■「高校と大学の接続特別部会」初会合
大学入試と大学・高校の教育は変わるのか。大学入試が主なテーマとなるのは久しぶりになる中央教育審議会。新たに設けた「高校と大学の接続特別部会」が9月28日、初めて開かれた。高校と大学の「接続」はテクニカルな言葉だが、わかりやすくいえば高校と大学の教育がそれぞれ円滑に連動していない現状があるので、大学入試も含めて生徒・学生主体の力を底上げするために議論しようということだ。1回目から、「高校の基礎学力を認定する試験が必要」という意見が複数の委員から出された。ほかに、大学入試センター試験の科目をこれ以上細かくせずに総合的な科目を設けることや大学入試そのものも1点差を争わないグレードに変える意見もあった。大学入試や高校教育の学力認定にかんしていえば、大胆な構想につながる可能性がある。
会議では、中教審大学分科会会長の安西祐一郎氏が部会長につくことになった。メンバーは、大学側、高校側、産業界側、その他と、おおむね三つに分けることができる。初回ということもあり、全員が意見を述べた。そのなかの一部を紹介したい。
「キャリア教育の後方支援を経験していた印象では、学生に体験の力が欠けている。しかし、それぞれの学生が意欲に火を付いたとき伸びる。小中高で学力がそれぞれ到達しないまま大学に入ってくる不幸な現実ある。多くの若者が自立して生涯学び続ける環境つくりたい」
「入試の基本方針をどうよみかえるか。生徒の適性の判断か学習の到達か。共通の基礎的なものがあるか。高校生の基礎学力の認定試験が必要だろう。どのような生徒も受けるという共通の基準に基づき、就職する学生も含めて課せばどうか。何回受けてもいい仕組みに。センター試験は細かくなりすぎたので入試科目をおおくくりにする。総合的な科目を増やすべきだ。もう長期的にもちこたえられないだろう。また、大学入学時の学部学科の分け方は細かすぎる」
「高校と大学がつながるために何が必要なのか。家庭学習の時間が少なくなっている。入学後のあとの問題も含めて考える」
「学び続ける青年をつくる。大学入試に影響受けるのは事実だ。高校の卒業認定には、高校で基礎学力を認定する試験が必要ではないか。センター試験という方法でなく、グレードで基礎基本をみる。高校教育は自立している。もとになる力は基礎基本。学習指導要領の体験が重要だ。楽しさ、活用能力、基礎基本に基づけて力つける。各大学は意欲や活用能力をみる試験を考えるべきだ」
「以前言われてきた『高大接続テスト』は高校からみると、大学の問題と受け止められていた。学力状況の把握は、高校教育が担うべきと受け止める。高校の客観的な把握の仕組みは入試と区別して考える」
「大学は、頭のいい学生をほしがる。1点差争わない入試、つまりグレードで判断すべき。頭のいいとは何かというと、暗記力と知能は違う。たとえば、新しい機器を使い入試で辞書や検索を許すことがあってもいい」
「企業の現場では、採用する際に成績はあてにならない。高校から大学の選抜がブラックボックス化している。人材競争はグローバル。日本人か中国人かシンガポール人かという採用になっている。入試は何をもって採点基準としているのか。共通の基準を使ったもので判断してほしい。一定の学力は統計的に担保しているが、コミュニケーション能力をみる方法を入試の仕組みに入れていただきたい」
「入試の客観的なデータが議論のうえで必要だ。AO入試で入学後どんな違いあるのか。私学でも違う。センター試験での科目とその後の学生の動きも。基礎的なことわからないと空理空論になる」
自由討論となったので、さまざまな意見が続出した。しかし、高校教育の質を保証するための基礎学力認定試験が必要という考え方が、大学側からだけでなく高校側からも出てきたのが大きな注目点だ。さらに、センター試験や個別大学の入試でも1点刻みの合否判定ではなく、グレード(成績別の階層分け)で判断するよう求める意見も根強かった。さらに、センター試験のトラブルを教訓に試験科目の細分化や大学入学での細かな入り口(学部・学科の細分化)の見直しを指摘する声もあった。
高校教育そのものは学習指導要領に基づいて内容の大枠が決まっている。それだけに、基礎学力認定試験が全教科を横断する一般的な能力を測るものになるのか、教科別を意識したものなのかはまだ見えてこない。一方、気になるのは現行のセンター試験の存在だ。トラブルはあったものの、やはりセンター試験は伝統的な質保証システムとして機能してきたのも事実。高校の基礎学力認定試験というものをセンターが担うのか、それとも小中学校で実施している全国学力調査のようなスタイルにするのかも課題になるだろう。
大学入試の場合は、情報が公開されているとは言い難い。重要な情報を公開したうえで、テクニカルな側面だけでなく生徒や学生の力を伸ばす視点(選抜から育成)がいまは必要になっている。

愛媛県生まれ。1984年、朝日新聞社入社、横浜、青森支局に勤務。90年から東京社会部。教育班・文部省担当を4年間、2000年から大阪社会部次長、企画報道部次長、論説委員(教育担当)などを経て2005年に東京社会部次長。「子どもを守る」やいじめ問題などのキャンペーンを手がける。