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【Live! In the Classroom】

創作劇で伸ばす英語力と思いやり

山下 努 朝日ウイークリー

 子供たちが創作劇を英語で演じて、英語力や情操力をつけ、チームワークを学ぶ英語劇場が東京都江戸川区にある。英語芸術学校「MARBLES」の創始者の小口真澄さんは、全国で出前教室を実践し、その輪を広げている。楽しく英語を学べる全人格的な児童英語教育法としても注目されているようだ。

 「こら! 渋谷になっちゃうよ」と小口真澄(こぐち・ますみ)先生は、小学1年の英語役者に喝を入れる。パルコ劇場などの舞台芸術を誇る渋谷という意味ではない。演じるには姿勢や態度、メリハリが重要で、渋谷などで路上に座ってたむろする一部の若者のようにダラリとするのはよくないという、いつもの警告の言葉だ。ところが、「シブヤ」以外の日本語は70分の練習中、ほとんど出てこない。指示の多くはわかってもわからなくても英語だ。あとは先生の目やしぐさ、口調などで判断して子供たちが演じ続ける。セリフが出てこないときなど、アイコンタクトやお互いの思いやりが重要だ。

 取材に訪れた日は、「三匹のこぶた」を小学校3年生を中心に10人余りが練習していた。

 Once upon a time, there were three little pigs,
 Three little pigs,
 Once upon a time, there were three little pigs,
 One day ...
 Mama: It's time to build your own house.
 Pigs: All right, mama.
 We are going to build our own house.
 Own house.
 We are going to build our own house.
 Nice and cozy, our own house.

 子供たちが元気にセリフを発し、練習場を駆け回る。先生に合わせて大きなアクション。ちょっとオーバーに見えるしぐさと表情もかわいい。手と足、全身を使って、音楽に合わせて劇が進む。天井のスポットライトがついたり、消えたり。主役が1人でセリフを言う山場もある。立派な俳優ぶりが伝わってくる。

あっという間に覚えてしまう

 驚くことに、この劇の練習は今回が5回目。しかも、子供たちには台本を渡さないので、2、3回の練習の中で覚えてしまったのだ。週1回の授業で年間何本かの演劇を覚え、いいものを12月の発表会で演じる。平日は小学生と幼稚園児のクラスが毎日ある。絵本をベースに先生らが独自に新しい台本に発展させた創作劇を演じることも多い。

 劇作りは、子供と一緒に行い、2日間の創作と上演の模様を収めた『ごっこ遊びから始める「英語DEドラマ」赤ずきん』などのDVDシリーズがある。実際に出向いて指導をするために、小口先生が全国の出前に応じている。小学校ばかりか、協調性を教えるために企業研修に呼ばれることもある。英語版の『ももたろう』は男子児童にも人気で、戦い系のゲームを好きな子なら英語の演劇にも入り込める余地があるようだ。「劇は、セリフをコツコツ覚えなければならない」という先入観の打破も必要らしい。

 指導暦25年の小口先生は、「役割を決めて自然に子供たちが物語の中に入ることで、演じた英語が自分の言葉となって後々まで残ります。セリフは覚えさせるものではなく、自分が表現したくなる気持ちを大切にする。だから夢中になれるんです」と語り、演劇と英語好きの父母の心をとらえ、横浜から通っている生徒もいる。

教える人材も多士済々

 小口先生は、サンフランシスコ州立大学などで子供に教える演劇を学び、海外で舞台に立った。2002年に「マーブルズ」を開いた。AWの昨年4月2日号で、中村雅俊、別所哲也ら名優を輩出した学生英語劇団「モデルプロダクション」(MP)を紹介したが、小口さんもMPの演出を担当し、そこで演劇を教えた学生俳優が、Marblesのスタッフになった。

 小口さん自身も小学校5年のときに担任の先生から「英語劇クラブでもつくったらどう?」と言われ、有頂天で台本をつくり、友達を募って上演したら拍手喝采(かっさい)だった、という幼いころの成功体験がベースだ。「演劇で子供たちに感動体験をさせたい」という気持ちが、自分たちを突き動かしているという。だから、練習後は、生徒一人ひとりを思い切り抱きしめて帰すことを毎日実践している。

 練習では、英語がまず子供の耳と動きから入り、主体的に表現できるのが特徴。だけど、チームワークがないと完結しない。最後にみんなで喜べるよう、自然に相互の思いやりがつくらしい。Marblesにはビー玉という意味もあり、子供たちの持つそれぞれの色、個性が練習を通じて1つに集まって美しさをつくるといったイメージを込めているという。

 父母から「集中力、表現力、思いやりが身についた」と感謝されるのがうれしいというが、自分の子供の演技だけに目がいってしまい「親の成長も必要」と思うこともあるという。親がいると甘えが出るので、練習は親には見せない。

 Marblesのスタッフは全員女性。演劇と英語が好きな子持ちの女性が中心だ。銀行や証券会社、外資系企業で海外業務などの第一線で働いてきた人が目立つ。30代の田代澄子さんは、1988年に日本銀行に入り、10年ほど国際局で外国為替などの仕事をした経験がある。米国で出産し、帰国後児童英語の指導者の資格を取った。田代さんは「子供によい英語を学ばせようと考えて探した結果、Marblesを見つけ、子供を通わせ、自分も感動したので仕事にできました。娘は負けず嫌いなのか、寝る前にCDの教材を熱心に聞いており、親のほうがびっくりしています」と話している。

Asahi Weekly, August 5, 2007より

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