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デザインの力:2(川崎教授)

2008年11月29日

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写真教授室で語る川崎和男教授=大阪府吹田市の大阪大、南部泰博撮影

 世界の姿すら変える。 そんな可能性を、秘めているのです。

   *

 医療、環境、紛争、貧困…。

 理想を貫き、夢をかなえよう。

◆おさらい

 デザインとはモノの見た目ではなく、機能・性能・効能を含むモノ作りのすべてだ。だから「デザイン重視で使い勝手が悪い」ものなどあり得ない。作り手が「きもち」と「いのち」を「かたち」に変えるデザイン。その力は日常生活から国際平和にまで及ぶ。

 私は紛争、貧困、環境破壊など地球規模の課題にデザインで貢献する研究と開発を始めています。名づけてPKD(Peace‐Keeping Design)プロジェクト。06年末に大阪大医学部付属病院未来医療センターに事務局を置き、昨年から具体的な提案と生産設計をしています。

 第一段は誰でも使えて安全に廃棄できる注射器=写真下左。発展途上国ではワクチンの管理や医療体制の不備が問題です。様々な感染症の流行拡大もみられ、ワクチン接種のデザインは緊急課題です。

 注射器本体は、ワクチン入りの円形の樹脂容器に針を付けただけ。折り畳んだ台紙に装着して、約7・5センチ四方の紙箱に入れています。台紙に付けたまま接種する。使用後は畳んで紙箱に入れるので、廃棄の時、針が人に刺さりません。現在の針はステンレス製ですが、折れても体内分解できる生分解プラスチック製の針の実現化を阪大で研究中です。

 筒型をしていて使用後は針が筒から出せない注射器や、運搬用の冷凍・冷蔵ケース、梱包(こんぽう)してパラシュートで大量搬送する方法も考えています。海外の医療機器メーカーや国連の関係者が視察に来ています。

   *

 また、大災害などで大勢のけが人の治療優先順を決めて体に付けるトリアージ・タグ。現在使われているタグのつくりを見直し、再デザイン化に取り組んでいます。縦5・5センチ、横4センチ。黒(死亡・不処置)、赤(要治療)、緑(軽処置)の3枚の厚紙の札を症状に応じて外し、負傷者の体につけます=写真下右。

 今の日本の規格は宅配便の伝票のような形で、医師らの判断で症状の重い方から4段階で優先度を決めます。国際的に4段階表示が標準化されていますが、細かい区分けが判断を混乱させるので3段階にしました。タグには既往症など簡単な個人情報が読み取れるQRコードをつけます。将来的には、ICチップを搭載したタグにし、誰もが日常的に携帯することを想定しています。今年度のグッドデザイン賞を受賞し、このシステムに関心を示す自治体が出てきています。

 米国ではデザイン系の大学アートセンター・カレッジ・オブ・デザインが中心となってHIV感染防止や人種差別問題に、フランスでは政府や国立美術学校エコール・デ・ボザールがアルツハイマー病治療に、デザインで貢献する方法を探っています。

 大学間連携で講義や実習にPKDを導入する計画も立てていて、多摩美術大や名古屋市立大などのデザイン系の学部学科に声をかけています。

   *

 デザインには人の夢をかなえる力があります。若者たちもまた、理想を貫き、デザインの役割を拡大していってくれることを願っています。

 (大阪大大学院教授 川崎和男)

 《記者から》

 今春、世界41カ国の芸術・デザイン系大学の組織「クムルス」主催の国際デザイン会議が京都で開かれ、国内外からデザイナー、学者ら約500人が集いました。デザインの環境や社会問題への貢献、幸福の創出などうたう「京都デザイン宣言」を採択。PKDに通じるデザインの挑戦が、世界のあちこちで始まりそうです。(高橋真紀子)

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