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全入時代

「学生中心主義」目指す 「天下り」批判から4カ月、結城・山形大学長に聞く

2007年12月25日

 文部科学次官だった結城章夫氏(59)が9月に山形大の学長に就任して、4カ月近くがたった。学内外から「天下り」と批判され、投票で対立候補に敗れながらも「逆転勝ち」した学長選。しこりは残っていないか。大学は何かが変わったのか。山形大で結城学長に聞いた。

■交付金減、厳しい現場実感

――学長就任から3カ月がたちました

 運営費交付金が減り、さらに(独立行政法人と同様に)5年で5%の人件費カットもあり、大学への締め付けが現場に効いているな、と実感しています。思い切った選択と集中をしないと、大きな効率化はできない。やりたくはないですが、このままでは、いずれ学科やコースの一つをあきらめざるを得ません。

――学長として取り組んでいることは

 教育、研究、社会貢献どれも大事ですが、山形大は教養教育で勝負しようと思っています。教養教育の充実には、カリキュラムを変え、先生の考え方を「学生中心」に変えないといけない。2年くらいかかる仕事かなと思います。どこをどう変えればいいかをじっくり考えています。学生と直接話をしたり、米沢市(工学部)や鶴岡市(農学部)のキャンパスに出向いたりすることにも力を入れています。

――公約に掲げた事務の効率化は進んでいますか

 事務の効率化や意思決定の迅速化の経験は、私は大学の先生よりも長(た)けていると思います。現在、事務手続きを大幅に見直す案を考えており、08年度はすっきりした簡素な体制で始めたいと考えています。

 月〜木曜の朝10時から、私と5人の副学長で「コーヒータイム」という時間を作りました。ごく簡単に30分ほど議論することで情報や問題意識を共有でき、すばやい意思決定ができるようになりました。

――学長選の対立候補2人を副学長にしました

 小山清人さん(前工学部長)は学内意向投票であれだけの票が入る人望、能力がある人。「使わない手はない」と思っていました。ああいう(意向投票で敗れたが学長選考会議で逆転で当選した)経緯があったので「工学部から1人副学長を出してほしい」と相談しました。結局、本人が入ってくれたので、「我が意を得たり」です。

 中島勇喜さん(前農学部長)は学長選の公開討論会で人柄がよくわかった。農学部から副学長が欲しかったので、直談判してお迎えしました。

――学長選のしこりは

 少なくとも私はほとんど感じていません。小山さん、中島さんも私の執行部で活躍してもらっていますし。

 学長選のあり方は、学長選考会議が全責任を持って決めるのが大原則です。学内意向投票をやるのか、その結果に縛られるのか参考にするだけなのか、この点も選考会議が決めることです。

――文科省出身者が国立大学長に就くケースは続くと思いますか

 それは各大学の判断ですね。経済界や別の省庁の役人がやったっていい。だんだんそうなっていくのではないでしょうか。それでも文科省出身者ばかりになるのはまずい。また、そんなことにはならないですよ。

――「天下り」批判をどう思いますか

 私は、文科省にコネを使うつもりはまったくありません。研究費は研究者の実力で取ってくるべきだし、私がいるから運営費交付金が増えるとは思いません。交付金は、その大学の努力と成果に応じて配分されるべきです。ただ、相談があれば、「こうしたら補助金を取りやすいですよ」というアドバイスはしていきたいと思います。

■混乱収め、学内好意的に

 結城学長に対する教職員の評価は4カ月の間に急上昇した。ある副学長は「腰が軽くごり押しもしない。それでも意思決定はしっかりやる。学長選考会議は見る目があった」と絶賛する。学長選で結城氏を「天下り」と批判し対立候補を支援した教授も、新学長の言動に好意的だ。ただ、「大学の常識」を知らないと実感したこともあった。

 山形大では、警察官が学内に入ると、いつどこで何をしたのかといった情報を、学長や学部長らの会議に報告する。結城学長は9月の会議で中止を求めた。しかし、「大学の自治の歴史を見れば、警察と緊張関係になることもある。報告するのが筋だ」と教員に説得されると、あっさり報告の継続に応じたという。

 教職員らの意向投票で敗れた結城氏が最終的に学長に選ばれた直後、対立候補だった小山前工学部長は法的措置も辞さない構えを見せた。しかし、1カ月後、小山氏は結城学長の要請に応えて副学長に就任した。「混乱の長期化は学生に悪影響を及ぼす。周囲にも『執行部に入って学内の意見を大学経営に反映すべきだ』という意見が多かった」と説明する。

 結城氏の学長就任について、他の国立大の学長はどう考えているのか。ある学長は「保身のためなら許されないが、不退転の意志を持ってやるなら問題ない」などと賛成する。しかし、別の学長は「補助金を多く欲しい、という狙いが露骨すぎる。国立大にとって自殺行為だ」と問題視するなど、賛否は分かれる。

 ただ、国立大の学長が文科省出身者ばかりになることには反対の意見が強い。ある学長は「3分の1を超えたら、時には国と一線を画す国大協の姿勢も変わってしまう」と心配する。

    ◇

〈国立大の学長選出のしくみ〉 国立大学法人法は学長について「(学部長や学外者らで作る)学長選考会議が決める」と定めている。かつてはほとんどの国立大が、学内の教職員らによる投票(学内意向投票)で1位になった人を学長に選んでいた。その名残で、多くの大学が今も学内意向投票を行うが、結果をどこまで尊重するかは各大学に任されている。

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