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紙上特別講義

「困った子」たちの未来:2(井上教授)

2007年12月22日

「個性」として理解され、その優れた才能を伸ばす環境を整えるべきです。

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 日本では診断基準があいまいで、支援態勢も十分ではありません。

 <おさらい>

 アスペルガー症候群の子たちは数学的な思考や記憶力などで高い能力を示す半面、対人関係が苦手で、特定の物事や習慣にこだわる特徴がある。理解不足から「困った子」とされてしまうことも多い。誤った対応により、本人が心に深い傷を負うこともある。

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 この春、アスペルガー症候群も含めた発達障害の子どもたちを支援する特別支援教育=キーワード=が始まりました。しかし、教育現場での対応はまだ不十分です。芦屋大大学院のアスペルガー研究所では、精神科医や臨床心理士、教育学と社会学の研究者らが連携して、カウンセリングで培われた知識や経験を学校での指導に結びつける「臨床教育学」の考えに根ざした研究を進めています。

 具体的な取り組みとして、今年度から学校で教員らを助ける特別支援教育のサポーターの養成を始めました。教員免許を持つ主婦らを対象に、発達障害の子どもと接するための知識や技能を身につける全15回の講座を開きました。現在50人が登録し、阪神間の市の教育委員会を通じて学校に派遣しています。

 研究所併設の「人間関係相談センター」では、開所からの約1年で400件を超す相談を全国から受けました。うち4割が成人でした。対人恐怖症で就職できずに自宅に引きこもる20代の男性、夫の挙動に悩み、離婚を考えた女性……。人間関係のトラブルを抱え、うつ病などの二次的な問題を抱えている例もありました。

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 相談を通じて問題として浮かんだのは、同症候群の定義のあいまいさでした。日本の精神科医らが使う診断基準は、米国精神医学会がまとめた「DSM―4」と、欧州で主に使われる「ICD―10」の二つが混在しています。しかも前者はかなり厳密に規定され、該当者は少なくなる傾向があります。病院によって同症候群と診断されたり自閉症だったりしています。

 また、診断可能な国内の精神科医やカウンセラーは限られていて、受診できるまでに2、3年待った末に、「治療法はありません」と言われ、途方に暮れる家族も多いようです。

 個々の子どもに応じた適切な助言ができる相談施設を増やすとともに、3歳児健診に同症候群の検査を盛り込み、早い段階での支援に結びつけることも検討すべきでしょう。

 「KY(空気・読めない)」という言葉があるように、最近の日本では雰囲気を察することのできない人を排除する傾向があり、対人関係づくりに難があるアスペルガーの子にとっては厳しい現実になっています。「個性」として理解されるにはどうすべきか。例えば海外では自分がアスペルガーであることを示すTシャツやグッズがあるそうです。スウェーデンでは、優れた才能を生かそうと、そうした人たちを集めたソフトウエア会社があると聞きます。

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 日本では、集団での生活になじめないため高校や大学に通えず、高等教育を受ける機会を失っている例が多く見受けられます。

 科学技術をめぐる国際競争が激しくなっているいま、国や大学は、特定の分野に秀でた彼らの才能を伸ばすカリキュラムを検討すべきです。心理面でのサポートや卒業後の就職のあっせんもできる一貫した態勢づくりが望まれます。

 ◆キーワード

 <特別支援教育> 07年4月の学校教育法の改正で、従来の「特殊教育」から外れていた学習障害(LD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)、アスペルガー症候群などの発達障害の子への適切な指導を義務づけた。盲・ろう・養護学校は「特別支援学校」に一本化され、小中学校の特殊学級は「特別支援学級」に改められた。

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