現在位置:asahi.com>ENGLISH>Asahi Weekly 【Corpus Study】コーパスで学ぶ本物の英語使いにくい副詞 famously滝沢直宏 名古屋大学大学院教授 今回は、「読めば分かるが自分ではなかなか使えない」語の例として、famously という副詞を取り上げます。 famous は「有名な」を意味する基本的な形容詞です。a famous musician にせよ、This country is famous for its beautiful mountains. にせよ、難しいところはありません。しかし、それに -ly が付き副詞になると、適切に使うのはたちどころに難しくなります。実際、famous は中学生の頃から知っているし、きちんと使えるが、famously は初めて見た、あるいは自分では使えないという人は結構います。また適切に訳すことも難しいと思います。 一例を挙げると、Franklin Roosevelt famously remarked, "The only thing we have to fear is fear itself." のような文があります。famously が無ければ平易で、「フランクリン・ルーズベルトは『恐れなくてはならない唯一のものは、恐れ自身である』と述べた」となります。 では famously をどのように訳に反映させたらいいのでしょうか。quiet が「静かな」で、quietly が「静かに」であるのと平行的に考えると、famously=「有名に」となりそうです。しかし、これをそのままあてはめ、「ルーズベルトは…と有名に述べた」としたのでは、いかにも翻訳調で意味も分かりにくくなります。むしろ「よく知られている通り、ルーズベルトは、…と述べた」とするのが適切です。 ここで famously の特異な点が見えてきます。「有名に」という単純な日本語をあてはめるだけではうまくいかず、文全体にかけて「よく知られていることだが、〜だ」のようにするなどの工夫が必要というわけです。この「ずれ」が「読めば分かるが、使えない」難しさの原因です。この副詞を使わずに同じことを表そうとすると、As is well / widely known, ... のようになります。この内容が副詞一語で表現できるのですから、便利な語と言えます。 では、コーパス(電子化された言語資料)をコンピューターで処理して、この語の周辺にどのような語が現れるかを見てみましょう。すると、famously の右隣には、said, remarked, claimed のように「発言」に関わる動詞の過去形が現れやすいことが分かります。上で見た例もそれにあたります。また、As Mark Twain famously said, ...のように as 節内で使われる例も多く見られます。「マーク・トウェインの有名な言葉の通り、…」のように訳すことが可能です。 コーパスで調べると、famously の後には、形容詞も現れやすいことが分かります。例えば、the famously difficult relationship between Tokyo and Pyongyang は、famously がなければ「日本政府と北朝鮮政府(日朝間)の難しい関係」ということですが、famously によって、関係の難しさが広く知られていることが表現されています。「難しいことで有名な日朝関係」という意味になります。 今回は、famous の副詞形である famously を例にして、平易な形容詞でも副詞形にすると、途端に「自分ではなかなか使えない」表現になり得ることを見ました。
Asahi Weekly, April 27, 2008より
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