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【SPECIAL】アイルランド特集

アイルランドの楽しみ方教えます!

 元々、イギリス文学が専門だという法政大学文学部教授の結城英雄さんが、アイルランドを最初に訪れたきっかけは、アイルランドの作家、ジェームズ・ジョイスの研究を始めたことだった。20年以上前のことだ。

 「ジョイスを始めると生半可ではできない。相当アイルランドのことを知らないと。通り名とかね。そうこうしているうちに面白くなった」と結城さん。それから何度もアイルランドを訪れ、5年前にも1年間、滞在していたという。今回が2度目の長期滞在になる。

 今の時代は、世界が近くなり「外国文学」という意識はあまりない。だからこそ、学生たちにも体感することを勧めているという。

 「ギネスビールを飲んだり、音楽を聞いたり。アイルランドは蕨(わらび)がたくさんとれるんですよ。そういうことを体で覚えていかないと」。

 自らは、歩いて植物の名前を覚えたり、買い物に行って見つけた知らない魚を食べてみたりと積極的にアイルランドの生活を体験している。最近では、アイルランドのレバーは、日本のように豚ではなく、羊であることを発見したそうだ。

 作品を読んだ時に、そこにあるのは、土地や歴史、地方性のようなもの。文学の普遍性を語る前に作品を読みこなす必要があるというのが結城さんの考えだ。

 「そのためには、どんな小さなことでも解決しなければならない」。そういって、結城さんは、アイルランドの詩人、ウイリアム・バトラー・イエーツのひとつの詩を例にあげた。アイルランド北西部のギル湖に浮かぶ『イニスフリーの小島』(The Lake Isle of Innisfree)という詩だ。There midnight's all a glimmer, and noon a purple glow. And evening full of the Linnet's wings.(一部抜粋)

 「湖水の水が紫色だって、パープルという言葉を使っている。なぜ、パープルなのかと、やっぱり調べたくなるじゃないですか」。

 結城さんによると、ヒースが映し出された、しゃくなげが映し出されたなど、諸説あるらしいが、その答えは明快だ。

 「行ってみると、紫なんです。光線と水の微妙な感じで紫になる」。体感することで、よりいっそう、その詩の世界を理解することができるのだ。

 アイルランドでは、ダブリンが一番好きだという結城さん。西部では、コネマラ、リング・オブ・ケリーなどが魅力的だという。

 「カーブを切るたびに新しい光景が見えてくる。絶対に止まって写真を撮りたくなるぐらい」とのこと。滞在中、車であちこちを旅し、すでにアイルランドは湾岸沿いを1周したそうだ。

 訪ねて来た知人をゴールウエイ南部のクールパークに連れて行った時の一言。「ここでは小説は書けないわね。詩は書けるけど」。あまりにも幻想的だからというのがその理由だそうだが、アイルランドに偉大な詩人が多いのもうなずける。

 文学作品を体感する…。これも素敵なアイルランドの楽しみ方だ。(中村紀子)

Asahi Weekly, September 30, 2007より

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