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全入時代

再編生き残りかけ 慶応・共立薬科「勝ち組」が動いた

2007年05月07日

 「勝ち組」が本格再編の口火を切った。昨秋発表された慶応大と共立薬科大(ともに東京都港区)の統合は、「私学の雄」が名門薬科大を実質的に吸収する構図だ。大学・短大の入学定員と志願者の総数がほぼ同じになる「全入時代」を迎え、大学にもM&A(合併・買収)の嵐が吹き始めるのか。

◆医学部欲しい?早稲田の動向

 格付け大手の格付投資情報センターは、大学を運営する20余りの法人に格付けを出している。

 慶応大を中核とする学校法人「慶応義塾」は、上から2番目の「AA+(ダブルAプラス)」。「信用力は極めて高い」とされ、企業ではJR東日本などと並ぶ。この上の「AAA(トリプルA)」は、大学では国立大学法人・東京大学だけ(3月末時点)。

 今回の統合は、先行きの厳しさを見すえた共立薬科大が慶応に持ちかけた。が、救済合併ではない。慶応大は医学部と看護医療学部を持ち、薬学部が加わると「医の総合化」が実現する。08年の創立150周年に向けて強化策を打ち出す慶応には渡りに船で、「時間を買った」と言える。

 慶応が動き、注目されるのが早稲田大(東京都新宿区)だ。

 学校法人「早稲田大学」の格付けは、慶応と同じAAプラス。「慶応とは文武から経営改革まで競ってきた」(大手予備校)だけに、今春に大学の理工学部を再編するなど、今秋の創立125周年に向けて新機軸が目白押しだ。

 「早稲田が欲しいのは医学部。医工連携ができ、研究・教育力が一気に増す」と経営コンサルタント。すぐ近くにある東京女子医大と00年に学術交流協定を結び、共同の大学院を視野に施設を建設中だ。

 「合併の布石では」とささやかれるが、白井克彦・早大総長は「そんな話は一切していない。いまは合併するメリットが見当たらない」。ただ、理工学の立場から医学領域の開拓を進めているだけに、「医学部があった方がいいという空気が学内で強まれば、真剣に策を考えればいい」とも話す。

◆関西でも動き グループ結集も

 ここ数年の主な大学統合・合併は表の通り。近隣の国公立大同士から私立へ、という流れが一目瞭然(りょうぜん)だ。

 国公立大が先行したのは、文部科学省が01年、国立大の法人化と再編を柱とする「大学改革」を提案したからだ。補助金総額を減らしつつ評価に基づいて配分するとの方針に、大学は危機感を強めた。「文科省が糸を引いた官製統合」と言われるゆえんだ。

 再編の主舞台となりつつある私立では関西でも、まず勝ち組が総合力強化に動いた。

 「西の雄」の関西学院大(兵庫県西宮市)は、近くの聖和大と09年春に合併する。中学・高校に加えて来春に小学校を開く関学が、幼稚園を持つ聖和大を取り込んで「幼稚園から高校までの先生を自前で育てられる」(平松一夫・関学大学長)体制を整える。

 グループ内で足元を固める動きも出てきた。東海大(神奈川県平塚市)は4校が一緒になって組織の効率化をめざす。

 同じ学校法人の傘下にある武蔵工業大と東横学園女子短大(ともに東京都世田谷区)は統合で総合大学となり、理工離れ・短大離れの逆風をはね返そうと躍起だ。

◆医薬と福祉 再編の軸に

 今後の大学再編のキーワードは何か。

 「医学、薬学、福祉、教育系の大学、学部が軸」。こう見るのは野村総合研究所の上席コンサルタント、日戸(にっと)浩之さんだ。多様な研究ニーズがあり、各種の資格が取れて人気が高い点が共通する。高等教育総合研究所の亀井信明社長は「1学年の定員が300人以下のような小規模校の場合、単独では生き残り競争に不利」と指摘する。学生募集の広告や営業、入試準備には大規模校に劣らぬ手間と費用がかかるからだ。

 大学は、大幅な定員割れさえなければ入学金や授業料で資金繰りがつく。歴史や伝統に基づく「建学の精神」へのこだわりも強く、企業と比べて再編には縁遠いと見られてきた。

 しかし、大学・短大を受験する18歳人口は、92年の205万人から07年には130万人へ落ち込み、さらに10年近く減り続ける。「パイ」縮小の影響はあまりに大きい。

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