現在位置:asahi.com>ENGLISH>Asahi Weekly

【DICTIONARY】辞書GAKU事始め

センター試験で単語力を増強

磐崎弘貞 筑波大学准教授

 大学入試センター試験が先月中旬に行われました。今回はこのセンター試験の英語問題を分析しながら、辞書学の観点から一般の人にも役立つ語彙 (ごい) 学習の方法を探ります。

 大学入試センター試験の問題は、新聞にも掲載されるので受験生でなくてもご覧になった方も多いでしょう。

 いろいろと批判される大学入試問題ですが、センター試験の英語に限っては、語彙、文法、そして設問の方法にいたるまで、周到に検討されています。つまり、一般的な高校英語のカリキュラムから見て、過度に難しい単語や構文が使われていないか、受験生にとってなじみのない問題形式になっていないかといった点が質的・数量的によく吟味されています。

 出題される問題からは、単なる試験という枠を超えて、日本の英語指導者が学習者にどんなスキルを身につけてほしいのかというビジョンを概観することができます。リスニング試験の導入なども、その現れの一つです。

発音を辞書で確認するには

 リスニング試験が導入された現在、主として筆記試験での発音問題は学習者が適切に単語を発音できるかどうかを間接的に見るための手段となっています。たとえば、「breath / cease / leaf / reason」の中で、“ea” の部分の発音が異なるものを選ぶ問いがありました。正解は breathで、これだけ「エ」と発音するのに対し、他は全て「イー」と発音します。英語のつづりと発音が1対1に対応していないためにこうした点が問われるわけですが、アクセントと共に正確な発音を日ごろから確認しておくことが大切です。

 その方法の1つが、辞書で発音記号を確認することです。発音記号が苦手な人は、発音がカナ表記になっているものを使用すればいいでしょう。『アルファフェイバリット英和辞典』(東京書籍)や『ベーシックジーニアス英和辞典』(大修館書店)といった初・中級辞書には、発音記号とカナ表記が並記されているものが多くあります。backgammon ならば/バクギャモン/(ベーシックジーニアス)といった具合で発音が確認できます。

 特に誤りやすい単語については、「発音注意」といった表示をつけ、その単語の発音に注意を向けてくれる辞書もあります。たとえば、mania を見ると、『ウィズダム英和辞典』や『ジーニアス英和辞典』では発音注意の警告があります。日本人の多くが「マニア」と読んでしまうのに対し、本当の発音は「メイニァ」だからです(ただし、両辞書ともカナ発音表記はありません)。ついでに言うと、『ウィズダム英和辞典』(三省堂) には、この単語の意味についても注意ラベル(「!」)があり、「日本語のマニアは maniac に相当」と教えてくれます。

 正確な発音を確認する二つ目の方法は、読み上げ機能付き電子辞書を使うことです。カシオやセイコーインスツル社から発売されている英語に特化した最近の携帯電子辞書では、ネイティブスピーカーの発音でほとんどの単語を読み上げてくれます。また、パソコンにインストールするCD-ROM辞書も、『ロングマン現代英英辞典』(桐原書店)や『ジーニアス英和辞典』をはじめ、多くのものに音声データが含まれ、見出し語を読んでくれます。引くたびに自動的に読み上げる設定にできる場合もあるので確認してみて下さい。

穴埋め問題はコロケーションが基本

 適切な単語や表現をカッコに入れる穴埋め問題のほとんどは、コロケーションを問うものです。コロケーションとは、相性のいい語と語の慣用的なつながりのことで、通常意味的なつながりを意味しますが、文法的なつながり(動詞型・名詞型・形容詞型など)に使うこともあります。

 たとえば、「多くの観客」という場合、audience (単数扱いが原則) に付ける修飾語は「a large / a lot of / many / much」のどれか、という問題がありました。この場合、もし audience が可算名詞だと知っていれば、much は不可、さらに、可算名詞に a lot of やmany がつくならaudiences と複数形でないといけないのでこれも不可です。結果として、a large audience が残ることになります。

 実際、学習辞典を見ると、「多数の聴衆」という場合、a large audience (全体をひとかたまりの観衆と見なした場合)やlarge audiences (観衆を複数の人と見なした場合) は可だが、many audiences が不可であるという記述があります(文法的には OK だが、慣用的にこう表現しないということ)。

 また、文法知識以外にも、下記のように慣用的なコロケーションを知っていないと正解できない問題もあります。

 I am not prepared to (catch / deal / put / take) the risk of losing all my money.

 to 不定詞の部分は「全財産を失うリスクを負う」ということですが、take the risk of (doing) のコロケーションを知らないと、正解の take には到達できないでしょう。risk のような抽象語に関しては、こうしたコロケーションを駆使できることが特に重要です。

 従って、新語を覚えようとする際も、その「単語と訳語」だけで満足してはいけません。新語が名詞なら、どういう動詞・形容詞・前置詞と結びつくのか、動詞ならば、どういう名詞・副詞・前置詞と結びつくかを必ず辞書で確認することです。単語帳を作るならば、こうしたコロケーションこそ記しておくことを習慣づけて下さい。

 tax が「税金」の意味だと分かっただけでは不十分なのです。まずは、tax が文章中でどんな単語と一緒に使われていたのかに注目し、その上で、辞書を引いて基本的なコロケーション、たとえば「消費税」(consumption tax)、「増税する/減税する」(increase/ reduce taxes)といった表現を確認しておきましょう。あるいは、「(価格は)消費税込み」ならば Tax included、あるいは The price includes the consumption tax. などのように、include とのコロケーションに習熟することです。

 実はこの include の例は今回のセンター試験に出た問題でした。しかし、『ジーニアス』をはじめとする主要英和には、「税込み」の意味で include を使ったコロケーションが載っていません。これはコーパスを見ても頻出する表現なので、ぜひ収録を希望したいところです。

読解問題を効率よく解くには

 読解においてもコロケーションはその中枢を成します。つまり、一つの単語の意味だけに焦点を当てるのではなく、長い語の連鎖であるコロケーションを単位として情報処理することで、読解を効率的に行うことができます。

 今回のセンター試験では、最初の1文がA role model is an ideal person whom we admire. で始まる読解問題がありました。これは role model の定義になっていて、「模範となる人」ということです(辞書にも収録)。その後も、A is born into B. (AがBの家庭に生まれる)、destroy the rainforest (熱帯雨林を破壊する)、receive a degree (学位を受ける)、a fluent speaker (流ちょうな話し手)、provide medical care to A (Aに治療を施す) といったコロケーションが頻出していました。

 読解問題を解くカギは、これらをかたまりとして認識でき、効率的に処理できるかにあります。

 受験とは無縁の社会人の方であっても、センター試験に出題されるような問題を解くことで、英語の語彙力増進のヒントを得ることができます。力だめしの意味も込めて、一度トライしてみるといいでしょう。

Asahi Weekly, Februay 17, 2008より

このページのトップに戻る