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日本女子大学学長・理事長 後藤祥子氏

2007年10月1日

◆21世紀に活躍する女性の教育に力を入れる名門女子大学

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日本女子大学 学長・理事長 後藤 祥子氏

 日本女子大学は2001年に創立百周年を迎えた。

 昨今受験生の共学志向は強くなっているが、男女共同参画の現代だからこそ女子大学の意義は大きい。現在も多くの分野に女子のリーダーを輩出している日本女子大学。その特色を後藤祥子学長に伺った。

◆なぜ今の時代に女子大か

 女子大のよさとしてリーダーシップが自然に養われることだとよく言われるところです。しかし共学でもそれは可能であると反論もされます。そこで日本女子大学に入って学生がどう伸びていくか一つの事例をお話ししましょう。

 教育実習の実習先を訪問しますと、よく校長先生に「高校卒業時に同程度の学力の学生が、教育実習に戻って来た時、共学の学生さんよりも日本女子大の学生に成長が見られますね」と言われます。「女子大学に行くとどうして伸びるのですか」と質問もされました。これは本学の学生の能力を伸ばす教育の成果の現れではないでしょうか。思春期や適齢期に煩わされないで勉学に打ち込み、自由に伸び伸びと自分の能力を開発できる環境があること、これは女性にとってかなり有利な環境だと考えます。

 それから女子大は女性が生涯にわたって生き方の方向性を、多用なバリエーションの中で提示できるという利点があります。在学中から卒業後のライフプランまで、いかなるときも人生をサポートし続ける体制が整っています。これは創立者の成瀬仁蔵が他大学に先駆けて「生涯教育」を提唱した教えを今に生かしているのです。もう一つの強みは卒業生組織です。本学の「桜楓会」(社団法人日本女子大学教育文化振興桜楓会)は社会貢献もしながら、生涯にわたって女性が学び、生きていくことをサポートしていく組織です。これらの本学独自の教育体制から、女性が在学中にも能力を伸ばし、卒業後も成長していくことができるのが、本学の何よりの魅力です。

◆現在本学が力を入れていること

 具体的に本学が、いかにして女性の能力を伸ばすために取り組んでいるかお話ししましょう。本学も文部科学省のGPにいくつか採択されています。それ以外にも多くの活動を行っています。それらのすべてが創立者の理念を現代に具現化したもので、これをたどることで本学が今の時代に何を大切にしているか見えてきます。

 「アジアの女性高等教育とエンパワーメント」は早くから取り組んできた「平和活動」が基盤にあります。アフガニスタンの女性教育支援に始まり、サウジアラビアやベトナムと広がって、アジアの女性教育を支援しようとするものです。これらの国々に教科書を作成したり、家庭科を教えたりしています。本学は中国の中華女子学院や韓国の梨花女子大学とも深い関係があります。アジアの意識改革をし、平和運動を核にして、アジア全体が発展していくことに貢献しています。これも創立者がまいた平和運動の種でしょう。

 「女性研究者マルチキャリアパス支援モデル」は、本学は私立の女子大で唯一理学部があり、多くの研究者を輩出しているという実績もあずかっての採択だと思います。自然科学分野の女性研究者は特に、出産、育児などで仕事を続けていくことがとても困難です。本学には子育てをしながら、研究者として自立している卒業生が多くいます。彼女たちが乗り越えてきた経験を通して、子育てをあらゆる方法でサポートし、最新の研究状況から女性研究者を遠ざけないで済む方法を編み出すことで、体制を作ることに力を入れています。

 「資質の高い教員養成推進プログラム」は、大学院教育の中で、地域のこどもの安全を守るために「生活安全コーディネーター」を養成します。地域の教育委員会、警察の協力を仰ぎ、危険の多い小学校や中学校で安全についての専門的指導力を持った教員を養成しています。

 今年は「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」が採択されました。女性は子育て・介護と離職せざるを得ない事情も多いのです。一度辞められた方が、再就職ができるように最新の学びを支援するという仕組みです。具体的には英語力をつけること、ITの技術をつけること、労働保険、社会保険について知識を深め、企業に関係する法律を学ぶ。再就職にあたっては、商工会議所などと連携をとりながら、進めていきます。

 「教員養成専門職大学院」でもGPの採択を受けました。これは卒業して教員になった人が、もう一度学ぶことで、さらに力をつけて職場で力を発揮することを願っております。現在教師を取り巻く状況は社会的にも厳しいものがあります。そこで家政学部を持っている他の5女子大学と連携して連合教職大学院を設立して、教師の悩みに対応し、学校経営の手法を学んでいただきたいと考えています。

 これらは、現代を生きる女性にとってとても大事な問題ばかりです。本学なりに支援し、解決するために力を注ぎたいと考えております。 

◆総合大学のすばらしさ・日本女子大学が大事にしているもの

 本学は広いネットワークが早い時代からありました。クラブ活動でも早くからインターカレッジの公認で他大学と一緒に活動しています。女子だけで固まることなく、広い関係の中で女子の思考能力、判断力を培っていくことができます。本学は家政学部、文学部、人間社会学部、理学部の四学部に大学院の五研究科が設置されています。総合大学のよいところは、入学してから他学部の授業、それも専門性の強い教養科目を受講できることにあります。専門性の強いエッセンスを、専門外の学生にも存分に提供しています。また、「教養特別講義」は創立者成瀬の「実践倫理」を原点に今も続いている本学独自の重要な授業です。毎年夏には軽井沢の三泉寮で他学部の学生と寝食を共にして、人生や社会について議論し合います。所属する学部学科の特色を出しながら、総合的な力をつけ、実力を発揮する貴重な学びの場となっています。

 現在本学以外にも多くの歴史ある大学があります。その中で本学の特色はさりげない形で、すべてに創立者の理念が生きていることでしょう。学生は本学の伝統の積み重ねを知らないうちに感じて、体内に蓄積しています。本学で学び、得られた可能性の眼が現代のニーズにつながっているのです。

 受験生の皆さんは、目先のきらびやかさを求めるのではなく、10年後、20年後に生きがいのある人生を送れるようにしていただきたいですね。本学は自分の能力が全開できて、友達の豊かなネットワークがあって、そして困ったときに常に帰ってくることのできる大学です。生涯にわたって学びを実践される方にはもっともお薦めしたい大学です。 

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