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紙上特別講義

国際協力とボランティア:3(近藤准教授)

2007年10月13日

 援助する側が満足しても、相手に心が通じなければ成功とは言えません。

     *

 援助する側に必要なのは、「援助される側」の視点と、現地のスタッフらと調和できるコミュニケーション能力だと近藤准教授は指摘しました。国際協力の現場は、華やかなことばかりではなく、むしろ「ご近所づきあい」の延長に似た地道な営みなのかもしれません。読者から寄せられた「宿題」への「答案」から2点を近藤准教授に選んでもらい、講評してもらいました。

 【宿題】

 これまでに、「援助される側」になったとき、「援助する側」との間にどんなことがあったか、体験を500字前後でお寄せ下さい。

 ○助け合いの気持ち、宙に浮いた

 久下明美さん(43)=主婦、兵庫県宝塚市

 阪神大震災のとき、私は妊娠中で幼児もいたので、家から歩いて5分ほどの避難所に身を寄せた。しかし、自宅の被害が軽く、一晩で帰宅した。近隣では都市ガスの復旧に日数がかかり、困る人が多かった。我が家はLPガスで問題なかった。そこで避難所へ出向き、「もし必要な方がおられたら、うちのガスコンロや風呂を使ってください」と申し出た。

 職員は話を聞いた後、「奥さん、今はご自分のことだけ考えられたらどうですか。これを持って帰ってください」と、私に援助物資の食料を手渡した。

 私は考え込んでしまった。「あなたは助けられる側です」と一方的に言われた気がした。確かに「身重」だが、健康で食べ物にも困っていない。互いに困ったときの助け合いのつもりで出向いたのに、物ごいに行ったような形になってしまった。あの職員は親切だったのだろうか。

 人に助けてもらえることはうれしい。でも私は、自分のできることをしようとした気持ちを受け取ってもらえなかったことが、寂しかった。

 ○「助け、助けられ」の積み重ねから

 石井史佳さん(42)=主婦、高松市

 患者や被災者、「外国人」になったときに限らず、私たちは日常生活のいろんな場面で助け、助けられている。

 子どもの学校の役員をしていたとき、力以上の仕事を求められ精神的に苦しい思いをした。ところが、「できる」と思われたいばかりに頑張りすぎて、いつ、助けを求めればよいのかがわからなかった。「あなたならできる」の言葉も私を苦しめた。

 SOSの出し時を知ることは必要だ。助けを受ける側の見えや変なプライドは自分を追い込む。

 「なにかあったら言ってね。力になるから」と言ってくれていた人に協力を求め、あっさり断られた時は、かなり落ち込んだ。「なにか」のときに助けられないなら、そんな社交辞令は言ってはいけないと思った。

 私の仕事ぶりを見ていて、本当に困っているときに声をかけてくれた人に、私は一番感謝している。

 国際協力は大きな仕事だが、その力は日常生活の中でのささやかな「助け、助けられ」の積み重ねによって養われると思う。

 ◇講評

 《久下さん》ご自分も大変なときに、とてもよいアイデアを思いつかれましたね。久下さんの経験を多くの方が知って、考えてくださることを願っています。「被災者」としてひとくくりにされる人たちの声を、私たちはもっと丁寧に聞く必要があるのかもしれません。防災マニュアルのページ数がどんどん増え、援助する側がその活動に満足しても、人の心が通じ合わず、寂しさやむなしさを誰かが感じているとしたら、その活動は成功だとはいえないでしょう。

 《石井さん》私も同様に、日常生活の「助け、助けられ」の積み重ねの延長線上に国際協力があると思います。私たちの国内での営みは、メディアなどを通じて、世界中の人たちに伝わっています。紛争で破壊された故郷を見て絶望している人たちが、その復興に立ち上がるとき、「日本のような国になりたい」とめざしてもらえるような、そんな誇らしい日々を送りたいものです。

 (岡山大准教授 近藤麻理)

 ◆先生に質問!

 《記者からの質問》

 地震の被災地の自治体が相次いでボランティアの受け入れを制限しています。それでも復興に協力したい場合は?

 《近藤准教授の答え》

 善意のボランティアをなぜ拒否するのか、というご意見もあるかと思います。でも、私は「行かないボランティア」があっていいと思っています。災害から数カ月後、経済復興に貢献することも重要なボランティアです。私は、米同時多発テロのあった年のクリスマス、ニューヨーク観光を楽しみました。入国審査で「観光で来た」と答えると、周りの人が喜んでいたのが印象的でした。

 経済復興のためには、「観光に行くボランティア」「思いっきり遊ぶボランティア」たちが、普通に現地に泊まり、おいしいものを食べ、お土産を買って帰る必要があるのです。秋の行楽シーズン、能登や上越の観光地に出かけましょう。

 ■もっと知りたい人へ

 「緒方貞子―難民支援の現場から」(東野真著、集英社新書)▽「地震と社会 上・下」(外岡秀俊著、みすず書房)▽「人道援助、そのジレンマ」(ロニー・ブローマン著、産業図書)▽「イェルサレムのアイヒマン」(ハンナ・アーレント著、みすず書房)▽「国際保健医療学」(日本国際保健医療学会編、杏林書院)

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