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きょういく特報部

小さい学校、集まって授業 宮崎県五ケ瀬町 年10回グループ学習

2010年11月29日

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写真:G授業の小4道徳多人数授業。43人を2人の教員が教えた=19日、宮崎県五ケ瀬町立三ケ所中拡大G授業の小4道徳多人数授業。43人を2人の教員が教えた=19日、宮崎県五ケ瀬町立三ケ所中

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 山あいの過疎の町、宮崎県五ケ瀬町の授業改革が注目を集めている。小規模校を統廃合せず、そもそも少人数授業になっている利点を生かしつつ、子どもをバスで1カ所に集めて多人数授業を組み合わせる「G授業」(Gは五ケ瀬の頭文字)。教師が説明せず、子ども一人ひとりが資料を読んで教え合う「協調学習」。いずれも常識を覆す試みだ。各地から150人余の教育関係者が集まった19日の研究会で、その現場を見た。

◆細かい指導・多様性「両得」

 朝9時、町役場近くの三ケ所(さんがしょ)中学校にスクールバスが次々と着き、赤い体操帽の子どもたちが降りてきた。「おはようございます」と元気な声が響く。集まったのは、町の小学校4校、中学校2校の全児童生徒374人。どの学校も1学年1学級しかない。

 この日は4小学校の4学級から集まった4年生43人に、2人の担任が道徳の多人数授業をした。残る2人の担任は同じ時間に、6年の担任、空き時間の中学教師らを加えた計11人で6年生48人に算数を教えた。こちらは、3〜7人の10集団に分けた少人数習熟度別授業だ。

 さまざまな考えを出し合える多人数指導と、細かく教えてもらえる少人数授業を組み合わせて一挙両得を狙った。

 町がG授業を始めたのは2008年。毎年約10回ずつ重ねてきた。発案したのは日渡円(ひわたしまどか)教育長だ。着任当時、校長らから聞いたのは「小規模校だから社会性が育たない」「切磋琢磨(せっさたくま)がなく不利」という声だった。

 たしかに町の学校はどこも小さい。が、見方を変えると常に少人数指導が成立しているともいえる。そこに多人数指導の機会を設ければ、多様な授業の形がつくれ=図=、単元の内容ごとに最適な人数を割り出せると考えた。

 普通なら多人数授業をしたければ、学校を統廃合するところだ。教員の定数も現在6校で79人なのが34人になり、人件費などを節約できる。だが、別の角度から見ると、子どもの数に比べて教員が多いという小規模校の強みが消え、細かな指導ができにくくなる。そこで3台のスクールバスで集まる方式を選んだ。

 「小さいことはいいことだという『コロンブスの卵』の発想」と日渡教育長。授業後の研究会では参加者から「ぜいたくな授業」という声が相次いだ。

 「我が町のG授業」をする自治体も現れた。広島県安芸太田町で、今年から中学校区単位で小学校が集まる授業に取り組んでいる。

◆知識持ち寄り探る

 町の改革は授業の形だけでなく、協調学習の考え方に基づく授業の方法にも及ぶ。教師が全員に一斉に教え、子どもは受け身のままというスタイルからの脱皮を目指す。指導するのは東京、京都、早稲田大などでつくる「大学発教育支援コンソーシアム」(CoREF)を統括する推進機構で副機構長を務める三宅なほみ東大教授(学習科学)だ。

 子どもたちを班に分け、まず班ごとに観点の違う資料を配って異なる知識を学ばせる。その後、班を組み替え、一人ひとりが違う班から持ち寄った知識を集めて答えを探る=図。

 19日は小5の20人を対象にした社会の授業で、「なぜ今、日本の自動車産業はハイブリッド車で勝負しているのだろう」をテーマにした。

 まず3〜4人の班に分かれ、ガソリン、ハイブリッド、電気自動車について「環境への影響」「普及台数」「日本の技術力の高さ」の3種類の資料を、班ごとに1種類ずつもらい、読み込んだ。

 続いて新しい班に組み直し、それぞれが元の班の資料を他の子に説明。知識を集めて「ハイブリッド車は日本の技術の高さから生まれ、ガソリンに次いで普及し、電気自動車に次いで環境に優しいので日本は力を入れている」という結論に達し、各グループが自分の言葉で発表した。

 研究の取り組み方も新しい。五ケ瀬町が呼びかけ、改革に熱心な和歌山・広島・福岡・大分・熊本・宮崎各県の計3市6町=地図=の教委でチームを組み、12年までの2年間で授業モデルの開発をCoREFと共同で目指す。CoREFは、このチームで取り組んだ授業の記録を公開している(http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/6143)。

◆五ケ瀬町教委のアドバイザーを務めてきた兵庫教育大の加治佐哲也学長(学校経営・教育行政)の話 G授業は、学級の適正規模は何人かについて、財政からではなく子どもの立場から考えた仕組みだ。協調学習の研究は、大学という外部の力を活用し、教委の横の連合で取り組む点で興味深い。小さい自治体の教委は指導主事も少なく弱体だと言われてきたが、ここまでできるという好例といえる。国や県から下りてくる方針に従うのではなく、地方分権の時代、地域に根ざし、持っている資源を最大限に生かしたボトムアップの改革として注目したい。(編集委員・氏岡真弓)

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