大同工業大で学生にデザインについて教える井藤隆志准教授(右)=名古屋市南区
神奈川工科大に今春つくられた物作り施設=厚木市

「物づくり」の分野に数多くの人材を輩出してきた私立の工業大学や工科大学が変身しつつある。大学名から「工業」を外したり、文系の学部を新設したり、さらにはキャンパスをオシャレにしたり。「工学離れ」と「単科大学離れ」の中で、学生確保に懸命な姿がうかがえる。(杉本潔)
◆イメチェンで学生確保
名古屋市南区にある大同工業大。来年度から大学名を大同大に改称する。
志願者数は減少が続いていたが、ここ3年は受験生の首都圏志向が強まってさらに減った。実質倍率は1・1〜1・2倍まで低下。澤岡昭学長は「このままでは定員が確保できず、経営が成り立たなくなりかねない。文系の受験生も入れるような分野にも展開することにした」と説明する。
今年度はプロダクトデザイン専攻を開設、来年度は香りや不動産マネジメントに関する専攻も新設する予定だ。さらなる決断が、「文系受験生は『工業』という看板では来ない」として大学名から外すことだった。将来はデザイン系学部を新設するなどして定員の3分の1程度は新分野で確保したいという。澤岡学長は「受験生は単科大学はダサいと思っている。総合大学に近づけることでイメージチェンジを図りたい」。
効果はどうか。
プロダクトデザイン専攻の新入生の約半分は文系出身。特に女子比率は2割で、大学全体の3%を大きく上回った。今夏のオープンキャンパスの参加者も女子が3割以上増加。同専攻1年の喜多川香里さんは「女子は大学名に『工業』が入っているだけで選択肢から外してしまうことがあるので、改称は効果が大きいと思う」と話す。
武蔵工業大(東京都世田谷区)も東横学園女子短期大と統合する来年度から大学名を東京都市大に改称。文系学部を新設して総合大学を目指す。
同大の中心である工学部の一般・AO入試の志願者数は00年度には1万4千人を超えたが、06年度は1万人を割った。このため、「経営安定のためには文系の学部も持った方がいい」(野澤和範・新学部開設準備室部長)と判断。統合を機に、人間科学部と都市生活学部という文系の2学部を新設する予定だ。
野澤部長は、工学部志望の受験生が総合大学の工学部に流れる傾向が年々強まっていると指摘。「工学系の単科大学は歴史があるところが多く、産業界での実績もあるのに、なかなかわかってもらえない」と残念がる。改称公表後の今夏のオープンキャンパスでは参加者が昨夏の1・26倍に増え、「人気回復につながれば」と期待する。
◆パウダールームを完備
キャンパスを再開発してオシャレな施設を次々と建設しているのが神奈川工科大(厚木市)だ。河野隆二理事は「今は見栄えする施設に反応する学生も多い」と言う。
学生会館の3階は女子専用フロアに。1人1個のロッカーやシャワールーム、パウダールームを完備し、卒業研究で遅くなった学生のために仮眠室も設けた。今春オープンした物作り施設はガラス張り。2千平方メートルのスペースに315本の柱があって、森の中にいるようだ。
このほか、06〜08年にかけて、情報学部棟、自動車工学棟、学生サービス棟などが次々と完成。来年、公園がオープンして施設の大半が一新される。
同大によると、ここ数年7〜8%ずつ減っていた志願者が今春3%増に転じた。さらに合格した学生にキャンパス案内を実施したところ、参加した約100人のほとんどが入学。河野理事は「再開発の効果はかなりあったのではないか」と話した。
情報学部4年の植村勇介さんは合格発表の翌日、情報学部棟ができることを知ったのが入学理由の一つだ。大学院工学研究科1年の長岡亜矢子さんは「学生会館に女子専用フロアがあることが入学の決め手になった」と話す。
一方、キャンパスの移転を人気上昇につなげたのが芝浦工業大(東京都江東区)だ。
06年4月に江東区豊洲に新キャンパスを開設したが、その後、同地区は再開発で全国的に注目される街に。それに合わせるかのように、ここ3年減少していた一般入試の志願者数は今春、過去最高の約2万4千人に達した。石井博文常務理事は「新しくきれいなキャンパスのイメージが浸透したのに加え、豊洲のイメージが急上昇したのも大きい」と説明している。
◆工学系の志願者激減
河合塾によると、07年度の全国の大学の工学系学部の志願者数は約32万6千人。少子化や「工学離れ」などで92年度の約66万7千人の半分以下に減り、理系の中でも減少ぶりが際だっている=グラフ。
07、08年度は若干持ち直したが、一部の総合大学が中心で、工学系の単科大学は厳しい状況にあるところが多い。谷口哲也・教育研究部統括チーフは「総合大学より知名度が低く、規模も小さいところが多いので、受験生や高校の先生の目にふれる機会が少ない。不利な面がある」と話している。
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