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紙上特別講義

宇宙空間のモンスターたち:2(福江教授)

2007年11月12日

 米国が01年に打ち上げた電波観測衛星は、宇宙の年齢を「137億歳」と測定しました。驚くべき成果ですが、一体、どうしてわかったのでしょうか。

 すべての物体は温度に応じた電磁波を出し、低温ほど波長が長くなります。表面が約6千度の太陽は黄色い光で輝いていますが、体温が約37度の人間は赤外線を発し、暗闇でも赤外線モニターに引っかかります。

 宇宙空間では、波長1ミリ前後の電波が全方向からやってきています。これは宇宙が「ビッグバン」と呼ばれる大爆発で始まった際の余熱で、その温度は絶対温度で2.73度(セ氏マイナス270.42度)です。

 観測衛星は、余熱の「揺らぎ」を全天にわたって10万分の1度の精度で測りました。楽器の大きさや材質を音波の形から推定するように、宇宙が高温ガス塊だった頃の「揺らぎ」の波形から、ビッグバンの規模や密度を割り出したのです。

 その結果、宇宙の年齢とともに、驚くべきナゾも浮かびました。

 「揺らぎ」から宇宙の組成を計算すると、我々が通常接している水素や炭素、鉄などの元素は、宇宙の全密度の4%しかありませんでした。残り96%のうち、どうやら物質と呼べそうなのは20%。残りの76%は全く正体不明のエネルギーだというのです。

 元素以外の20%の物質を「ダークマター」、残り76%を「ダークエネルギー」と呼んでいます。その正体は、現在の科学では全くわかりません。まさに「宇宙最大のナゾ」なのです。

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 さて、近年相次いで完成した巨大望遠鏡と最新の観測装置は、宇宙の組成だけでなく、宇宙で最初の星や銀河が形成された時期の姿を追っています。遠くのものほど光が届くのに時間がかかるため、極限の遠くを見て宇宙の初期の姿をとらえようという計画です。

 日本がハワイ・マウナケア山頂に建設した口径8メートルの「すばる望遠鏡」は、世界で最も遠くの宇宙を観測できる望遠鏡です。国立天文台の研究グループは昨年9月、天体の遠さを示す赤方偏移(z)=(1)の数値が6.964の銀河を検出した、と発表しました。その値から算出した距離は129億光年で、宇宙誕生から8億年後。火の玉だった宇宙が冷えて、最初の星々が生まれ、それが集まって原始的な銀河ができ始めた時期の姿とされています。

 さらに遠くに、宇宙で最初に輝いた、本当の「一番星」が見えるはずです。

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 理論計算によれば、宇宙最初の星が誕生したのは、ビッグバンから2億〜数億年後。この時期の星は太陽の500〜1000倍もの質量を持ち、誕生からわずか100万年で、宇宙最大の爆発現象であるGRBを引き起こすとされています。

 人工衛星がGRBを検出すると数十秒以内にインターネットで各国の観測機関に警報が流れ、電波や可視光で一斉観測するシステムが整ってきました。現在の観測の感度ではまだ少し無理ですが、宇宙で最初の星はいずれ本当に見つかると期待しています。

《記者から》

 「150億年前後」とあいまいな表現しかできなかった宇宙の年齢に、最近「137億歳」という明確な値が求められました。10年前には信じられない進歩ですが、人間の体や日常世界をつくる元素は宇宙全体のたった4%で、他の部分はまだ全くわからないとは……。解明すればするほど、宇宙の謎は膨らむようです。

 ◆キーワード

 (1)赤方偏移(z) 救急車が通り過ぎるとサイレン音が急に低くなるように、遠ざかる天体からの光は波長が引き延ばされ、実際よりも赤く見える。zの値は光の波長の延び具合を示す数値で、例えば観測された波長が元の1.2倍になっていればz=0.2。z=7だと、観測された光の波長は8倍にも延ばされ、赤外線になっている。

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