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全入時代

博士売り込み大作戦 就職応援の催し、各地で

2007年10月02日

 国の政策で急増したものの、就職先がなかなか見つからない博士の就職を支援する動きが広がり始めた。狙いは民間企業だ。大学や学会が「お見合い」の場を設けたり、民間の人材紹介会社が参入したり。1万5000人を超えたポスドク(任期付きの研究職に就いている博士ら)の高齢化、就職難による「博士離れ」に直面し、文部科学省も動き出した。

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フォーラム「化学系ポスドクへの期待」で、自分の研究を説明する若手博士ら=東京都新宿区の早大で

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 アカデミック(学問)志向が強い博士は企業への就職を敬遠しがちで、企業も「博士は使いづらい」と採用をためらう例が多い。そんな現状に風穴を開け、両者の距離を縮めようという催しがこの秋、各地で相次いでいる。

■早稲田大

 ポスドク・キャリアセンターなどが9月11日、東京都内でフォーラム「化学系ポスドクへの期待」を開催。15人の博士らが、化学系企業20社の研究開発・人事担当者に自分の研究を売り込んだ。

 センターの西嶋昭生客員教授は「博士を数千人規模で受け入れられるのは、現状では企業しかない。『使える博士』はたくさんいることを企業に知ってもらうとともに、博士の意識も変えたい」と話す。 参加した東京大博士1年の酒田陽子さんは「企業から『博士はノー』ではない、と聞いて身近に感じた」。東大博士2年の桜井俊介さんも「進路を真剣に考えるきっかけになった」と語った。

■応用物理学会

 9月5日に北海道工業大でミーティング「博士後のキャリアを考える」を開き、企業に就職した博士の声を紹介した。

 化学メーカーに就職し、ホームページ「博士の生き方」を主宰する奥井隆雄さんは、博士へのアンケートの結果から「企業に就職した人は、大学関係者以外からも積極的に情報を得ていた」と指摘。ポスドクを経て富士通研究所に就職した高橋憲彦さんは「(大学での)研究を企業で生かせるケースは思った以上にある。企業という選択肢も捨てないでほしい」と訴えた。

■日本化学会

 博士1年と、修士2年の「博士予備軍」計100人に企業での仕事のやりがいや楽しさを伝える無料セミナーを11月に東京、1月に大阪で開く。「企業など多様な進路があることを早めに知ってもらう」(実行委員長の府川伊三郎・旭化成顧問)のが狙いだ。

 大手化学企業24社の技術職の採用者は修士が7割強を占め、博士は6%足らず。府川さんは「博士の割合を倍増させたい」と意欲的だ。

■日本物理学会

 会合の開催にとどまらず、より組織的な取り組みを目指す動きもある。

 日本物理学会は9月3日、物理系の博士の就職を支援する「キャリア支援センター」を設立した。学会では初の試みだ。

 事務局に4人の専任職員を置き、東京大など4大学と連携。求職中の約2000人の博士の専門分野や就職希望などを網羅したデータベースを作る。学会員や産業界への調査、幅広いニーズに対応できる博士の育成、政府への政策提言にも取り組む。

 センター長に就任した坂東昌子・愛知大教授は「連携機関を全国に広げて学会員の意識を改革したい」と話す。考えられる就職先として、イノベーションをになう中小企業のほか、小中学校の理科教員、政府や自治体などをあげた。同学会の鹿児島誠一会長(東京大教授)も「求人があれば、学会という横のつながりの強みが発揮できる」と指摘する。

 一方、大手人材紹介会社のテンプスタッフもポスドクの就職支援に乗り出した。

 9月上旬、名古屋大と提携して製薬会社や化学会社の研究開発職などの求人情報を提供し始めた。適性判断テストに基づくカウンセリングなどをし、その後企業との面接にのぞんでもらう仕組みで、今年度内に50人の就職を目指す。「企業の研究職は不足している。2、3年後には各地の大学と提携し、年間200人くらいまで増やしたい」(営業企画本部)という。

■文科省もバックアップ

 文科省は来年度から、企業での長期のインターンシップを含む人材養成プログラムを実施する予定だ。

 大学など15機関から、博士課程在学中の学生や若手博士のうち「意欲と能力のある人」を選び、企業現場での研究などに3カ月以上参加してもらう。在学中でない場合は30万円程度の「月給」を支給。具体的なプロジェクトにかかわり、企業のニーズに合ったマネジメント能力を身につけることを目指す。来年度予算に30億円を概算要求していて、数百人規模になるとみられている。

 同省の高比良幸藏・人材政策企画官は「博士はコミュニケーション力や協調性に問題があって使いづらいという認識も企業にはあるが、長期間じっくり見てもらうことで、使える人材はたくさんいることを知ってほしい」と期待する。

 昨年度にはひと足早く、若手博士の就職を支援するキャリアパス多様化促進事業を始めた。早大、名大、日本物理学会など、大学を中心に12機関で企業の採用説明会や短期インターンシップ、キャリア研修などを実施した。「一定の成果をあげており、内容を他の大学にも広めたい」(高比良氏)としている。

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