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【コーパスで学ぶ本物の英語】

制限付きの最上級

名古屋大学大学院教授 滝沢直宏

 本連載の第12回目で、possibleという形容詞はwayやexceptionという名詞と仲良しであることに触れました。今回は、"possible way" がどのように使われるのかから始めます。

 まずコーパスで "possible way" を検索してみましょう。すると、その前には最上級形が現れやすいという傾向が歴然と見えてきます。例えば、"the best possible way" のようなパターンです。直訳では「最良の可能な方法」ですが、少し砕いて「可能な範囲の中で最良の方法」あるいは「できる限りでの最良の方法」とするのが良いと思います。逆に言うと「実行可能でより良い方法はない」ということですから、最上級の意味が「強調」されることになります。possibleによって表現されているのは、「実行不可能な方法まで含めればもっと良い方法があるかもしれないが、可能な範囲ではこれが最良」という気持ちです。その意味でpossibleは「最上級の範囲を限定」しているとも言えます。

 もちろん、最上級形はbestである必要はなく、他の形容詞の最上級形でも構いません。例えば、"the simplest possible way" であれば「可能な範囲で最も簡単な方法」ということですし、"the clearest possible way" であれば「可能な範囲で最もはっきりした方法」という意味になります。ここでの共起傾向は、特定の語とpossible wayとの共起傾向ではなく、「最上級形」という語のタイプとの共起傾向です。語のレベルよりも抽象化されたレベルでの共起傾向ですが、こうした共起傾向について注意を払うことも重要です。

 では、次にコーパスを使って「the+最上級形容詞+形容詞」(the best possible型) で検索してみましょう。この検索をすれば、possible (way)と同じように最上級形容詞と仲良しの形容詞が見付かるはずです。結果として検索された形容詞は、singleとavailableの2つです。singleであれば「単独のものの中で最も〜な」という意味になり、availableであれば「手に入るものの中で最も〜な」という意味になります。例えば、the worst single accident「単独の事故としては最悪のもの」、the cheapest available seats「空いている席の中では最も安い席」のように使われます。

 動詞の現在分詞や過去分詞の中にもこれらの形容詞と同様の働きをするものがありますから、それも検索対象にしてみます。「the+最上級形容詞+現在分詞 / 過去分詞」という検索です。この検索では実は、"the best looking man" のように最上級の範囲を限定しているのではない語も見付かりますが、最上級の範囲を限定する語に限って取り上げると、surviving, remainingといった現在分詞、そしてknown, recorded, discoveredといった過去分詞が見付かります。

 surviveは「生き残る」、remainは「残存する」ということですから、これらの動詞の現在分詞形が最上級形と一緒に使われると、「生き残っている中で / 現在まで残っている中で最も〜な○○」のような意味を表すことになります。過去分詞の場合は、「これまで知られている中で / 記録されている中で / 発見されている中で最も〜な○○」という意味になります。例えば、the oldest surviving castle「現存している最古の城」やthe largest discovered planet「これまで発見された中で最大の惑星」のように使われます。すでに失われてしまった城やまだ見付かっていない惑星は除いて、最古・最大と言っているわけです。

 今回は、まずpossibleとwayの相性の良さを出発点にして "possible way" を検索し、最上級形との相性の良さを確認しました。次に、その結果を踏まえ、最上級形の側からpossibleと同様に「最上級の範囲を限定する働き」を果たすsingle / availableといった形容詞やいくつかの動詞の現在分詞や過去分詞を抽出しました。語のタイプを検索対象にすることで、意味は異なっていても役割を同じくする語を抽出することができるわけです。

Asahi Weekly, October 21, 2007より

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