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2011年10月19日
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進学特集

ものづくり日本を継ぐ技術 レース車作りにプラ分別回収

写真:東京電機大学:リーダーの新井晃寿さん(手前)とチームのメンバーら=埼玉県鳩山町拡大リーダーの新井晃寿さん(手前)とチームのメンバーら=埼玉県鳩山町

写真:芝浦工大:実験装置の前で細かく砕いたプラスチック片を手にする芝浦工業大の学生たち=東京都江東区拡大実験装置の前で細かく砕いたプラスチック片を手にする芝浦工業大の学生たち=東京都江東区

 時代に先駆ける製品や社会の役に立つ製品を、試行錯誤しながら作りあげ、技術を磨く。学んだことを生かし、一つのものを作り上げる楽しさ、苦しさを経験している学生たちがいる。「ものづくり日本」のこれからを支える人材が、大学で育っている。

●夢の一台、ゼロから作る 東京電機大

 設計から材料調達、組み立て、スポンサー獲得まですべて学生が手がけ、レーシングカー1台を作り上げる。理系大学ならではのプロジェクトに、東京電機大学理工学部(埼玉県鳩山町)の学生たちが青春をかけている。

 キャンパスの端に、自動車修理の町工場のような「夢工房」がある。「フォーミュラSAEプロジェクト」チームの学生らが、つなぎ姿で動き回る。F1カーと似た車体が目を引く。

 リーダーの3年、新井晃寿(てるひさ)さん(21)は、1〜3年のメンバー14人を束ねる。アドバイザー役の小平和仙(かずのり)講師は「僕は口出ししません。たまにアドバイスするだけ」と話す。

 チームは2001年に始動。翌02年から9年連続で、世界中の学生が集結する国際大会に参加し、05年には4位に入った。10年目の今年も、12月のオーストラリア大会を目指す。「小型で軽量。重い部品を中心に集め、切り返し性能を高める」ことがテーマだ。

 昨年の大会にもリーダーとして参加した新井さんには、苦い記憶がある。事前の車検で、エンジンがかからなかったのだ。後に、ガソリンを供給するプログラムの管理ミスとわかった。27チーム中、総合成績は18位。大会は、レース以外にもデザインやコストなど計8部門の総合成績で争う。コスト部門は3位、デザイン部門は9位と、上位を狙えるはずだった。

 「完全に、工程管理のミス。作業が間に合わず、戦える車じゃなかった」。新井さんは反省をばねに、エンジン系や駆動系など数パートに分かれているメンバーの間を頻繁に飛び回る。密なコミュニケーションで工程把握に努めている。

 新井さんは、高校時代、レーシングカート店の店長からこのプロジェクトの話を聞き、AO入試で入学した。「学部の授業は難しいけど、材料工学や流体力学など、理論の部分が車作りにつながる」と話す。始業前、放課後は工房に張り付く。1週間以上家に帰らないこともざらで、休日は年に3日程度だという。

 それでも新井さんは「レーシングカーを設計から組み立てまでできるって、夢のような話です。会社じゃありえない。恋愛なんてやってる場合じゃないですよ」と目を輝かせる。

 小平講師は言う。「僕は元々、車の設計をしていたけど、あいつらみたいなやつと仕事したいですよ。半分プロみたいなもんです」

●キャップ分別、理論を形に 芝浦工大

 ペットボトルを捨てる時に、本体と分けて回収されることが多いプラスチック製のキャップ。プランターなどに再利用されるが、実はリサイクルの効率は悪いという。素材が主にポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の2種類あり、混同して回収されているためだ。

 うまく素材ごとに分別できないか。企業からのこんな依頼を受け、芝浦工業大学(東京都江東区)の学生たちが装置の開発に向けた企業との合同プロジェクトに加わっている。

 昨年度から実験を重ねているのは、工学部機械工学科の佐伯暢人(まさと)教授(機械力学)と、研究室の学生・大学院生4人だ。

 ほぼ密度が同じPPとPEを分別するのに、佐伯教授が考えたのが、静電気。修士2年の落合敬一さん(24)は「プラスチックの下敷きを頭にこすりつけた後に少し浮かせると、髪の毛が下敷きにくっつく、あの原理です」と説明する。

 キャップをミリ単位にまで細かく砕き、攪拌(かくはん)機などの中でこすり合わせると破片が静電気を帯びる。この時、PPはプラス、PEはマイナスに帯電することに着目した。帯電した破片を上から落としてプラスとマイナスの電極の間に通せば、PPはマイナス方向に、PEはプラス方向に引き寄せられる。それぞれの下に用意した受け皿には分別された破片がたまっていく。

 と、理論上はできるはずだが、現実は足踏みの日々だった。装置を通してもPPとPEが混ざったまま出てくる。どの程度分けられていたかを調べるため、ひたすらピンセットで破片と格闘した。こすり合わせる程度や電極の形など、アイデアを出し合いながら実験を繰り返した。

 約1年の試行錯誤の末、ほぼ完成といえるところまできたのが今年8月。学部4年の高木文寿さん(22)と吉澤和之さん(22)は「目に見えない静電気が相手。答えがない中、道を探していくのが大変だった」と振り返る。

 企業とのやり取りも学生には未知の世界だった。落合さんと修士1年の酒井美和さん(23)は「企業の人と何度も話し合い、商品ができるまでのプロセスを知ることができた」と話す。

 佐伯教授は「自らアイデアを出して具現化していくことが大事。企業に望まれている部分で成果を出すことで、学生もやりがいを感じている」と話している。

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