【第10回】
A life free of setbacks.
※文中の英文をクリックすると、対訳をご覧いただけます。
Don’t hold back.このエッセイも今回で、10回目を迎える。よくここまでたどりついたなあ。
決して楽な道のりのではなかった。最優先しなければならない本業と、2冊目の本の原稿書きと校正、父親が代表をつとめるレジュメプロのサポート、そして、Asahi.com用に文章を定期的に書くというコミットメント(確約)。今年はゆっくりと花見をする時間もなかった。飲み会を断らざるを得ないときもあった。連休中もその大半を校正や原稿書きで費やした。But what I have learned and experienced is definitely much bigger than what I have sacrificed.
やりたいことを公言し、チャンスがあればチャレンジしてみる。By setting out to do something and seeing it through to the end, one can change oneself or the environment one is in.
そのことを実感し続けた半年だった。出版した本に目をとめ、反応してくれたのが、Asahi.comオフタイムの編集者。エッセイなど書いた経験のなかった私に原稿執筆を依頼するのは不安だっただろう。編集者の立場からすれば、リスクでもあったはず。でも、私の熱意に彼はかけてくれた。
イギリス風パブで生ビールを飲みながらの初回打ち合わせが行われたのは昨年11月。社会人になってからのことをいろいろ話した。挫折を感じていた時代と、ようやく自信が持てるようになった現在。彼は言った。“I had thought that you had led a life free of setbacks. I am sure there are people who will empathize with you if you write about your feelings honestly.”
手探りでDon’t hold back を作り上げる共同作業がはじまった。練りにねった私の自信作の原稿を見てもらう。「とても論理的なしっかりした文章ですね」。ふむふむ。そうでしょう。「ところで、お願いです。井上さんの主義主張ではなく、想いを書いてください」
What? Do you mean to say that it has been rejected?
心情を文章で吐露することは、飲みながら話すのとはわけが違う。論理的な無駄の無い文章を会社で日々書こうと努力している私が書いた文章では、編集部が求めていた「揺れる気持ち」はすっかり包み隠され、片鱗すら見えなかったらしい。一般人の私が主義主張をいきなり唱えても、誰も聞いてくれないのは当然といえば当然。
「想いを伝える文章なんて書けっこない!」。でも、コミットをしてしまっている。「私には無理ですね。じゃあ、バイバイ」というわけにもいかない。続けて書いた「フランスでのアピール力習得の実態」を伝えるのに最適だと思ったエピソードはクリスマスがらみの話だったのだが、季節はずれとの理由によりあっさり却下された。「今」を伝えるメディアだから季節感は大事。Something so obvious had completely slipped my mind. 書き直す日々。ボツになった原稿の数々。
内容だけでなく、文章の書き方自体にも、編集部と私の間でずれがあった。「OLが書く文章はこんなイメージ」という固定観念にも似たようなのが、編集部にはあったのだと思う。でも、そんな文章を私は書くことができなかった。夜中に電話で1時間半近くお互いの考えをぶつけあったこともある。Asahi.com編集者としての彼の立場と執筆者としての私の考え。「これじゃ5回目で打ち切りですね」。そんな最後通告のような会話すらあった。でも最終的には、「打ち切り」ではなく、「継続」に向けて前に進むことができた。It was because we were able to understand each other’s thoughts and position by speaking frankly to each other.
Don’t hold back.このフレーズを、自省の意味をこめて、二人の間で使っている。編集者の気分は損ねたくない。しかし、言いたいことがあったら、対立覚悟でプロ意識をもって言う。全ては、納得がいくものをつくりあげるため。目指すところをお互いわかっていれば、多少の荒波も越えていけるはず。会社でも基本は同じ。妥協すれば、仲良く職場の皆と仕事ができるのかもしれない。There are times when I must speak out if I want to do a good job, even if it means facing an uncomfortable situation even momentarily.上司として、同僚として、そして部下として。
家族や親戚や知り合いは、連載を好意的に受け止めてくれた。「面白いね。これからも読むね」「他の人にも紹介するよ」。そんな声をたくさんもらった。しかし、不安は残る。私のことを全く知らない人も、読んでくれるのだろうか? 1回目のエッセイに対する反応は上々だった。でも、2回目以降もコンスタントに数がいってはじめて、「読者の方々に受けいれられている」そう言うことができる。そして、真価が問われる2回目。「しっかり読まれてますよ」と編集部。良かった!期待に応えることができた――I felt a great weight had been lifted.
感想文を募集した時もドキドキもの。「読まれている=内容に満足している」わけではない。もちろん、プレゼントへの応募だから批判的に書く人はいないとは思っていたけれど、感想文の内容は、私の想像をはるかに越える嬉しいものだった。ちゃんと読んでくれている人達がいるんだ。
感想文の内容を見て、編集部も私が書く文章を全面的に支持してくれるようになった。If I want to persuade someone, it doesn’t help to just talk about it. やはり、実績にまさるものはない。
次回は、感想文を読んで私自身が皆さんから元気をもらったことも含め、エッセイを書くという行為を通じて広がった世界について書いてみたい。
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