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法政大学総長 平林千牧氏

2007年9月4日

◆意欲的な改革を進める法政大学

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法政大学総長 平林千牧氏

 法政大学は、この10年間に6学部を新設。来年度には、さらに3つの学部が誕生する。

 また、キャンパスの整備から入試制度と年々進化を続けている。そうした法政大学の意欲的な改革について、平林千牧総長にインタビューさせていただいた。

◆パイロットも養成する理工学部

 まず、法政大学は先進的な教学改革を大きな柱として大学改革を進めてきましたが、今日では理工系学部の強化を最重要課題としています。工学部では04年度にシステムデザイン学科、06年度には生命機能学科が発足しましたが、今春は工学部から建築学科、都市環境デザイン工学科、システムデザイン学科の3つを独立させたデザイン工学部が新たに誕生しました。

 引き続き08年度からは理工学部、生命科学部が発足しますので、理工系は情報科学部をあわせ4学部という充実した体制になります。特に、理工学部では航空操縦学専修というコースが開設されますので、大きな話題を集めることになると思います。

 この航空操縦学専修は、日本航空と連携してエアラインのパイロットを養成します。法政の卒業生からは、ほぼ毎年ラインのパイロットの卵が誕生している実績もあります。実際、今年も2人の学部生が大手航空会社から内々定を得ているようです。法政はもともと他大学に先駆けて1929年に航空部を発足させており、1931年には学生と教官が乗った「青年日本号」という飛行機でユーラシア大陸を飛んでヨーロッパに行っています。その後、1941年に開設した法政大学航空工業専門学校が工学部の前身ですので、法政にとっては念願だったコースの開設です。

 他大学にもパイロットの事業用ライセンスを取得できるコースはありますが、米国で操縦訓練を受けるという形になっています。しかし、法政では、すべて国内で履修・訓練してライセンスを得ることができます。学部から修士まで一貫で丁寧に育成することも大きな特徴。定員は30名ですが、大空を飛ぶことを仕事にしたい人はぜひチャレンジしていただきたいですね。

◆植物の医師を育成する生命科学部

 もう一つの生命科学部は、生命機能学科、環境応用化学科が設置されます。一般的な生命科学、バイオの研究だけでなく、生命機能学科は生命機能学と植物医科学の2専修があり、中でも植物医科学専修は「植物医師(植物保護士)」の育成を目的としています。これは国家資格である技術士の一つであり、地球環境にとって不可欠な専門家といえるでしょう。環境分野は21世紀における大学の重要なミッションの一つであり、学生の関心も高い分野です。植物の健康を守る専門医を養成することで、環境問題・食糧問題に大きく貢献したいと考えています。

 最近、リタイア後、農業分野にチャレンジしようとするシニアも多いですから、社会人の入学も想定しています。豊かな人生経験は、植物医師として様々に応用できるのではないでしょうか。

 現代は高卒者の50%以上が高等教育を受ける「高度知識社会」。その中でも、レベルが高く、リーダーシップを発揮できる人材を育成することが、法政大学の使命なのです。

◆世界の中の日本を知る、グローバル教養学部

 こうしたリーダーシップには、国際的な視野や行動力も必要になります。そこで、やはり08年度から発足するのが、グローバル教養学部です。ごく簡単にいえば、英語というコミュニケーション手段によって世界および日本を知る学部といっていいでしょう。このため、最低でも1セメスターは提携大学に留学していただきます。授業がすべて英語であることはもちろん、国際人として自分が活躍しようとする分野の勉強を徹底的に学ぶことができます。

 法政大学では、06年度からアイジス(Institute for Global and Interdisciplinary Studies)と呼ぶ学部横断型の国際教育プログラムを実施しており、これを4年間の学部として発展させたものが、グローバル教養学部なのです。21世紀の日本人に必要な国際的センスが、リベラルアーツを通じ養われることに重点を置いており、予備校などの調査でも高い評価を受けているようです。

 これまで「国際」といえば、海外に出ていくことが前提でした。しかし、これからは海外からの人材を受け入れる体制が必要。すでに法政では国際日本学が21世紀COE(高度研究拠点)に採択されており、大学院では数多くの留学生が学んでいます。そうした人的学問資産を活かすという意味でも、グローバル教養学部は意義があると思います。

◆高度専門職業人および研究者として社会のリーダーを養成する公共政策大学院(仮称)

 これからの日本は、かつてなかった問題を克服していかなければなりません。特に人口減少・超高齢化社会状態は、世界のどの国も経験していないほど急速に進みます。その中で、どのように日本人の生活水準を維持し、幸福度を上げていくか、どうしたら都市と地方の格差を解消できるかなど、困難な社会問題を解決に導いていく研究者やリーダーが求められています。

 こうした問題に対し高いレベルで取り組むため、法政大学では、学部に基礎を置かない独立研究科として、公共政策大学院を08年度に開設する準備を進めています。幸いにも、本学においては、とりわけ地域研究・人材育成のすぐれた研究者が充実しています。これらのすぐれた能力を大いに活用できる分野であり、高い評価を得られる教育プログラムが実現できるでしょう。

 具体的には、入学した学生のニーズをテーマとしてアレンジしていく、プロジェクトベースの教育を実施します。常に現実の動きを見据えて、その現実に対する最良の解を研究していくということです。

 このため、すでに活躍している本学地域研究センターが進めている、地方自治体との提携を大学院研究に生かし、研究機関と大学院が一体となって高度の人材養成を行う体制を推進していくつもりです。

 国立大学は、研究者あるいは「官」にかかわる人材、つまり行政などに携わる人材の育成を主眼としてきました。それに対して、私立大学は「民」の人材育成では社会において圧倒的に大きな役割を果たしてきたと思います。21世紀で最も重要なことは「民」をどのように豊かにしていくのか、活力を与えていくかということです。それこそが私学のやるべき使命ですから、これを明確にビジョンとして位置付け、多面的な機能を展開していきます。法政が「改革」を旗印として変わってきた理由も、まさにそこにあるのです。

 法政大学は明治期に法律専門学校として誕生しました。法律という側面から、近代社会を担う人材を育成したのです。これからは、様々な分野でWell-Being=「より幸せである」ことを実現していくリーダーの養成が急務だと考えています。

◆地域で活躍するリーダーが必要

 中でも、地方地域にこうしたリーダーは不可欠。東京で学んだことを、地域で生かしていくという双方向性を意識すべきです。これは海外留学の場合も、その成果を帰国して生かすという意味で同様でしょう。沖縄では、現地で活躍する法政OBと現役学生を交えたキャリアセミナーを実施しており、それをウェブで発展させた「オレンジネットワーク」が稼働しています。各地域で活躍するOBと現役学生がウェブ上で情報交換することで、様々な知識を提供・受信、法政人のネットワークの強化を進めています。

 新学部および大学院新研究科の開設や地域社会への貢献活動によって、21世紀の法政大学は「リーディング・ユニバーシティ」を目指しています。日本は天然資源に乏しいため、人間という資源がきわめて重要だと繰り返し指摘されています。日本の未来は間違いなく、ヒトの能力的発展にかかっています。そのためには、やはり高等教育を充実させていくしかありません。

 それを明確に意識して、そのためには何をすべきか。今後も全学を挙げて、この課題に取り組んでいきます。

◆拡充する地方入試

 地方ということでいえば、すでに全国10か所で地方統一日程入試を実施しています。各学部入試(A方式)では、来年度より仙台会場を追加し、全国6会場で受験可能とします。

 法政を受験される学生の皆さんのレベルは高いわけですから、受験生の「数」の問題だけでなく、優秀な学生つまり学ぶ意欲の高い学生の入学が重要です。そのために、多彩な受験機会を提供するということなのです。「大学入試センター」利用入学試験後期日程の導入も、同じ理由です。

 機会だけでなく、学費の面でも奨学金ファンドを充実させ、優秀な学生に様々な学費支援を行っています。今年度から、地方入試向けの奨学金を設けましたが、今後もさらに充実させる予定。自治体推薦入学も行い、選抜された学生は法政が学費を支援します。もちろん、卒業後は地方に戻って活躍していただくことが条件。

 数多くの優秀な学生に入学していただき、日本全国、そして世界で、それぞれリーダーとして自信をもって活躍していただき、そこに日本の将来の夢を託せる法政人を育成することが、本学の願いなのです。

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