現在位置:asahi.com>教育>大学>紙上特別講義> 記事 高齢期を元気に生きるには:1(佐瀬准教授)2008年01月19日 高齢者自ら考え、行動する。ボランティア活動が、この自信を深めさせます。 * 体が不自由になっても、社会参加を望む人がいます。 人は誰もが自分らしく生きたいと願っています。しかし高齢になると、まだ能力があるのに発揮する機会が減り、自分でもあきらめてしまうことがあります。老年看護が専門の佐瀬美恵子・甲南女子大学准教授に、高齢者がたとえ介護が必要になっても、いきいきと生きるためのヒントを語ってもらいます。 高齢者に対してどんなイメージを持っていますか。助けが必要な弱い存在? 頑固な人? 介護保険などで財源を圧迫する困った存在とみる人もいるかもしれません。 こうした否定的なイメージを「エイジズム=キーワード(1)」といいます。年齢による偏見や差別です。私は高齢者を画一的、固定的にとらえるこの観念を崩したいと考えています。 また、若い人にも高齢者にも、加齢による身体の衰えや生活の変化に不安を感じる人がいます。それがエイジズムに結びつかないようにもしたいと思います。 エイジズムの克服がなぜ重要か。高齢者の権利擁護にかかわるからです。「年寄りは厄介だ」「生きていても意味がない」「認知症になったら何も分からない」。こんな考えが、介護放棄などの虐待につながる可能性さえあります。 高齢者自身にも、生きる気力を失い、虐待を受けても助けを求めないという側面があります。厚生労働省による06年度の調査では、虐待を受けたと本人が相談・通報した事例は、家庭内虐待で12%、施設職員らによる虐待では4%でした。「世話になっているのだから」とあきらめている人がいるのかもしれません。 * この考え方は、日ごろから家族に依存する傾向と関係すると思います。自分が使う介護サービスについて尋ねられても、「息子か嫁に聞いてくれ」と決定をゆだね、家族の意見に従って行動する人が多いのです。 ふだんから自らの考えに基づいて行動し意思表示をするようになれば、権利侵害を受けることも少なくなり、受けた時も発言できる。それが虐待の予防につながると考えます。 キーワードは「主体」です。高齢者がエンパワーメント=キーワード(2)=する必要があります。 では、高齢者が自信を回復し、持てる力を発揮するにはどうすればいいか。手段の一つとして私が研究しているのが高齢者、とくに要介護高齢者のボランティア参加の可能性です。 * きっかけは大阪市にあるシルバーボランティアセンターの活動を知ったことでした。60歳以上の約550人が、施設を訪問して話し相手をしたり、おもちゃを手作りしたりしていました。その様子に、高齢期を生きるエネルギーのようなものを感じたのです。 みなさん、体が弱ってもできることをしたいと望んでいました。実際、足が不自由で手押し車を押しながらセンターに通い、独居高齢者らに安否確認の電話をかける活動をする女性がいました。マスコット作りや古切手整理をするために特別養護老人ホームから通ってくる女性もいました。 いつまでも社会に参加し、誰かの役に立ちたい、生きがいを持ちたいと願う人たちがいます。その願いが実現できる社会になれば、エイジズムも少しずつ解消されていくのではないでしょうか。 次回は、施設で介護を受けながらボランティアを始めた人たちの様子と、活動の課題をお話しします。 * 佐瀬美恵子(させ・みえこ) 甲南女子大学看護学科准教授。75年から18年間、大阪市の保健師として勤務。その後、病院に設置された大阪府指定の老人性認知症センターで働いた。00年に仲間とシルバーボランティア研究会をつくり、要介護高齢者がボランティアに参加する可能性を探っている。 ◆キーワード (1)エイジズム 年齢による偏見や差別。高齢者に対しては、大半が病気で孤独、貧困であるといった画一的なとらえ方をする傾向がある。雇用制限や住居追い出しなどにつながる。否定的な意味合いを指すことが多いが、高齢者はみな親切で知識豊富といったイメージや、高齢を理由にした優遇措置などを肯定的エイジズムと言うことがある。 (2)エンパワーメント 人が自分の置かれている不利な状況を改善しようと力をつけること。権限や発言力、自信などを取り戻したり強化したりすること。貧困問題やフェミニズム運動などでまず使われるようになり、社会福祉学や看護学の分野でも広がった。最近、高齢者ケアの現場では、高齢者が能力を回復・発揮することをめざして援助する試みが重視されている。 紙上特別講義 バックナンバー
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