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〈学長力〉世界が求める人育てる 慶応義塾 安西祐一郎塾長

2008年5月27日

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写真東京都港区、東川哲也撮影

 今年、創立150年を迎える慶応義塾を引っ張るのが安西祐一郎塾長だ。節目節目で心に浮かぶのは、創設者福沢諭吉の生き方。大きな展望と現状への危機意識は、脈々と受け継がれているようだ。

 ――創立150年で「未来への先導」というテーマを打ち出していますね。

 「これからの世界と日本にどう貢献できるかというスタンスに立っている。福沢諭吉が塾を開いた頃は、封建社会から民主国家へ変貌(へんぼう)をとげた時代。今、世界はもっと成熟した民主社会への道を歩んでいる。日本がアジアをリードしたいが、まだ官主導から抜けきれていない。民が主導して官がそれを応援する社会をつくっていくべきだ。それを実現し、そのための人材を育成するのが最大の目標だ」

 ――どういう人材でしょう。

 「教育、研究、医療、社会貢献、経営など、すべてにわたって世界に影響力をもつ大学にしたい。そのため、人材育成においては『独立と協生』を掲げている。自分で考え行動する力と、他者と協力する力をもった人間を育てなければいけない」

 「今年、二つの大学院を開いた。システムデザイン・マネジメント研究科は、例えば交通や宇宙のような大規模なシステムのデザインと運営を学ぶ。宇宙飛行士を出している私立は慶応だけなんですよ(注・向井千秋さんと星出彰彦さん)。メディアデザイン研究科は、デジタル産業の技術が分かって、でも技術屋というよりもっと広いマネジメントのできる人材を育てる。どちらも日本の大学にはない。これからの日本、世界が必要とする人材の育成を勇気をもってやるのが慶応のやり方だ」

 ――今年4月、共立薬科大と合併し、薬学部ができました。

 「これまでの薬学部は研究と、薬剤師など地域で活躍する人材育成の役割に分かれていた。慶応の薬学部は研究、教育に加え、社会貢献の三つを合わせて新しい方向を打ち出していく。アジアにおける生命と健康の安全保障はこれから大事な課題になるが、大学として医療、看護、薬学の三位一体の教育と研究で貢献する。時間はかかると思うが」

 ――最近、入学金の将来的な廃止と同時に、学費の値上げを発表しました。

 「世界標準で行きたいということ。入学金は、世界の主要大学の人に説明しにくい制度。学費は学部によっては他大学に比べ低廉だった。学費の構造を変え、施設設備費と年間6万円の在籍基本料を納めれば、留学などで休学中は授業料を払わなくてよくなる。できるだけ実社会や国際体験を積めるようキャンパスの出入りを自由にしたい」

 ――中央教育審議会の委員として、高等教育に国は現在の倍の5.5兆円を支出すべきだと提言されています。

 「資源が少なく国土も狭い日本は、人材でやっていくしかない。その意味で高等教育は危機にあるといっていい。平均的な大学生の学力のレベルをもっと上げなければいけないし、トップレベルの大学でも世界の主要大学に比べれば財政基盤も教育・研究もまだまだ。もっと留学生の受け入れを増やし、多様な文化や背景をもつ学生同士のコミュニケーションを進める必要もある」

 「少子化の影響もあり、受験生の獲得競争に多くの大学のエネルギーが費やされている。だが、大学は入学後の教育の質の向上にこそ力を入れるべきだ。多くの大学の経営基盤は貧弱で、コスト削減などの経営努力も必須。同時に、国の教育投資を充実させることも重要だ。大学の自助努力と国の財政支援は車の両輪。努力を怠る大学は淘汰(とうた)されてしかるべきで、質の向上を重ねている大学に国の予算を大きく配分する仕組みも検討すべきだろう」

 ――福沢諭吉に顔が似てきたと言われませんか。

 「もしそうなら光栄ですが……。何か決断するとき『福沢諭吉ならどう考えるか』と考えることは多々ある。私だけでなく、慶応の大きな財産だろう」(葉山梢)

   ◇

 慶大卒。専門は認知科学。北大助教授、慶大理工学部長を経て01年、慶応義塾長に。日本私立大学連盟会長なども務める。情報学で紫綬褒章。61歳。

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