現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. 教育
  4. 大学
  5. 紙上特別講義
  6. 記事

快眠のススメ:1(宮崎教授)

2008年10月18日

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 このエントリをYahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

 睡眠時間が減っています。

 眠るはずの時間に働くと、事故を招きかねません。

   *

 寝不足が原因の病気もあります。

 逆に眠りは運動技能を助けます。

 私たち現代人の睡眠時間は年々、短くなっています。テレビやゲーム、深夜勤務などライフスタイルの変化とも深い関係があるようです。国内でいち早く「睡眠学講座」=キーワード(1)=を開設した滋賀医科大の宮崎総一郎教授(54)に、睡眠不足がもたらす深刻な影響や快眠のコツを話してもらいます。

 人間が生きていくうえで睡眠は必要不可欠です。成長や新陳代謝を促したり、ストレスを取り除いたりする効果がある。免疫機能の回復も大切な役割です。

   *

 人生の約3分の1も占める睡眠に、近ごろ異変が起きています。

 日本は1960年代から高度経済成長を遂げましたが、人々は昼も夜もなく働き続けています。深夜まで残業するサラリーマン、街へ出ると24時間営業のコンビニエンスストアがあり、家庭ではテレビやインターネット。60年には平均8時間以上あった睡眠時間が、05年には7時間22分に減りました。就寝時間も遅くなり、午後10時に眠りについていた人が60年に65%ほどいたのに対し、05年は24%になりました。

 10代の若者の睡眠時間を約10カ国で比較した研究があります。日本人の平均睡眠時間は7時間で最も短く、台湾やアメリカが続きます。一方、スイスやノルウェーは9時間ほどありました。

 人間には本来、睡眠のリズムがあります。太陽の動きとも密接に関連していて、日の出とともに起床し、日中に活動し、日が沈むと眠る。そして眠気のピーク=キーワード(2)=は午前2時から同4時にあることがわかっています。

 今年2月に千葉県沖の太平洋で起きたイージス艦と漁船の衝突事故は、午前4時すぎに起きました。過去にも、この時間帯に大きな交通事故や産業事故が多発していることが統計調査で明らかになっています。79年の米国スリーマイル島と86年のソ連(当時)チェルノブイリでの原発事故、84年のインドのボパールで起きた化学物質漏出事故などが代表的な例です。

   *

 「仕事が忙しくて寝ている暇なんてない。睡眠不足は気合で乗り切れる」

 みなさんは、こんなことを言っていませんか? しかし、本来眠っているはずの時間帯に仕事をすると、身体は弱り、取り返しのつかない重大事故を招きかねません。

 睡眠不足が原因で発症する病気も確認されています。4時間と12時間、それぞれ眠った翌日のインスリンの分泌量と血糖値を測ったら、4時間の方はインスリンの分泌が減り、血糖値の上昇が見られたことから、糖尿病の危険性が高いことがわかりました。

 また、睡眠が短いと肥満を誘発しやすいとも言われます。食欲を抑えエネルギーの消費を促すホルモン「レプチン」が減り、食欲を高めるホルモン「グレリン」が増えるからと考えられています。約1万人の子どもを10年間追跡調査したところ、3歳の時に睡眠時間が9時間以下だった子は、11時間寝ていた子よりも肥満になる率が1・6倍高いという結果が発表されています。

 逆に睡眠は、スポーツやピアノ演奏などの技能の向上に効果的と言われます。米国のある研究では、午前にパソコンのキーを正確に打つ練習をして夜に試験した時よりも、一晩寝て翌朝に試験した方がはるかに技能が定着していました。

 次週は、快眠のコツをお話ししたいと思います。

   ◇

 みやざき・そういちろう 滋賀医科大睡眠学講座特任教授。秋田大大学院修了後、国立水戸病院耳鼻咽喉(じびいんこう)科医長や秋田大耳鼻咽喉科助教授を経て、04年4月から現職。日本睡眠学会理事。専門は無呼吸症候群の治療。編著に「快眠家族のススメ」(恒星社厚生閣)。愛媛県宇和島市出身。

 《記者から》

 人間は眠らずにどのくらい過ごせるものでしょうか。宮崎教授によると、最長は1964年、米国の男子高校生が記録した264時間12分(11日間12分)だそうです。約15時間眠り続けて回復したそうです。韓国では05年、1日2、3時間の睡眠だけで20日間、インターネットゲームをしていた30代の男性が死亡し、話題になりました。睡眠不足の悪影響は大きいようです。宮崎教授たち睡眠学講座のスタッフは、全国の小中学校や高校を訪れて、睡眠の大切さを伝えています。(小河雅臣)

 ◆キーワード

 (1)滋賀医科大睡眠学講座 04年4月、睡眠に関する研究や教育を目的として、賛同する企業や個人の寄付で開設。呼吸器科や内分泌代謝内科、神経内科などと連携し、睡眠障害の診断・治療にもあたる。工場や病院、警察・消防など、睡眠不足になりがちな職場向けの講座も開いている。筑波大や京都大、愛知医科大、日本大などにも同様の役割の組織がある。

 (2)眠気のピーク イスラエルのP・ラビエ教授は、大学生約120人を対象に実験した結果、午後2時からの2時間に眠気の小さな波がきていったん収まり、午前2時からの2時間に眠気がピークに達することを突き止め、85年に発表。逆に、午後5時から午後10時までは眠気の少ない時間帯であることもわかった。

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内

[PR]注目情報

ここから広告です

広告終わり

ジャンル別の最新情報はこちら
  • 大学
  • 中学・高校
  • 専門学校