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ファッションの社会学:3(成実准教授)

2008年3月22日

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イラスト多様化の一方低品質にイラスト上質な服をゆったりサイズで

 社会の動きを映す服。未来の姿を描くことは、現代の理解に役立ちます。

 20世紀のファッションの変化の山場に、二つの世界大戦と大量消費社会の影響があったこと。現代の若者の装いは、格差社会化を背景に、周囲と同調する風潮がうかがえ、比較的おとなしいデザインが目立つこと。成実准教授は2回の講義で、こうしたことを語ってくれました。ファッションはこれからどうなるのか。宿題への答案を、成実准教授の講評とともに紹介します。

    *

 【宿題】30年後、日本の社会や生活環境はどう変化し、人はどんなファッションをしているか。説明して、その装いを描いてください。

 ○多様化の一方低品質に

 荒木梢さん(32)=派遣会社員、大阪府茨木市

 少子化で労働力を支える若者が減少。様々な職種で外国人労働者が増え、容姿や習慣の違う人が暮らす。バブル世代が高齢化する一方、品質を見分けられない若者が増え、服は多様化しながら品質は落ちる。結果、袖やすそが長いつなぎ服「セルフ服」が流行する。腰で上下に裁断、袖やすそを切って調節し、端切れを帽子やポケットに使う、染め粉で染める、など買い手が手を入れ着用する。自販機で300円足らずで販売する。

 ○上質な服をゆったりサイズで

 江島直美さん(38)=主婦、大阪府和泉市

 環境問題が深刻になるため、流行を追いかけて次々と洋服を買い替えるより、良質な服を長く着ることが好まれるようになる。そのため、体形の変化に対応できるゆったりサイズを着る傾向が強まる。美しさに別の基準が生まれるかもしれない。さらに、外国との文化交流がより盛んになって、日本や日本文化を意識するようになる。着物の生地をメーンに使いつつ、外国の服飾文化も交えたデザインが流行するのではないか。

 ◇講評

 《荒木さん》 子どもが減り、若者が減って、外国人が増える。そのために、より多くの人々が適合しやすい、一人一人が自分でアレンジしやすい服が登場する。そんなファッションを、コンビニ的な発想でとらえているのが面白い。ただもう少し格好いい服がいいな。論理的に考えるだけでなく、デザインには美的飛躍が必要です。

 《江島さん》 環境問題がとりざたされ、否応なくグローバル化に巻き込まれていく中、日本人が服を長く大切に着るようになり、文化のルーツに立ち返っていこうとする。そんな発想は好ましいと思います。ただ、着物や民族衣装を取り入れた洋服はこれまでもあるので、もうひと工夫ほしかった。例えば花柄に何かあなたの世界観を込めてみては。

 ※未来を考えるのは、実は現代を考えることなのです。個性を欠いていく方向に30年後を予測した回答が目立ちましたが、皆さんの今の社会意識の反映でしょう。

 (京都造形芸大准教授 成実弘至)

 ▽「ファッションの社会学」1回目の撮影では、神戸ファッション美術館にご協力いただきました。

 ◆先生に質問!

 《記者からの質問》

 昔から、ファッションには、体に優しいとは言えない格好も多いですね。

 《成実准教授の答え》

 例えば、19世紀のファッションは、1回目の講義で紹介したように、体に負担をかける下着を着けました。コルセットで腰のあたりを締め上げ、物にあたって転びながらも、ちょうちん形の下着クリノリンをつけた。おかげで、寿命を縮める人もいたようです。

 洋服の歴史の中で、生地の保温・保湿性、強度などは、時代とともに格段に向上しています。しかし、ファッションを楽しむための服選びの理由には、あまりなっていない。

 目立つ目立たないにかかわらず、人は自らの外見に、己のアイデンティティーを懸けてきたのです。少々、体に負担をかけても、です。ダイエットや整形、タトゥー(入れ墨)も、それに通じるものがありますね。

 ■もっと知りたい人へ

 「ちぐはぐな身体」(鷲田清一、ちくま文庫)「ファッションの文化社会学」(ジョアン・フィンケルシュタイン、せりか書房)「ストリートファッション 1945―1995 若者スタイルの50年史」(アクロス編集室編、PARCO出版)「ブランドの条件」(山田登世子、岩波新書)「たたずまいの美学」(矢田部英正、中公叢書)

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