神戸大の金井壽宏教授=神戸市灘区、寺脇毅撮影
落ち込んだときには、とにかく動いてみよう。ときには自分にご褒美も。
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「やる気」にはアップダウンの波があって当たり前。その波を起こす要因を知れば、自己調整も可能です。あなたの「やる気」コントロール法は? あなたの周囲の、異世代の人はどうでしょう。みなさんの「答案」の中から2点を、金井教授の講評とともに紹介します。
【宿題】どんなときに「やる気」が出ましたか。落ち込んだときに回復したきっかけは? 身近な異世代の人の話も合わせ500字程度で。
●認められる喜びと、向上心が糧
佐々木久栄さん(64)=主婦、愛媛県今治市
「やる気」の出る時は、関心事に対して向上心がある時。頑張って認められ、褒められるとうれしいものです。その心地よい刺激や達成感をもっと味わいたくて更なる上を目指します。
私の趣味はエッセーなどを書くこと。最初ははしにも棒にもかからないものでしたが、そのうち少しずつましになってきました。仲間うちですが、たまに好評を得ればそれが自信につながって、また「やる気」が出てきます。
駄作続きだと自信をなくして落ち込みます。その場合はしばらく間を置くようにして、読書などで充電しています。そのうち気分は治まり、再び「やる気」が戻ってきます。
次男は大学入試で「やる気」が爆発しました。急に自分の実力以上のところを受けると言い出して、それからの2カ月間は短期集中、今までにない頑張りようでした。
試験はだれも助けてくれません。その先の目標を見つけたからこそのやる気でしょう。目標のある人は強い。流されるのを拒み、目標に向かって頑張った息子の底力を見直しました。
●段階定め、毎日少しずつ進歩
木下進次さん(56)=会社員、大阪府豊中市
私の持論(自論)は「一日一前」を実行すること。小さなことでも、毎日何か一つでも前日より進歩していると感じ取れる行動を心がけています。
昔から「一日一善」といいますが、これは結果として願っているだけ。昨日よりは自分にとってプラスになることをする、その積み重ねが大きな目標達成につながると考えました。
会社の目標、すぐには達成できないプライベートな目標など、段階的にマイルストーン(里程標)を明確にし、期限も決めて、達成へ向かって毎日必ず一つは前進を確認できる行動をしようと心がけています。継続していると、自然にやる気も維持できます。手帳のアクションプランシートの見出しに「一日一前」と記入して視覚化しています。
私の所属する課は、総務という仕事柄、成果が目に見えてはわかりません。そこで毎朝、全員が前日の日次目標の成果と、その日の目標を報告し、お互いにコメントもします。周囲の仕事ぶりを理解することが、みんなの「やる気」を保つことにつながっていると実感します。
◇講評
《佐々木さん》 向上心という希望系、褒められるという希望系プラス関係系の要素で「やる気」を高めていらっしゃいますね。仲間に読んでもらうことが大切です。また、落ち込んだ時の対処法もきちんと持っておられ、「やる気」の自己調整がとてもお上手です。息子さんは入試という緊張系のモチベーションが、将来の目標という希望系のエネルギーに支えられて大爆発したのでしょう。
《木下さん》 「一日一前」という独自の言葉にまず感心しました。こういうラベルがあると「持論」はとても分かりやすくなります。身近な目標と、将来の目標を分けて考えているのもいいあり方ですね。「やる気」というテーマをきっかけに、若い人なら親の世代、中高年なら若い世代とコミュニケーションを持っていただければうれしいです。世代間のやりとりには、必ず発見がありますから。
(神戸大教授 金井壽宏)
◆先生に質問!
《記者からの質問》
「やる気」を失ったときに回復する方法を具体的に教えてください。
《金井教授の答え》
(1)パソコンを立ち上げる、伝票を書くなど具体的に何かに着手する(2)元気をくれる人、場面によっては、ねじを巻いてくれる厳しい人に会いに行く――など、とにかくできることをやってみるという姿勢がポイントです。動き出すこと自体が「やる気」を喚起してくれます。
それでも、本当にくたばっているときは、温泉に行ったり、気になっていたものを買ったり、「自分にご褒美」を出すのもいいでしょう。ただ、病気や、プライベートライフで悲しいことがあったり、キャリアの節目でとまどっていたりで深く落ち込んでいるときは、回復までゆっくり時間をかけることも大切です。周囲も「頑張れ」とは言わないで。そんなときでも、落ち込んでいる理由が分かっているだけでたいしたものです。
○もっと知りたい人へ
「働くみんなのモティベーション論」(金井壽宏著、NTT出版)▽「学ぶ意欲の心理学」(金井壽宏著、NTT出版)▽「リーダーシップの旅 見えないものを見る」(野田智義・金井壽宏著、光文社新書)▽「なぜあの人は『イキイキ』としているのか」(人と組織の活性化研究会・加護野忠男・金井壽宏著、プレジデント社)
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