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通信制高 増える「休眠生」 履修登録しないまま長期在籍

2010年12月6日

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写真:宮崎県立宮崎東高校通信制のスクーリング。数学に悩む生徒に教師が個別指導=宮崎市神宮東1丁目拡大宮崎県立宮崎東高校通信制のスクーリング。数学に悩む生徒に教師が個別指導=宮崎市神宮東1丁目

表:  拡大  

 通信制高校で、在籍期間を見直す動きが広がっている。「働きながら学ぶ」場として多くの学校が長期の在籍を認めてきたが、活動実績のない生徒が急増しているためだ。そうした生徒を「休眠生」と呼び、12年間の在籍を認めてきた宮崎県立宮崎東高校でも2012年度から見直す。様変わりする通信制の現状を見た。

■不登校経験 自学自習が困難

 通信制は自学自習が基本。科目ごとのスクーリング(登校しての面接指導)とリポート提出、定期試験で単位を取得する。これらの学習活動をしないまま次年度の履修登録をしなかった生徒を、宮崎東高では「休眠生」と呼ぶ。

 休眠から12年目までに計4回はがきを送り、学校復帰を呼びかけてきた。津隈亮典教頭(58)は「様々な事情を抱える生徒が来る。仕事や健康面、家庭や経済上の理由で活動を一時やめても再開できるよう配慮してきた」と言う。

 休眠生は増え続け、2006年度のピーク時は1723人。実際に活動する生徒(活動生)約1千人を大きく上回り、「多すぎる」と県議会で対策を求められた。現状を把握できない生徒の増加は校内でも問題になり、在籍制度のあり方を検討。休学届を出さずに履修登録をしなかった場合は除籍とし、休学も連続2年までと改め、12年度から実施する。来年度まで休眠生に周知を続ける。

 01、02年度の休眠生は700人そこそこだった。急速に増えたのはなぜなのか。

 活動生の平均年齢を見ると今年度は19.8歳で、20年前の28.1歳から10歳近くも低年齢化が進んだ。年齢別に見ると、今年度は未成年が7割を占めるが、1990年は5割を切り、40代や30代の働き盛りが多かった。職歴からも働きながら学ぶ様子がうかがえる。たとえば准看護師は153人。正看護師になることを目指して、勤務のかたわらに学んでいた。

 現在は新入生の3分の1近くが中卒と同時に来る。全日制で続かずに転編入する生徒も増えた。新入生の3〜4割は不登校経験者という。「基礎学力が不足し、自学自習が難しい生徒が入ってきている」(津隈教頭)という。

 かつては、そうした生徒を年配の生徒が支えていた。星原良治生徒指導主事(51)は「(登校の機会に)一緒にやろうと声をかけてくれていた。今は生徒の関係が希薄になった」と言う。伊藤八州彦教務主任(47)は「今いる生徒へのかかわりを密にして、学習を継続していけるように力を注ぐ必要がある」と話す。

■在籍上限設ける動き

 全国高校通信制教育研究会(全通研、114校加盟)は08年度、在籍期間の上限を設けているかを調べた。回答した111校のうち55校は「定めていない」と答えた。期間を定める56校では8年が最も多く、最長は20年。受講登録をしない生徒の在籍を認めている学校も73校に上った。

 全通研は「昔は勤労青少年が多く、仕事と両立が難しい事情もあり、卒業を急がない土壌があった」と話す。

 だが、近年は見直す動きが広がる。在籍期間を設けていない埼玉県立大宮中央高校通信制は、来年度から最長13年に改める。年度末の履修指導を受けて次年度の学費を納めることを求め、音信不通が4年間続くと除籍にする。活動実績がないのに警察から生徒の身元引き受けを求められるといった事例も増え、「区切りが必要と判断した」と教頭。

 熊本県立湧心館高校は在籍8年で学習継続の意志がないか音信不通の生徒は除籍にする規定があるが、厳格に適用してこず、05年度に休眠生が2千人を超えた。07、08年に計1179人を除籍にした。

 「休眠」を認めない学校もある。東京都立新宿山吹高校は、手紙を送っても音信不通の生徒は年度末で退学。福岡県立博多青松高校も休学届を出さずに履修登録をしなかった生徒は退学にしている。

■7年ぶり復学 宮崎市の27歳

 宮崎東高は全休眠生に制度変更のはがきを送っている。昨年度は102人から「復学したい」と回答があり、61人が実際に戻ってきた。

 その一人、宮崎市の長友大輔さん(27)は7年ぶりに復学した。中学卒業後、全日制の私立高校を半年で中退。親の求めで00年度に通信制に入り直したが、「たまに登校するだけで知り合いもいない。面白くなかった」。アルバイトで忙しく、休日をスクーリングに割くより友達と遊ぶ方を優先した。03年度から履修登録もしなかった。

 当時働いた飲食店では、午前9時から午後10時まで店に入り、休みは週1日。「高卒資格は必要と思いつつ、仕事をやっていけていたので切迫感がなかった」と振り返る。

 2年前、考えが変わった。リーマン・ショック後の10月、派遣社員として働いていた工場をクビに。正社員の再就職先を探したが、条件はどれも「高卒」。悔しかった。そんな折、宮崎東高校からはがきが届いた。今は病院で看護助手をしながら寝る間を削ってリポートに取り組む。

 すんなり戻れたのは在籍期間が長いおかげだった。「きっかけは残しておいてほしいですが……」と残念がる。(井上恵一朗)

〈キーワード〉通信制高校

 戦後の学制のもとで始まり、1948年、全国82校に設けられた。通信教育指導要領に「勤労青少年はもちろん広く一般成人に対して教育の要求をみたし、進学の機会を与える大きな意味をもつ」とうたわれた。61年には独立校としても設置できるようになった。今年度学校基本調査では公立72校、私立137校があり、生徒総数は約18万7千人。

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