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【READING PRACTICE】

上級を目指す英文精読講座

薬袋 善郎 日本教育フォーラム講師

 今回は英国の放浪詩人W.H.Davies(1871〜1940)の "The Autobiography of a Super-Tramp" (1908) です。彼は24歳のとき単身アメリカに渡り、6年間浮浪者としてアメリカ大陸を放浪します。やがて、無賃乗車のため急行列車に飛び乗ろうとして失敗した彼は片脚を失い、帰英した後2年間の乞食生活を経て、詩人として文壇にデビューします。そこまでの顛 (てん) 末をつづったのが、この名作「超放浪者の自叙伝」です。ここに取り上げたのは、Daviesが、Brumなるアメリカでも名の知れた乞食の知遇を得、乞食道を仕込まれながら愉快に物乞い生活を始めた頃を描いた一節です。2人はBrumがもらってきた食べきれないほどの「お恵み」を堪能しています。

【問】下線部を和訳しなさい。
 "Ah," I said to Brum, as we sat in a shady place, eating a large custard pudding from a boarding house, using for the purpose two self-made spoons of wood ― "Ah, we would not be so pleasantly occupied as tramps in England. We would there receive tickets for soup; soup that could be taken without spoons; no pleasant picking of the teeth after eating; no sign of a pea, onion or carrot; no sign of anything, except flies." Two-thirds of a large custard pudding between two of us, and if there was one fault to be found with it, it was its being made with too many eggs. Even Brum was surprised at his success on this occasion. "Although," as he said, "she being a fat lady, I expected something unusual." Brum had a great admiration for fat women; not so much, I believe, as his particular type of beauty, but for the good natured qualities he claimed corpulence denoted.

【解説】
 下線部のbe occupiedはbe occupied (in begging)「(物乞いに)従事する」という意味です。ところで「as 原級 as 〜」を否定文で用いると、しばしば前のasがsoに変わります。そこで、下線部をこの構文だと考えて「私たちはイギリスの浮浪者ほど愉快には物乞いに従事しないだろう」と読む人がいます。これは「イギリスの方がアメリカより浮浪者は物乞いをしやすい」という内容です。

 しかし、筆者とブラムはアメリカで物乞いをして卵をたくさん使った大きなカスタード・プディングを恵んでもらい、それに舌つづみを打っているのです。さらに、筆者は「イギリスで無料でもらえるスープは具が入っていないお粗末な代物だ」と言っています。つまり、イギリスよりアメリカの方が浮浪者はずっと暮らしやすいのです。これと下線部の内容は矛盾します。

 そこで、この矛盾を解消するように下線部の読み方を変える必要があります。正解をいいましょう。下線部のasは「… not … so 原級 as 〜」のas(=従属接続詞)ではなく前置詞なのです。つまりbe occupied as trampsは「浮浪者として物乞いに従事する」という意味です。in Englandはtrampsを修飾するのではなく、we … trampsの全体を修飾し「イギリスでならば」という仮定条件の意味を表しています。これを受けてwould be occupiedという仮定法過去を使っているのです。文全体の意味は「イギリスなら、私たちは浮浪者としてこれほど愉快に物乞いに従事はしないだろう」となり、前後との矛盾は解消します。

 being madeは意味上の主語(=its)がついた動名詞で、wasの補語になっています。

 being a fat ladyは意味上の主語(=she)がついた分詞構文(=独立分詞構文)で、意味をはっきりさせるためにAlthoughという譲歩の接続詞がついています。

 He claimed that corpulence denoted good natured qualities. のgood natured qualitiesを関係代名詞に変えて全体を形容詞節にするとwhich he claimed that corpulence denotedとなります。ここからwhichとthatを省略したのが本文の表現です。

【参考試訳】
 「あぁ!」私はブラムに言った。私たちは木陰に座り、木を削って作った手製のさじを使いながら、下宿屋からもらった大きなカスタード・プディングを食べていた。「あぁ、極楽だなあ!これがイギリスだったら、こんなに愉快に乞食をやってるわけにはいかないよ。たしかにイギリスではスープの無料券をくれるさ。でも、さじがなくても飲めるスープだぜ。飲んだ後、楊枝で気持ちよく歯をせせる必要もない。なんせ豆や玉ねぎや人参なんてものは印もないんだから。入っているものといったら蠅 (ハエ)ぐらいのものさ」二人の間には大きなカスタード・プディングがまだ三分の二も残っていた。このプディングに一つ欠点があるとすれば、それは卵を多く使いすぎているということだった。ブラムもこの場の大収穫には驚いていた。彼の言い草はこうだ。「太ったご令嬢だったけど、何か変わったものをくれそうな気がしたんだ。」ブラムは肥満体の女性を高く評価していた。これは、私が思うに、彼特有の美人のタイプとして賞賛するというよりは、肥満体型が示していると彼が言う善良な人柄のためだった。

(毎月第1週・第3週に掲載します)


Asahi Weekly, December 17, 2006より

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