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トム・ブラウン、時代を挑発 古典と前衛、おかしみ誘う

2007年10月24日

 足首がまる見えの短いパンツに、ハイウエストのタイトなジャケット。トム・ブラウンは、そんな特異なメンズスタイルで話題を集める、ニューヨークのデザイナー。この秋、ブルックスブラザーズで新ラインをスタートさせ、高級ジュエリーのハリー・ウィンストンではメンズジュエリーを手がける。来日したブラウンに聞いた。

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自作のスーツを着たトム・ブラウン。米ペンシルベニア州出身。大学の専攻は経営学。俳優をへて95年からデザイナーに。04年春夏からプレタポルテを手がける。06年、米ファッションデザイナー協議会のメンズウエア・デザイナー賞を受賞=東京・六本木で

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トム・ブラウンがデザインした07年秋冬の「ブラックフリース」

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トム・ブラウンの08年春夏コレクションから。股間を布でおおったスーツ=ニューヨークで、大原広和氏撮影

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トム・ブラウンの08年春夏コレクションから。半袖のスーツに、両腕がつながったようなシャツ=ニューヨークで、大原広和氏撮影

 「トム・ブラウンの服が一番似合うのは、やっぱりトム・ブラウン」。このデザイナーに会った人は口々にそう話す。

 水泳やマラソンで鍛えたという筋肉質の体格に、少年のようなクルーカット。タイトなスーツに、ネクタイをきちんと結ぶ。袖もパンツも短いから、子供服を着たまま大人になったようなおかしみがあり、クラシックで典雅な印象もある。

 「50〜60年代の米国に関心がある。当時の男たちはきちんと装っていた。野球場でもソフト帽をかぶってネクタイをしている。そんな米国的な感覚や美意識をデザインに反映したい」

 ブルックスブラザーズが展開する新ライン「ブラックフリース」を手がける。米国のトラッドを代表する老舗(しにせ)ブランドが、189年の歴史で初めて外部デザイナーを起用した。

 「祖父も父もブルックスを着ていたし、私自身もブルックスで育った」というから、幸福な出合いだったのだろう。伝統的なスタイルをタイトなシルエットに落とし込んだ商品は、日本でもサイズによってはもう品切れで入荷待ちという。

 ハリー・ウィンストンではジュエリーを初めてデザインした。ここでも「米国的な美」を意識した。そのうえで「男性用だから、洗練されて、さりげないデザインに仕上げた」。

 俳優の経歴を持つためか、よく古い映画を見る。

 「ゲーリー・クーパーの『摩天楼』とか、スティーブ・マックイーンの『華麗なる賭け』など。デザインと直接結びつくわけではないが、いい刺激になる」

 こうしたクラシックへの関心から生み出される作品は、だが、受け手にとって心地よいとは限らない。例えば、9月にニューヨークで発表した自身のブランドの08年春夏コレクション。

 股間を布でおおったパンツは、15、16世紀のコッドピースを連想させる奇妙なデザイン。半袖のジャケットからのぞくシャツは両腕がつながったような印象。スーツからシャツ、ネクタイまですべて同じチェック柄というスタイルも。観客席は沸いたが、メディアの評価は分かれた。

 「重要なのは人々を挑発すること。クラシックに着想した作品だけど、受け手を違ったふうに考えさせたい。コムデギャルソンの川久保玲や渡辺淳弥ら、日本のデザイナーも同じことをしている」

 クラシックな装いに秘められたアバンギャルドな意思。ブラウンのファンという雑誌「エンジン」編集長の鈴木正文さんは、「男性の洋服に現代的な正統性をもたらそうと戦うドン・キホーテ。共感とおかしみを感じる」と話している。

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