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全入時代

留学生獲得に奮闘 小規模校・大規模校 あの手この手

2008年02月19日

 少子化に悩む日本の大学にとって、優秀な外国人留学生の受け入れは、教育レベルを保つうえで不可欠になってきた。ただ、逸材を誘ったり選んだりするにも、日本に来てからのトラブルを避けるためにも、各大学は外国人の支援に腐心せざるをえない。福田首相が「留学生30万人計画」をぶち上げたのに先立ち、少しずつ受け入れ態勢を改善してきた小規模校と大規模校を見た。

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日本語の授業を受ける中国人留学生たち。右端は講師=広島県呉市の呉大で

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◆「失敗」糧に親身支援 呉大

 「広島弁と早口以外、ほぼ分かるようになった」

 広島県呉市の呉大学。中国人留学生の李潔さん(23)は7日、07年度最後の日本語授業を終え、ほほ笑んだ。来日して半年。日本のアニメと音楽に親しみ、重慶の大学で3年半、日本語を習った。「通訳になるためにも、日本人の考え方を学びたい」という。

 「呉大を選んだワケ? 『教職員が親身になってくれる』と、大連の学生仲間に聞いたから」。友人の呉桂平さん(25)が続けた。

 呉大は、学生数が約1200人の小規模校。このうち225人が留学生で、その9割が中国出身者だ。「少子化で18歳人口が減った分、勉学意欲の旺盛な留学生を受け入れ、キャンパスの活気を維持せざるをえない」と、坂田正二理事長は言う。幸い、広島県内には自動車メーカー、マツダの協力会社などが多く、「中国人学生を採用したい」という要望も強い。

 呉大は02年から順次、中国内の4大学と協定を結んだ。各大学で1年以上、日本語を学んだ人を対象に、呉側から教員が出向き、留学生を選ぶための日本語試験と面接をする。「協定校とはたびたび連絡をとるので、学生のやる気、家計状況も大体つかめる」と、岡隆光学長。出稼ぎを目的にするような人が、紛れ込むのをなくす工夫だ。

 「中国流の考え方がわかるスタッフが、呉側にも必要」と感じた岡学長らは、広島大に留学経験のある大学講師、何宗路(カ・シュウロ)さんを教授として招き、呉大を卒業した馮(ヒョウ)イ(おうへんになめしがわ)さんを学生部主事に起用。2人を含む十数人の教職員で「留学生支援委員会」をつくり、学生らの居心地をよくする策をねる。

 60人近く入れる寮では、来日後の半年間、掃除の仕方など日本の習慣を学んでもらう。ホームシックにならないよう、中国の衛星放送を受信するテレビを備え、パーティーや呉市民らとの交流会を企画。留学生1人ずつに担任教員がつき、いろんな相談にのる。

 呉大がここまでするようになったのは、留学生に大きく門戸を開いた5〜6年前につまずいたからだった。経済的な理由で勉学に集中できなくなった中国人学生の十数人が、相次ぎ退学し、保護者の元に帰ってしまった。他大学でも、中国人学生の失踪(しっそう)や不法就労が次々に表面化したころだ。「留学生を受け入れる以上、責任をもって面倒をみる必要があると痛感した」と、岡学長は言う。

 呉大は全留学生の授業料を4年間、半額免除している。収入に穴が開く分の3〜4割は、国からの補助金で埋めるが、残りは大学の経営努力でやり繰り。中国人の所得が上がり、多くの保護者は半額の授業料なら仕送りできるようになった。が、学生の大半は平均で月に7万〜8万円の生活費をアルバイトで賄う。「日本全体でもっと留学生を必要とするなら、国は各大学への補助金を増やさなければならない」と、坂田理事長は言う。

◆欧米式型入試を導入 早大

 東京都新宿区の早稲田大。学部と大学院で計5万4000人のうち、留学生は2700人余り。さらに5年後をめどに8000人への拡大をめざすなど、受け入れの最先端を走る。

 「世界の有力大と競うには、研究と教育の国際化が欠かせない。とくに学部レベルは、少子化で学生の質が低下しがち。1〜2割を優秀な留学生に置き換えたい」と、内田勝一・常任理事は意気込む。

 98年度から順次、学部と大学院の一部で、日本語能力を問わず、英語能力だけを問い、小論文などを中心とする欧米型の入試を実施。国際標準の「9月入学」も認めたところ、アジアから欧米に流れるはずの逸材が入ってきた。

 英語に堪能な教員と英語による授業を増やし、学内でやりとりする文書や標識なども英語版を用意する。

 大学院生むけには06年度、「アジア特別奨学金」をつくった。資格を得た人には授業料免除と、生活費などの支給を約束するという制度だ。

 さらに現在、国有地の払い下げを申請するなどして、学生寮の確保にも全力を挙げている。

 「奮闘する大学を、もっと国が財政的に支えてほしい」。内田理事もこう要望する。

◆首相「30万人目標」

 福田首相は1月の施政方針演説で、日本のグローバル戦略に触れ、こうぶちあげた。「留学生30万人計画を策定し、実施に移すとともに、産学官連携による海外の優秀な人材の大学院、企業への受け入れの拡大を進めます」

 07年度の留学生は約12万人。首相の方針は、研究者の提言に基づいたとみられ、2025年ごろの30万人達成を想定しているようだ。文部科学相の諮問機関・中央教育審議会に昨年暮れ、留学生ワーキンググループができ、ここで具体策の検討が始まった。

 米国、欧州の一部などはすでに、有望なアジア人留学生が産業や教育の起爆剤になるとみて、奨学金などの優遇策を拡充。囲い込みに躍起だ。

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