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「全入」迫り変わる意義 センター試験、今年で20回

2009年1月20日

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写真センター試験初日、最初の教科となる公民の試験を受ける受験生たち=17日午前9時20分、東京都文京区本郷7丁目の東大、樫山晃生撮影

 受験シーズンの始まりを告げる大学入試センター試験。17、18日に約54万人が志願した今年は、開始から20回、前身の共通1次試験から30年という節目の年だった。「大学の序列化を招いた」「学力低下の原因」などの批判もある一方、参加校数は年々増え、今回は過去最多の797校を数えた。すっかり定着した感があるセンター試験だが、その意義は変わりつつある。

■「負担軽く」大学も依存

 「教科書の範囲で、よく考えられた問題が出ている」

 全国高校進路指導協議会事務局長の千葉吉裕・東京都立晴海総合高校教諭は、センター試験の問題を評価する。

 初めてセンター試験が行われた90年、国公立大学のほか、参加した私立大学はわずか16校だったが、その後、参加校は右肩上がりだ。

 当初、慎重姿勢をとっていた早稲田大は99年に加わった。同大は「首都圏以外の学生も取ることができる」と、メリットを話す。駿台予備学校の田村明宏・広報課長は「早稲田などの有名校が次々に参入したインパクトは大きかった」と振り返る。今年の私立の利用校は、487校にのぼる。「センター試験は、一定の目的を果たしたと言えるのではないでしょうか」

 一方で、全く逆の評価も少なくない。

 大学側のセンター試験への依存も懸念されている。

 大学独自の2次試験がなく、センター試験の結果だけで合格できる大学は、年々増えてきた。「大学自身の作題能力が低下している」という批判もある。

 また、私大は今、18歳人口の減少で、学生集めに必死になっている。センター試験を1科目だけで受験することができる大学もある。大学の定員数が大学進学志願者を上回る「全入時代」が近づき、大学のハードルが下がる一方で、大学生の学力低下は度々指摘されている。

 最近では、ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英・京都産業大学教授が折に触れ、学生気質について、「エネルギーを感じない。大学の先生がマークシートなど採点の楽な問題ばかり作るからだ」などと批判している。

 最近の高校生はすぐに答えを知りたがるとの指摘がある。「検証『共通1次・センター試験』」の編著者の一人、中井仁・大阪府立茨木工科高校教諭は「手間ひまをかけて書くリポートの提出率は年々下がっている」と嘆く。正答にすばやく到達することを求めるセンター試験のマークシート方式の影響があるのではないかという。

■脱序列化目指し導入

 そもそもセンター試験の原型は、79年に始まった国公立大の「共通1次試験」にある。

 共通1次試験以前の大学入試は、各大学が問題を作り、合格者を選んでいた。しかし、上昇する進学率に大学の定員増加が追いつかず、受験競争が過熱。そして、高校レベルでは解けない難問・奇問が続出し、受験生をふるいにかけていた。こうした問題をなくし、高校の学習到達度を見るためにスタートしたのが、全国同一のテスト、共通1次試験だった。

 試験問題は、「高校の勉強がどれくらい身についているかを見る」ことを目的とし、学習指導要領に沿ったものとされた。1次試験の結果と、その後に行う各校独自の入試を合わせて合否を決めるという、2段階選抜となった。

 一方で、全国共通のテストは、大学を、一つの尺度で明確にランク付けできるという「副作用」を生んだ。また、2次試験で各大学が小論文や面接など、偏差値だけではない多様な入試を行うことがセットの改革だったが、大学側の動きは鈍かった。

 センター試験は、こうした「序列化」から脱することを目指して登場した。初回は90年1月。全国共通の形式は変わらないが、各大学がどの科目を、何科目選考に使うかを選べるアラカルト方式にすることで、一律に比べられないようにした。

■高大接続に新試験案も

 「第2のセンター試験」を模索する動きもあった。

 元文部官僚らでつくるNPO「教育制度研究フォーラム」は05年、「全国統一学力判定試験」と題し、全国一斉テストの実施を表明した。試験時期を、センター試験より早い10月に設定。推薦などで早期に学生を確保したい大学のニーズも当て込んでいた。

 当時、代表を務めていたのは文部省高等学校課長などを務めた中島章夫さん。テストの狙いを「センター試験は良問だが、各科目の細かい専門知識まで問うため、結果的に学生を偏差値で『選抜』することになる。選抜のための問題と、『社会で生きていくのに身につけてほしい力』を見るためのテストは内容が違う」と説明する。

 文部省の元教科調査官らが問題をつくり、06年に実施にこぎつけた。

 しかし、それが最初で最後となる。3万人と予想していた受験者数は4千人と伸びず、スポンサー企業から続けて資金提供を受けられなかった。問題自体の評判は悪くなかったが、知名度不足や、センター試験との違いがうまく認識されず、参加した大学、短大、専門学校は計35校しかなかった。中島さんは「ニーズはあったと思うが……」と悔しさをにじませる。

 「大学入試の戦後史」の著書がある、学習塾代表の中井浩一さんは、センター試験の問題点について、共通1次試験にさかのぼって分析する。高校での学習成績が大学の入試に反映されてないという「ずれ」は「高大接続」問題として、長年指摘されてきた。

 中井さんは「大学入試の予備校的立場から、高校教育が自立するのが共通テストの目的だったのに、センター試験に衣替えする時、学生をふるい落とす試験という論理は変わらなかった。入試で『選抜』の論理が続く限り、偏差値競争は変わらない」と話す。

 高大接続は今、推薦やAO入試で学力試験を経ずに入学する大学生の学力問題の対策としても議論されている。

 政府の教育再生懇談会は昨年、「高大接続テスト」を提言した。選抜の目的だけでなく、高校の学習内容を評価するのも狙いだ。

 中井さんは首をかしげる。「ではセンター試験の意味は、何なんでしょうか」

    ◇

【共通1次、センター試験をめぐる動き】

79年 共通1次試験が始まる。5教科7科目が課される

85年 臨時教育審議会が国立大の複数受験や、共通1次に代わる新テストの実施を提言

87年 国立大がA・Bグループに分かれて個別の2次試験を実施、複数受験が可能に。共通1次は5教科5科目に削減

90年 センター試験が始まる。5教科18科目から各大学や受験者が試験科目を選択できるように。私立大も16校が参加

97年 センター試験が6教科31科目から選択可能に

98年 センター試験で初めて得点調整を実施。日本史Bと世界史Bの得点を最高で7点引き上げ

99年 「分数ができない大学生」出版。大学生の学力低下が問題に

00年 国立大学協会が国立大志願者にはセンター試験で原則5教科7科目課すことを提言

06年 センター試験に英語のリスニング試験を導入、ICプレーヤーの不具合によるトラブル続出。6教科28科目から選択可能に

07年 大阪市などの私立高校が、センター試験だけで合否判定する私立大の入試を利用し合格実績を「上乗せ」していたことが発覚

08年 センター試験での過去問題の使用を10年度から認めると発表

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