多様化の一方低品質に
上質な服をゆったりサイズで
社会の動きを映す服。未来の姿を描くことは、現代の理解に役立ちます。
20世紀のファッションの変化の山場に、二つの世界大戦と大量消費社会の影響があったこと。現代の若者の装いは、格差社会化を背景に、周囲と同調する風潮がうかがえ、比較的おとなしいデザインが目立つこと。成実准教授は2回の講義で、こうしたことを語ってくれました。ファッションはこれからどうなるのか。宿題への答案を、成実准教授の講評とともに紹介します。
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【宿題】30年後、日本の社会や生活環境はどう変化し、人はどんなファッションをしているか。説明して、その装いを描いてください。
○多様化の一方低品質に
荒木梢さん(32)=派遣会社員、大阪府茨木市
少子化で労働力を支える若者が減少。様々な職種で外国人労働者が増え、容姿や習慣の違う人が暮らす。バブル世代が高齢化する一方、品質を見分けられない若者が増え、服は多様化しながら品質は落ちる。結果、袖やすそが長いつなぎ服「セルフ服」が流行する。腰で上下に裁断、袖やすそを切って調節し、端切れを帽子やポケットに使う、染め粉で染める、など買い手が手を入れ着用する。自販機で300円足らずで販売する。
○上質な服をゆったりサイズで
江島直美さん(38)=主婦、大阪府和泉市
環境問題が深刻になるため、流行を追いかけて次々と洋服を買い替えるより、良質な服を長く着ることが好まれるようになる。そのため、体形の変化に対応できるゆったりサイズを着る傾向が強まる。美しさに別の基準が生まれるかもしれない。さらに、外国との文化交流がより盛んになって、日本や日本文化を意識するようになる。着物の生地をメーンに使いつつ、外国の服飾文化も交えたデザインが流行するのではないか。
◇講評
《荒木さん》 子どもが減り、若者が減って、外国人が増える。そのために、より多くの人々が適合しやすい、一人一人が自分でアレンジしやすい服が登場する。そんなファッションを、コンビニ的な発想でとらえているのが面白い。ただもう少し格好いい服がいいな。論理的に考えるだけでなく、デザインには美的飛躍が必要です。
《江島さん》 環境問題がとりざたされ、否応なくグローバル化に巻き込まれていく中、日本人が服を長く大切に着るようになり、文化のルーツに立ち返っていこうとする。そんな発想は好ましいと思います。ただ、着物や民族衣装を取り入れた洋服はこれまでもあるので、もうひと工夫ほしかった。例えば花柄に何かあなたの世界観を込めてみては。
※未来を考えるのは、実は現代を考えることなのです。個性を欠いていく方向に30年後を予測した回答が目立ちましたが、皆さんの今の社会意識の反映でしょう。
(京都造形芸大准教授 成実弘至)
▽「ファッションの社会学」1回目の撮影では、神戸ファッション美術館にご協力いただきました。
◆先生に質問!
《記者からの質問》
昔から、ファッションには、体に優しいとは言えない格好も多いですね。
《成実准教授の答え》
例えば、19世紀のファッションは、1回目の講義で紹介したように、体に負担をかける下着を着けました。コルセットで腰のあたりを締め上げ、物にあたって転びながらも、ちょうちん形の下着クリノリンをつけた。おかげで、寿命を縮める人もいたようです。
洋服の歴史の中で、生地の保温・保湿性、強度などは、時代とともに格段に向上しています。しかし、ファッションを楽しむための服選びの理由には、あまりなっていない。
目立つ目立たないにかかわらず、人は自らの外見に、己のアイデンティティーを懸けてきたのです。少々、体に負担をかけても、です。ダイエットや整形、タトゥー(入れ墨)も、それに通じるものがありますね。
■もっと知りたい人へ
「ちぐはぐな身体」(鷲田清一、ちくま文庫)▽「ファッションの文化社会学」(ジョアン・フィンケルシュタイン、せりか書房)▽「ストリートファッション 1945―1995 若者スタイルの50年史」(アクロス編集室編、PARCO出版)▽「ブランドの条件」(山田登世子、岩波新書)▽「たたずまいの美学」(矢田部英正、中公叢書)