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JOCWの現状と将来への課題―早慶学長対談(前編)

2008年8月4日

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写真慶應義塾大学・安西祐一郎塾長

写真早稲田大学・白井克彦総長

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写真山上浩二郎(朝日新聞編集委員)

 大学が正規講義をインターネット上で無償公開する―OCW(Open Course Ware)と呼ばれるこのプロジェクトは、米・マサチューセッツ工科大学(MIT)が2003年にスタートさせ、現在世界の多くの大学が実施している。

 我が国でも2005年、慶應義塾、早稲田をはじめとする6つの大学によりJOCWコンソーシアムが発足、講義の公開を開始した。JOCWの正会員となっている大学は18、公開講義は日本語・英語あわせて700講義を超えている。JOCWの現状と将来への課題について、慶應義塾大学・安西祐一郎塾長、早稲田大学・白井克彦総長のお二人に伺った。

■大学の「知」の広がりをもたらすJOCW

 山上浩二郎(コーディネーター/朝日新聞編集委員) 両大学はJOCWの立ち上げから参加されていますね。

 安西祐一郎(慶應義塾大学塾長) 日本の大学の講義をオープンにし、インターネットを通じて世界に発信することはたいへん意義があります。そもそも慶應義塾には、福澤諭吉以来、誰もが学べる開かれた学校にしたいという気風があります。たとえば、通信教育の講義の短波ラジオでの放送開始から今年でちょうど50年になります。こういった蓄積のうえでMITのOCWと出会い、参加しています。

 白井克彦(早稲田大学総長) 早稲田は早くから、通信回線を使った講義映像の公開を試みており、当初はインフラが未整備であったため、コスト面などで苦労してきた経緯があります。だから本趣旨には大賛成で、インターネットが普及した今なら、タイミングもいい。

 山上 JOCWの取り組みの意義として、我が国の生涯教育の拡大・充実への貢献がまず期待されます。

 安西 アメリカやイギリス等の諸外国は、大学・大学院の学生のうち25歳以上の入学者の割合が平均約20%に達している。これに対し、我が国はわずか2.7%ですから、社会に出てからも学び続けられる環境をもっと整えなければならないことは明らかです。これまでは大学側から学生に、いわば密室で「知」を授けていたけれど、今は学生側が主体的に「知」を求め、選びとる形になりつつある。JOCWは、まさにこの「学び」の文化の転換を象徴するものと言えそうです。

 白井 誤解のないように言うと、JOCWで大学に通うのと同じ内容を全て学べるわけではないし、むろん学位も取れない。これは本家MITのOCWも同じです。JOCWで大学が蓄積した「知」の一端に触れ、その上で正式に学びたければ、大学や大学院に通っていただきたい。早稲田には通学制と変わらぬ学位が取得でき、授業においてはきめ細かい指導体制を確立しているeスクールもあります。

 山上 MITは全1800コースを公開しています。JOCWの場合、それに比べてまだまだ講義数は少ないようですが。

 白井 MITは規模が小さいからできるけれど、慶應義塾や早稲田にはとても無理です。それに、何でも公開すればよいというわけではなく、閉じた場だからこそ学生に伝えられる有益な情報もあります。

 安西 MITは講義ビデオの配信を全面展開していませんが、JOCWはビデオ映像も流すなど講義ごとに工夫を凝らしており、より進んでいる面もあります。

 山上 見る側からすると、やはりビデオの方が臨場感があるということでしょうか。

 白井 いや、講義を教室で聞くのとビデオで見るのとでは全く違いますから、一概にそうとも言えません。いずれにせよ、繰り返し見るに耐えるものにするには、かなり編集の手間を掛けなければなりませんし、もちろん先生の準備も大変です。

 安西 自分の講義が世界に公開される訳ですから、これはかなりの覚悟と気合が必要といえます。その中で参加している先生方のマインドは本当に素晴らしいし、講義内容も確かに質が高い。私達が見ても、とても勉強になります。

 山上 JOCWは、その点でFD(教員の技術養成)にも大きく役立っているということですね。

後編に続く

JOCWとは

【JOCW沿革】

◆2004年にMITから日本の主要大学にOCW活動が紹介され、日本での実践が推奨されたことを受け、複数の大学でOCWに準拠した講義公開の準備を進めました。
◆創設メンバー大学での公開準備が整った2005年5月13日に合同記者会見を行い、日本でのOCW活動の開始を正式にアナウンスし、本コンソーシアムの前身である「日本オープンコースウェア連絡会」も同時に発足しました。
◆OCW活動を日本で最初に開始した設立時のメンバーは大阪大学、京都大学、慶應義塾大学、東京工業大学、東京大学、早稲田大学(50音順)の6大学でした。
◆2005年12月に九州大学、名古屋大学、北海道大学がOCW活動の開始を決定し、連絡会に参加しました。同時にメディア教育開発センターも協力メンバーとして連絡会に参加しました。
◆2006年4月20日 「日本オープンコースウェア・コンソーシアム」(略称:JOCW)が設立されました。
◆本会は「高等教育機関において正規に提供された講義および関連情報のインターネット無償公開」であるオープンコースウェアの活動に関し、会員間での情報交換を行ない、この活動を援助し普及することを目的として設立されました。
◆本会は日本国内のOCW活動を実践する組織・団体、およびその活動を支援する組織・団体間での交流を図るほか、国際コンソーシアムにもアフィリエイトメンバーとして加盟し、海外のOCW関連機関との交流にも務めていきます。
◆2006年9月、関西大学、筑波大学、同志社大学がJOCWの新たな会員になりました。
◆2006年10月京都精華大学、立命館大学、立命館アジア太平洋大学が正会員として、財団法人高度映像情報センター(AVCC)、NPO法人サイバーキャンパスコンソーシアムTIES(CCC−TIES)が賛助会員としてJOCWに加盟しました。
◆2007年4月NPO法人日本イーラーニングコンソーシアムが賛助会員として加盟しました。
◆2007年8月女子栄養大学が正会員として、NPO法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパンが賛助会員として加盟しました。
◆2007年11月明治大学が正会員として加盟しました。
◆2008年1月会則を変更し、准会員を設け、非営利団体は准会員とし、賛助会員として企業に加盟を呼びかけていくこととしました。また、2008年度より会費制に移行することを決定しました。
◆2008年1月朝日新聞社 ディジタルメディア本部、NTTレゾナント(株)、東京電機大学出版局が賛助会員として加盟しました。
◆2008年3月国連大学が正会員として、またメディアサイト(株)、(株)シーディーネットワークス・ジャパン、(株)メディア・リンク、(株)デジタル・ナレッジが賛助会員として加盟しました。

JOCWのホームページはこちら

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