

 授業では、生徒にも同じような経験がないか発言させる。ある生徒はバイクで配達中に事故に遭い、「壊したバイク代で罰金3万円」と言われて払ってしまった。授業で神奈川県の最低賃金を知って、「私、それより低いよ」と驚き、その後、店長と交渉して時給を上げた生徒もいる。

 「授業であんな話をした、と覚えていてくれたら、社会に出ても注意できるし、何かあれば相談してくれる。弱い立場の彼らこそ労働法が必要なのです」

■現実を知る好機 NPOの活用を

 本田由紀・東京大学教授(教育社会学)の話 高校生のアルバイトといえば「学校では黙認されるもの」で前面にはあまり出てこない。しかし、多くの高校生がバイトをしている現実から目を背けるのではなく、仕事の世界の現実について学ぶ際の素材として活用した方がいい。働く者の権利や労働法を学校で学んだからといって、社会や個人の状況が大きく改善するとは限らないが、中学校や大学でも繰り返し教えて現代社会の課題を伝えていくべきだ。

 アルバイトをしている子たちの多くは家計が苦しい。「様々な困難に直面しがちな生徒たちを力づけたい」という教員の切実な思いから始まっている地道な授業の取り組みは重要だ。

 若者の労働支援のための出前授業や労働相談の活動をしているNPОに教材づくりなどで協力してもらえば、先生自身も学べて、多くの学校で取り組みが広がるのでは。

〈高校生のアルバイト、ここに注意〉

18歳未満の年少者については、成長を阻害しないよう、労働基準法で以下が定められている。

・1週間の労働時間は40時間、1日の労働時間8時間まで。時間外労働、休日労働はできない。

・原則として午後10時から翌日午前5時までの深夜時間帯の仕事は禁止。

・危険、有害な業務は禁止。

たとえば、重量物(男性30キロ以上、女性25キロ以上)、有害物・危険物の取り扱い業務、深さ5メートル以上の掘削した穴や坑内での業務、バー・キャバレーなどの遊興的接客業など。

(角谷教諭の著書より)

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