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【英語を旅する】

現代の英語(6)

寺澤 盾 東京大学大学院助教授

 1960年代から、米国では、黒人に対して白人と同等の法律的な地位を与えることを目指した公民権運動と連動して、女性に対する様々な差別をなくし、男女平等の社会を志向する女性解放運動(Women's Liberation Movement)も高まりを見せた。フェミニズム(feminism)とも呼ばれるこうした動きの中では、社会・政治制度における男女の格差を是正するだけでなく、言葉における性差別も問題視された。以下では、フェミニストたちの批判の的となった英語表現について紹介し、なぜそれが差別的なのか、また、それに代わる表現としてどのようなものが提案されてきたかを見ていこう。

 まず、フェミニストたちの批判の矛先が向けられたのは、chairman(議長)などの -manを含む複合語である。manは、「人、人間」という意味で用いられるが、「男」という意味もある。そのため、chairmanという語を用いると、常に「男性」のイメージを喚起し、「議長」という職務に女性が就くことを阻害する可能性があるとフェミニストは主張する。そこで、性別に関して中立な(gender-neutral)表現として、chairperson, chair, chaironeなどが提案された。chairmanを「男性議長」に限定し、「女性議長」に対してはchairwomanを用いるという方法も考案されている。

 -personは、その後、statesperson(政治家、statesmanの代替表現)、salesperson(販売員、salesmanの代替表現)、spokesperson(スポークスマン、spokesmanの代替表現)などさまざまな新語を生み出している。しかし、chairpersonは、主に「女性の議長」を指す場合に使われ、必ずしも性別に中立な語としては機能していないという指摘もある。

 また、woman(元来のwife-man[女性の人]のつづまった形)やwomenについても、-man, -menが含まれていることから、「男」から解放されたwomonやその複数形womyn, wimminが一部フェミニストから提案された。

 The New York Timesのコラムニストで、2度にわたりピューリツァー賞を受賞したラッセル・ベーカー(Russell Wayne Baker 1925-)は、'Nopersonclature' と題するコラムの中で、語中にman, menを含むnomenclature(学術用語), manners, mantle, amenの代替表現として、それぞれnopersonclature, personners, persontle, apersonを造語しているが、これは勿論一連の -person表現を揶揄 (やゆ)したジョークである。nomenclature, manners, mantle, amenに見られるman-, -menは、「人、男」を意味するman, menとは語源的に全く関係がない。

 単独のmanの場合も、「人、人間」という意味では、その使用は避けられる傾向にある。旧約聖書の「創世記」の中でも、もっとも有名な節である「神は御自分にかたどって人を創造された」(1章27節、新共同訳)は、かつてはSo God created man in his own image. となっていたが、最近の英訳聖書では、So God created humankind in his image. やGod created human beings in his own image.などと書き改められている。

 manとは逆に、女性を連想させる -essなどの接尾辞の使用も、特に女性であることを明示する必要のない場合、最近では回避される傾向にある。旅客機の女性客室乗務員のことを以前は、stewardess といったが、現在は男女を区別しないflight attendant, cabin attendant(客室乗務員)が普及している。また、housewife(主婦)という表現も、家(house)に妻(wife)を結びつけ、女性の社会進出を阻害しかねないということで、性別を連想させないhomemakerという表現が米国などで用いられることがある。

 女性に対する敬称にも、フェミニズムの影響は及んでいる。かつては、男性には未婚・既婚に関わらずMr.(イギリス英語ではピリオドを付けないMrが好まれる)、女性に対しては未婚の場合Miss、既婚の場合はMrs.(イギリス英語Mrs)が用いられていた。しかし、女性だけに未婚・既婚の区別をする必然性はないということから、女性への敬称として、婚姻状態によって使い分けの必要のないMs(.)が導入された。

 この新たな敬称は、1949年初出であるが、その後急速に広がり、1973年には国連でも公式に採用された。また、現在では、世界中の入国審査用の書式にも、Msが記載されている。ただし、Miss, Mrs. も併記されている場合が多いので、女性は自分が好む敬称を選択できる。

(毎月第2週・第4週に掲載します)


Asahi Weekly, February 25, 2007より

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