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【英語を旅する】
現代の英語(3)寺澤 盾 東京大学大学院助教授 20世紀は、科学技術が飛躍的に進歩した時代であるが、その一方で、そうした技術が発達する以前では考えられなかった様々な由々しき事態も生じている。例えば、コンピューター技術の進歩により、コンピューターを使った様々な犯罪、すなわちcomputer crimeが近年増加しているが、そうした犯罪を犯す人を英語では、computer criminal, cracker, hackerという。コンピューター犯罪者の中には、コンピューターのシステム・情報を破壊するようなプログラム、つまりcomputer virus(コンピューター・ウィルス)を作り出す者もいる。 有害なプログラムは、worm(ワーム)とも呼ばれるが、その対策として、virus checkerやantivirus programなど、コンピューター・ウィルスを検出・除去する様々なプログラムが開発されている。こうしたプログラムはウィルスからコンピューターを守ることからvaccine(ワクチン)とも言われる。なお、vaccineという語は、18世紀末に「牛の」を意味するラテン語形容詞から借用され、エドワード・ジェンナーの発明した「(天然痘予防のための)牛痘種痘、種痘に用いるワクチン」を意味したが、コンピューター用語としての初例は、1986年である。 生命科学の分野では、いわゆるクローン技術(cloning)の進歩により、植物だけでなく動物についても、無性生殖により遺伝的に同一の個体を作り出すことが可能となった。例えば、1996年スコットランドにおいて世界初の哺乳類のクローンである雌羊が誕生し、ドリー(Dolly)と名付けられた(写真参照)。(cloneは、「小枝、挿し木」を意味するギリシア語に由来する。)しかし、この技術を人間に対して応用することに対しては、多くの技術的な問題のみならず、倫理上の問題があり、世界各国ではヒトクローンを規制・禁止する法整備が行われている。 20世紀は、また、過剰な生産・消費、乱脈な開発により未曾有の環境破壊(environmental disruption)が進んだ時代でもある。石油・石炭などの化石燃料の燃焼などにより、世界各地でacid rain(酸性雨)による森林の立ち枯れが報告されている。また、自動車などの排気ガスに含まれる二酸化炭素が地球を覆い、外に太陽の熱を逃がさないため、地球が温室のようになり温暖化する現象も生じた。こうした現象は、greenhouse effect(温室効果)やglobal warming(地球温暖化)と呼ばれる。冷蔵庫などの冷媒やスプレー缶などに含まれるフロンによって、成層圏のオゾン層にozone hole(オゾンホール)があき、人体などに有害な紫外線が地上に届くといった深刻な問題も生じている。そのため、フロンを使わない冷媒やスプレーなど、ozone-friendly(オゾン層に優しい)商品が開発されている。 こうした状況の中、20世紀の後半以降、環境保護(environmentalism)を訴える動きが強まり、環境に対する意識、つまりeco-awarenessも高まっている。eco- はこうした時流を反映して、ecology(生態学、環境保護)を始め、ecoactivist(環境保護運動家)、ecocatastrophe(大規模な環境破壊)、eco-friendly(環境に優しい)、eco-labeling(エコ表示、環境に優しい商品であることを表示すること)、ecopolitics(環境政治学)、ecostore(環境に優しい商品のみを売る店)、Ecotopia(環境面での理想郷)、ecotourism(環境保護志向の観光)など新語を次々に生み出している。 政治面でも、1971年に国際的な環境保護団体のGreenpeace(本部アムステルダム)が設立され、またヨーロッパでは地球環境保護を掲げる政党Green Party(緑の党)が躍進し、ドイツでは1998年から2005年まで社会民主党と連立政権を組むまでに勢力を拡大した。 そして、eco- とともにgreenという語は、環境保護運動のキーワードとなり、greenie / greenster(環境保護運動家)、greenism(環境保護主義)、green labeling (= eco-labeling)、greenwash(企業が環境保護に積極的であることを示すために行なう寄付・広報活動)およびdark green(急進的環境保護運動家)、deep green(= dark green)、ungreen(環境問題に無関心な、環境に害のある)などの新語を造り出している。 (毎月第2週・第4週に掲載します) Asahi Weekly, January 14, 2006より
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