専修大学学長・理事長 日高義博氏
明治13年(1880年)9月に京橋区木挽町にあった明治会堂において開学した専修大学は、平成21年(2009年)には創立130年を迎えます。
■専修大学の歴史
専修大学の歴史は、1880年(明治13年)に開校された「専修学校」に始まります。専修学校は、約8年間に及ぶアメリカ留学から帰国した4人の若者により創立されました。創立者である相馬永胤、田尻稲次郎、目賀田種太郎、駒井重格の4先生は、幕末の動乱の中を強靱な精神力をもって生き抜き、明治維新後、幸運にも国費あるいは藩費を得てアメリカに留学する機会を得て、コロンビア、エール、ハーバード、ラトガースの各大学で法律や経済などの先端の学問を学びました。海外において日本の国の形を考え、近代法の黎明期にあった祖国日本の社会の骨格を支える人材を高等専門教育によって養成することこそが自分達の使命であると考え、専修学校に至るのです。
■建学の精神から「社会知性の開発」へ
4人の創立者たちは、近代日本の人的基盤を市民レベルから築いていこうとしたのです。この創立者たちの熱き思いは、今日まで専修大学の建学の精神として息づいています。21世紀に至り、本学のビジョンとして「社会知性の開発」を掲げておりますが、この21世紀ビジョンは、建学の精神に立ち戻って策定されたものであり、本学の教育・研究そして社会貢献の要となるものです。
社会知性というのは、「専門的な知識・技術とそれに基づく思考方法を核としながらも、深い人間理解と倫理観を持ち、地球的視野から独創的な発想により主体的に社会の諸課題の解決に取り組んでいける能力」のことです。価値体系が崩れ、規範意識が希薄となり、倫理観が迷走している今日の社会において、この社会知性を開発することは、問題を発見しそれを解決するための能力を身につけるだけではなく、人間性豊かな倫理観のある有為な人材を育成することを大学教育の柱に据えることを意味します。このことは、創立者たちが専門教育によってわが国の人的基盤を築こうとした熱き思いを現代社会において実現することであると考えます。
■これまでの大学改革
2001年(平成13年)には、従来の5学部(経済・法・経営・商・文)に加え、IT化が進む現代の高度情報化時代に対応するため、生田キャンパスにネットワーク情報学部が開設され、2004年(平成16年)4月には、法曹養成に特化した教育を行う法科大学院を神田キャンパスに開設しました。さらに、2006年4月には、政治・行政分野で活躍できる人材を育成すべく法学部に政治学科が新設され、商学部では商業学科がマーケティング学科としてスタートしました。いずれも、社会知性の開発という観点からの構想であり、建学の精神をもとに時代の要請に応じたグランドデザインを策定し、教育・研究の充実を図りたいと思います。また、「学生を基本に据えた大学づくり」を念頭におきながら、学生諸君が専修大学で学んだことに自信と誇りを持つように、教育力さらにはオール専修のパワーを一段と強化するために尽力したいと思います。
■専修大学が考える大学教育の全体像
まず第1に、大学は学術を教授するところではありますが、学生が主体的に勉学することを前提にしています。大学での勉学は与えられるものではなく、自ら求めて修得するところに大きな意味があります。まさに、「求めよ、さらば与えられん」という世界なのです。この点が高校までの教育と基本的に異なっています。
大学の専門教育においても、基本的な知識やテーゼを教えることから出発しますが、それは学問を教授する上では、30〜40パーセントぐらいの比重しか持っていません。教育の目標は、問題を自ら発見し、解決方法を検討し、適切な解決策を引き出しうる力、つまり自ら考え、自ら解決する力を修得させることにあります。ここでは、物事を分析し、さらに統合する力、解決の道筋を組み立てる力、文章や会話によって説得する力などが要求されます。これらの知力を身につけることが大学教育の醍醐味ですし、偏差値では測られていない知的領域です。
第2に、学生も大学の知的共同体の一員であるということです。大学は、真理を探究する場であることは言うまでもありませんが、大学の外にある社会の諸問題を解決し知の発信をする機関でもあります。真理探究や問題解決のプロセスに学生も関わっていてこそ、学問の継承および発展があるのです。学生は、自ら問題解決のプロセスを垣間見ることで、問題解決の方法を体得するのです。取り組む問題には、はじめから正解は用意されていません。答えも1つではないのです。解答に説得力があるかどうかが重要なのです。
第3に、大学で修得することは、社会に出て直ぐに役立つというものではなく、むしろ生涯にわたって具体的な形にしていかなければならないものだということです。そのための羅針盤となるべきものを在学中に獲得していただくため、本学では、さまざまな取り組みを用意しています。
■これからの専修大学―大学と社会との相互作用を
21世紀に入った今日においては、私学全体にふりかかる大きな荒波を乗り越え、さらなる発展を遂げなければなりません。難局といえども、常に創立の原点に立ち返り、本学の進むべき指針を熟慮するならば、自ずと道は拓かれます。
今般、平成21年に創立130年を迎えることを契機として、本学の歴史と伝統を基盤としながら大学の将来を展望すべく、オール専修の力を結集し、創立130年記念事業を幅広く展開することに致しました。創立130年記念事業を展開することにより、「社会知性開発」大学として基盤を強固なものにするとともに、私学としての個性と特長を発揮しうる「知の発信」を顕著なものとし、大学と社会との相互作用を現実のものにしていきたいと考えています。