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初年次教育で、やる気

2008年6月3日

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写真学習技術の授業。田上准教授が学生たちと対話しながら進めた=兵庫県三木市の関西国際大、山本写す

◆「先進」関西国際大 中退減った

 大学の勉学は自発的にするもの。それなのに高校までの受け身体質を引きずったまま、立ちすくむ1年生が増えている。そんな中、米国発の「初年次教育」が日本でも広がり、「やる気学生」への改造作戦が進み始めた。この教育で知られる関西国際大(兵庫県三木市)で実践を見た。

 「今から3分あげます。ワークシートの文章をざっと読み、内容を頭に入れて」

 教育学部の田上由雄准教授が1年生の約30人に呼びかけた。学生の目の前にはB4判のシートが配られている。

 「何が書いてあった?」「そう、赤ちゃんの発声についてやね」「斜めに読めた? これを下読みと言います」

 田上さんは学生たちの間に分け入り、話しかけていく。

 「さあ次は分析読み。大事な所に線を引きながら読むよ」

◆文献の読み方も

 初年次教育のひとつ「学習技術」の授業。5月13日は「文献を読むための技術」がテーマだった。下読みと分析読みの「二度読み方式」が役立つことや、読み方のコツなどを、田上さんが最後に伝授した。

 「学習技術の中でノートの取り方を教えてもらい、助かった。高校までは黒板を丸写しにすればよかったので、大学で戸惑ったから」。2年生になった山田早穂(さほ)さんが言う。3年生になった平石直大(すなお)さんは「リポートの書き方を教わってよかった。苦手が得意に変わり、時間管理もうまくなりました」。

 ノートの取り方やリポート作成法。こうした技術はひと昔前の学生なら、先輩から聞くなどして自分なりに体得した。だが少子化に伴う「大学全入時代」は、入試が多様になっているため、学科試験を受けずに入る学生も多い。「学習目的なし、学習意欲なし、学習習慣なし、学力なし、といった人も交じってしまう。中退を防ぎ、一緒に引っ張っていくには、1年生のときの初年次教育でみずから学ぶ技術を教え、自信とやる気をかき立ててやる必要がある」と、浜名篤学長は言う。

 4年制の関西国際大は98年、短大を基盤にできた約1700人の小規模校。浜名さんが教授だった01年から試行錯誤で初年次教育を改善してきた。

 まず学生は、卒業までの到達目標として「学習ベンチマーク」を示される。情報収集力、意見交換力といった15の能力をつけるよう要求され、授業はいずれかの目標に沿うよう組み立てられている。

◆人生設計作りも

 初年次教育は「学習技術」のほかに、情報技術を教える「コンピューターリテラシー演習」、海外研修や社会貢献活動を含む「サービスラーニング」など。さらに「キャリアプランニング」は、いわば卒業後の人生設計。自己分析、職場見学、働く人々の話を聴く、などというように順々に体験する。「将来が見えれば、大学生活をどう過ごすかが決まるはず」と、学長補佐の岩井洋教授は言う。

 こうした学びと体験の証拠を残し、到達目標にどれだけ近づいたかを確認するのが「ポートフォリオ」と呼ぶファイル。各自が4年間で作り上げる。

 たとえば先に、学習技術の感想を聞かせてくれた山田さんと平石さん。ファイルに自己分析、授業やボランティア活動の記録、学生生活の写真などを整理し、1〜2年で電話帳のように膨らんだのを見て「達成感を味わった」と言う。07年秋からはインターネット上で整理し、担当教官のコメントももらうEポートフォリオへと移行中だ。

 さらに関西国際大には二重、三重の支援態勢がある。

 優秀な上級生が「メンター(助言者)」として1年生の力になる制度。教職員らが進学、留学、資格取得といったあらゆる相談にのる「学習支援センター」など。

 「進路再考・不適応を理由にした中退者は、10年前から大幅に減った。それに1年生で自学習慣を身につけた学生は一貫して成績がいい。初年次教育の効果は大きい」と、浜名学長は自信を深めている。(山本晴美)

     ◇

■初年次教育のひとつ「学習技術」に見る授業例

◇ノート・テイキング

◇リーディングの基本スキル

◇大学図書館における情報収集

◇インターネットによる情報収集

◇情報の整理

◇アカデミック・ライティングの基本スキル

◇パソコンによるライティング・スキル

◇わかりやすいプレゼンテーションのために

(注)関西国際大が開発したテキスト「知へのステップ」(くろしお出版)から抜粋

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