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【PERSPECTIVE】悩み解決!

Q&A 英語の質問箱

東洋大学教授 赤須薫

 Q:5月6日号のWHAT'S HOT欄の第4パラグラフに次の部分があります:

 His debut album came out in the U.K. in July last year to critical and commercial success, so he is obviously happy with it, right? Wrong.

 下線部のto critical and commercial successはwith critical and commercial successではいけないのでしょうか。いけないとすればなぜなのでしょうか。(横浜市 杉山大六)

 A:アメリカ人の友人に尋ねてみたところ、with critical and commercial success ではunidiomaticだという答えが返ってきました。「(明確に間違いだとは言えないかもしれないが)英語としては不自然」ということです。ことばの問題というのははっきりと白黒をつけることができる場合もありますが、往々にして程度問題でどっちつかずということが多いのも事実です。

 「なぜおかしいか」という問いに対する私の回答ですが、一応次のようにお答えしたいと思います(100パーセントの自信があるわけではありませんが)。withという前置詞は基本的に「(ものごとが)隣接している」という関係を表します。これを時間的に見ると、「同時性」とも言えましょう。それに対して、toという前置詞は「〜の方向へ」という意味で、そこには「距離」が見て取れます。つまり、「離れている」わけですね。これを時間的に見ると、「時間にずれがある」すなわち「時差」が感じられるわけです。

 このことを念頭において上記の文を眺めてみると、「デビューアルバムが出た昨年7月」と「それが売れて成功を収めて満足している(はずの)今」との間には当然ながら「時間のずれ」があることになります。こういうことが関係しているのではないかと思われます。

 Q:6月3日号PERSON ON THE COVERの記事に関して質問があります:

 He attributes that power from having competed in the track-and-field club ...とありますが、下線の部分のfromはtoでなくてもよろしいのでしょうか。(藤沢市 森川清雄)

 A:結論から言いますと、ご指摘の通りで、確かにtoの方がよいと思います。それの方が「語法的に正しい」と言えます。

 さて、間違いにも種々のものがあり、単純な書き間違い、思い違い、印刷間違いなどがある一方で、理由のありそうな「意味のある」間違いもあります。このような後者に属する「間違い」は実は面白い問題を含んでいると思われ、一考に価します。つまり、どうしてこういう書き方になったのか、その理由があるのではないかということです。

 問題の文の趣旨は「(ゴルファーの)石川君は中学の時に陸上競技で頑張っていたことが今のパワーの源になっていると考えている」ということになりますね。つまり、that power comes from having competed in the track-and-field club in junior highという文を背景として想定することができると思われます。あるいは、書き手の脳裏ではそういう内容が働いているのではないかと想像することができます(それでは、これの証明をしてみろと言われるとこちらもそれは確かに困ってしまうのですが)。そこでこのような文が登場すると考えることはあながち間違ってはいないのではないかと推測されるのです。

 普通ならfromなんだけれどもtoも使われるというよく知られた例にdifferent fromがありますね。これもかなり明確な理由の存在を指摘することができますが、説明のための紙面スペースが足りません!悪しからずご了承下さい。

Asahi Weekly, December 9, 2007より

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