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きょういく特報部

小学校に慣れよう 小1プロブレム試行錯誤

2010年11月1日

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写真:近くの小学校の教室で保育を受ける東京都品川区立伊藤保育園の園児たち。「ジョイント期カリキュラム」の取り組みだ=20日、花野写す拡大近くの小学校の教室で保育を受ける東京都品川区立伊藤保育園の園児たち。「ジョイント期カリキュラム」の取り組みだ=20日、花野写す

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 小学校に入った子どもたちが、授業中に座っていられない。教師の話を聞かない。そうした「小1プロブレム」を解決しようと、各地の学校や幼稚園、保育園でいろいろな取り組みが始まっている。園児と小学生を交流させたり、入学直後は地域別の「仮クラス」で学校になじませてから正式なクラスに移したり。家庭でも入学前にできる対策がある。

■授業中に立ち歩く

 静岡県の公立小学校の40代男性教諭は、5年前に小1のクラスを担任した時、男児の一人に手を焼いた。

 母親が毎朝、教室前の廊下まで連れてくるが、母親のひざに抱きついて離れない。なんとか引き離して席に座らせても、「お母さん」と大声で泣き叫び、授業ができない。学級支援員の女性が声をかけたり、ひざに乗せてあげたりして、落ち着かせた。「親離れができない子は昔からときどきいたが、これほどひどいのは初めて。これが『小1プロブレム』なのかな、と思った」と教諭は振り返る。

 そもそも、小1プロブレムとはどんなことを指すのだろう。

 東京学芸大学のプロジェクトチームは2007年秋、全国の市区町村教育委員会にアンケートで聞いた(複数回答)。1156教委から回答があった。

 最も多かったのは「授業中に立ち歩く児童がいる」(930件)。続いて「学級全体での活動で各自が勝手に行動する」(881件)、「良い姿勢を保てず、机に伏せたり、いすを揺らしたりする児童が多い」(593件)、「教員の指示が全体に行き届かない」(520件)などが目立った。

 プロジェクトチームの報告書によると、「小1プロブレム」が「学級崩壊」とは別のものとして社会の注目を集め始めたのは1999年以降だ。

 子どもは生活の中心が遊びから学びに変わることに戸惑う。学校の側から見れば、家庭のしつけが足りず、学習に必要な「我慢」ができない子が多いと映る。「程度はともかく、昔からあったんじゃないですか」「小1プロブレムってよく言うけど、小学校に入ったばかりの頃は落ち着かなくて当たり前」と口にする現場の先生もいる。

 行政の側が心配しているのは問題行動の頻度だ。

 東京学芸大のアンケートでは、「現在発生を確認している」は20%、「以前はあったが、今はない」が21%だった。

 東京都教委が昨年7月に実施したアンケートでは、公立小学校長の24%が小1のクラスで問題行動があると回答。約4校に1校で起きていることになる。

 こうした状況を受け、昨年4月に施行された国の幼稚園教育要領と保育所保育指針には、小学校との連携や交流の必要性が明記された。

 各地の自治体の対策も本格化している。

 横浜市立屏風浦(びょうぶがうら)小学校では08年春から、入学後2〜3週間、通学地域別の仮クラスを三つ作っている。クラスに顔見知りの近所の子が多くなるから、集団生活になじみやすい。1年生の担任全員が三つのクラスに出入りし、顔と名前と性格を把握することで、のちに本クラスを編成する際の参考にする。

 同市教委によると、市内345校のうち十数校がこうした仮クラスを編成している。ただ、「仮クラスで築いた友達関係をリセットするのは子どもにとってストレスになる」という理由から取りやめた学校もあるといい、試行錯誤が続く。

 文部科学省と厚生労働省が09年3月に公開した幼保と小学校の連携事例集には、5歳児と小5が休み時間や行事を通じて交流する「5・5交流」(大津市)や、小学校の教員を1年間幼稚園に派遣して研修する(山口県)など、11の事例が紹介されている。

■園児のうちに実体験

 幼稚園・保育園から小学校へスムーズに橋渡しする工夫を凝らしている現場を訪ねた。

 今月20日、東京都品川区立三木小学校。モーツァルトやベートーベンの肖像画が並ぶ音楽室で、21人の保育園児が小さな親指を動かしながら歌った。

 「お父さんどーこ お父さんどーこ こーこだよ」。5本の指の呼び方を覚える歌だ。

 隣にある区立西品川保育園の年長児に、小学校の雰囲気に慣れてもらうための試みだ。

 同校の音楽教諭、間中ひろみさん(55)が「先生も楽しかったよ。またきてね」と締めくくると、園児たちは「はーい」「またくるよ」と声を張り上げた。

 間中さんは「雰囲気に慣れて、心の壁を取り除くことが大事。小学校は楽しいんだな、と思ってもらえれば、しめたもの」と話す。

 この取り組みは、4月に三木小の中に同保育園の分園ができたことがきっかけで始まった。

 年長児は毎朝いったん本園に登園した後、午前8時半から午後3時すぎまで分園で過ごす。給食は小学校と同じ献立を食べる。園児と児童が一緒にプールで遊んだり、本の読み聞かせをしたりといった交流行事も月1回以上、進めてきた。

 山口睦子園長は「園児が落ち着いて、たくましくなってきたと感じる」と話す。一方、林誠校長は「最初は安全面などの不安があった」。しかし、校庭での遊び時間は分けていて、けがなどの事故は起きていないという。「小学生たちも、園児と触れ合うことで年上としての自覚が芽生え、しっかりしてきた」

 品川区では三木小に限らず、近隣の園と小学校同士の交流を進めている。今月、同区は幼保小連携のための区内共通の「ジョイント期カリキュラム」を作った。

 黒板が正面にある学校の教室を意識して保育室でも「正面」を決めておく▽いすに座って活動する時間を増やす▽園児の氏名を書いた張り紙やカレンダーなどを使って文字や数字への関心を高める、といった工夫を、園側に求めている。(花野雄太)

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