|
20回の節目を迎える〈東京の夏〉音楽祭が始まった。「響きの祝祭」をテーマにした今年は、イタリアのチェリスト、マリオ・ブルネロが指揮するサントリーホール公演で幕を開け、パキスタンやイランなどイスラム各国の音楽の演奏会や、ロシア・マリンスキー劇場芸術監督のワレリー・ゲルギエフがオール・ストラビンスキー・プログラムに挑む公演などが、都内各地の会場で8月7日まで多彩に繰り広げられる。
地域や時代を超えた大胆なテーマ作りは、世界各地で夏場に開かれるフェスティバルの中でも異彩を放ち、年ごとに注目度を増してきた。主催するアリオン音楽財団の江戸京子理事長に20年の軌跡を聞いた。
これまでで最も大きな転換点になったのが、第6回の「ジプシー、そして西洋音楽」だったという。ソ連社会主義体制の崩壊直後の開催だった。
「米ソの2極支配崩壊で、音楽でも西洋中心主義の見直しが進んだ。国境を超えて音楽を伝えた民族をテーマに取り上げたのは、偶然とはいえ、時代の流れを象徴していたと思う」
音楽祭にはその後、アジア、アフリカの民族音楽がひんぱんに登場する。「洗練され形式化した西洋音楽に比べ、ここには生活に根差した活力が満ちている」という思いからだ。
10回を超えたころから、テーマは音楽の周辺やそれが生まれた背景にまで広がっていった。「創造する女性」「ディアギレフ バレエ・リュスの20世紀」「映画と音楽」「音楽と文学」「儀式・自然・音楽」……。
「音楽は自己完結した芸術ではない。それを生みだし支える環境にも目を向けたかった。すると、環境や生態系の破壊を生んだ人間の欲望のメカニズムも見えてくる。神話や自然を取り上げたのは、合理主義とは一線を画するところに音楽の源があると考えたから」
音楽祭を巡る経済環境も20年間で激変した。バブル崩壊で大口の支援が減り、今は50万円、100万円規模の援助も求めて駆け回る。「重点的な支援をする企業が少なくなり、文化財団を作ってまんべんなく小口で支援するようになった。外国の都市と提携するなど、思い切った発想がこれからは必要かも知れない」
厳しい環境の中で勇気づけられるのは、聴衆の広がり。シャーマンの儀式や韓国の伝統音楽に、若者たちが口コミで集まってくる。
「リピーターも多い。気楽に舞台に上がり、一緒にパフォーマンスを楽しんでいる。彼らの姿を見ると、これからも続けられればと思います」
■第20回〈東京の夏〉音楽祭 公演日程
7月2日(金) 「マリオ・ブルネロ&オーケストラ・ダルキ・イタリアーナ」
その他の出演:紀尾井シンフォニエッタ東京、中野翔太(ピアノ)ほか
プログラム:バッハ「ブランデンブルク協奏曲 第6番」ほか
午後7時 サントリーホール 1万〜4千円
3日(土) 「響きの祝祭−みんなで踊ろう!夏の宵」
出演:井上道義&江戸京子(ピアノ)、田宮堅二(トランペット)ほか
プログラム:サン・サーンス「動物の謝肉祭」から、ほか
午後6時 草月ホール 5千円
5日(月) 「現代イタリアの作曲家−ジョバンニ・ソッリマの世界」
ゲスト:マリオ・ブルネロ(チェロ)
プログラム:ソッリマ「ヨーゼフ・ボイス・ソング」ほか
午後7時 津田ホール 4千円
8日(木) 「イラン古典音楽の現在−ホセイン・アリーザーデ」
出演:ハムアーバーヤーン・アンサンブル
プログラム:「ラーゼ・ノウ(新しい秘密)」ほか
午後7時 浜離宮朝日ホール 5千、4千円
10日(土)「アルジェリアの大衆歌謡"ライ"−シェイハ・リミッティ」
プログラム:「裂け、引きちぎれ!」ほか
午後6時 草月ホール 5千円
16日(金)「ピアノの新星1 中野翔太ピアノリサイタル」
プログラム:ラフマニノフ「ピアノ・ソナタ第2番」ほか
午後7時 紀尾井ホール 4千、3千円
21日(水)「ピアノの新星2 田村響ピアノリサイタル」
プログラム:リスト「ピアノ・ソナタ ロ短調」ほか
午後7時 紀尾井ホール 4千、3千円
23日(金)「南イタリア伝統音楽−タランテッラ」
出演:マルコ・ビズリー(ボーカル)ほか
プログラム:プーリア地方民謡「タランチュラに噛まれたら」ほか
午後7時 武蔵野市民文化会館 売り切れ
24日(土)、25日(日)
「パキスタンの宗教儀礼−カッワーリー」
出演:メヘル・アリー&シェール・アリーのアンサンブルほか
プログラム:「ウルス」の式次第によるカッワーリー
24日午後5時、25日午後2時 世田谷パブリックシアター 5千円
26日(月)「ゲルギエフのストラビンスキー」
その他の出演:東京都交響楽団
ナターリア・コルネーバ(ソプラノ)ほかのマリンスキー劇場の歌手4人
野平一郎、木村かをり、児玉桃、長尾洋史(ピアノ)ほか
プログラム:ストラビンスキー「詩編交響曲」「結婚」「春の祭典」
午後7時 サントリーホール 1万7千〜1万1千円
30日(金)「フランス音楽の今 ジョルジュ・アペルギス レクチャー・コンサート」
出演:ジョルジュ・アペルギス(作曲家)、リオネル・パントル(バリトン)
午後7時 東京日仏学院 千円
31日(土)「同 室内楽作品集」
出演:フレデリック・ダベリオ(アコーディオン)ほか
午後7時 HAKUJU HALL 3千円
8月4日(水) 「いま石井真木を語る」
お話:中村雀右衛門
演奏:「モノクローム」 林英哲&英哲風雲の会(太鼓)ほか
上映などもあり
午後7時 紀尾井ホール 3800、2800円
6日(金) オペラ ドニゼッティ「ルチア」
出演:マリエッラ・デビーア(ソプラノ)、レナート・ブルゾン(バリトン)
ダニエル・オーレン(指揮)、東京フィルハーモニー交響楽団ほか
午後6時半 新国立劇場 売り切れ
7日(土) ミクストメディア・パフォーマンス「うつつなれ」
出演:dots
午後1時、午後5時 スパイラルホール 2500円
(07/01)
問い合わせはアリオンチケットセンター(電話03・5465・1233)
7/30、31日公演のみ、東京日仏学院(電話03・5261・3933)
|