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【語源で探る英単語】
【mill】宮前 一廣 トフルゼミナール講師 「奥歯」の正式名称は、molar (大臼歯<きゅうし>)と言います。犬歯と異なり、平たい歯冠にみぞがあるのが特徴です。先がとがっていないのは、上と下の molars で食べたものをしっかり噛(か)み砕いて胃の消化作用を手助けする歯だからです。molarsの語源をさかのぼるとmill(製粉所)に行き当たります。「製粉所」といっても今ではほとんど見られなくなってしまいましたが、昔はどこの村にもあった普通の風景で、水力や風力で穀類を「製粉して」小麦粉などにする場所です。 英米人の一般的な名前にMiller(ミラー)さんというのがありますが、先祖は恐らく「製粉」を行っていたのでしょう。mill自体は姿を消しつつありますが、皆さんもよくご存知なのがcoffee mill(コーヒー豆挽<ひ>き器)でcoffee(コーヒー豆)をmill(製粉する)道具です。 mill(製粉所)の中にあるmillstones(臼<うす>)は巨大な石です。挽 (ひ) いた経験のある人ならわかると思いますがmillstonesを人力で回すのは大変な労働です。あまりにも大変なので水力や風力を使って機械仕掛けでmill(製粉)をしていました。miller(製粉業者)は特別な装置を扱うことのできる専門職だったのです。 貨幣経済がそれほど発達していなかった時代にはmillerへの報酬は製粉を依頼した人の小麦粉などの一部を手数料として受け取っていたのでしょう。ここからemolument(<職務から得る>報酬)という単語が生まれました。つまり、emolumentとは働いた結果獲得するものという意味で、フランス語を経由して英語に入りました。 mill(製粉所)で「製粉した」あとにすぐに小麦ができるのではなく、まずはmeal(あらびき粉)になります。このmealの状態が最近日本人の朝食メニューでも知られるようになったoatmeal(オートミール)です。oatmealとはoat(カラスムギ)をmill(製粉して)meal状にしたものです。まだ挽いただけの状態ですからごつごつしています。小麦のmealをふるいにかけて均一の細かい粉にしたものがflour(小麦粉)です。 一般に小麦や豆をmealにする場合は大きなmillstones(臼)を使いますが、棒などでたたいても製粉することができます。この道具がmillと同じ語根を持つ。mallet (木づち)です。また、malletよりも大型のものをmaul(大木づち)といいます。 このような道具でたたいてから、殻をとってできたものがアワやヒエなどのmillet(雑穀)です。mealは人間用ですが、milletは家畜のエサになります。さらに、いけにえの動物の頭にかけた塩で清められたmealから「いけにえに捧げる」という意味を持つようになったのがimmolate(犠牲にする)です。mill(製粉所)からは想像できないくらい姿を変えてしまっています。 (毎月第2週・第4週に掲載します) Asahi Weekly, February 11, 2007より
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