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街で着たくなる「地味」 ジョン・ガリアーノ

2008年01月20日

 08〜09年秋冬メンズコレクションの大きな特徴のひとつは、「地味」である。デザインに奇抜さや華やかさは少なく、正統派のジャケットスタイルなどリアルクローズが多い。色も黒やグレーに加えて、ベージュやキャメルなど落ち着いたトーンが中心。観客席のバイヤーやジャーナリストの服装もいつもとは違って、かなりおとなしい。これまで派手さで目立っていた人たちも今シーズンは意外なほど地味なのだ。「外見よりも、男は中身で勝負」といったような主張が、ショーや観客席で感じられる。

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ジョン・ガリアーノ(08〜09年秋冬パリメンズコレクション)

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コムデギャルソン(08〜09年秋冬パリメンズコレクション)

 パリ・メンズコレクション2日目の18日は、そのブランドらしさを生かしながらも普通に着られるようなリアルクローズが目に付いた。ジョン・ガリアーノは、ルネサンス期の王子や汚れた姿の農民、はたまた死刑を執行される囚人や道化師風などいつものエキセントリックな演出やメークはあるが、ひとつひとつの服は街で着られそうな服だ。フォークロア調に何枚も重ね着して新鮮に見せる。なにしろ、ファーのジャケットの上にファーカラーのビッグコートを重ね、もこもこのニットの上に大きな革ジャンを羽織っている。ボトムは腰を落としてはくずるずるのジョッパーズ風パンツ。時に日本製のジーンズもはかれた。招待状は「ICE(アイス)」の文字をくりぬいた大げさなプラスチック板。ステージには、本物の氷の壁。スモークが煙る中、最後に登場したガリアーノ本人もいつもよりおとなしめな革ジャン姿だった。

 ジュンヤ・ワタナベのモデルが紺ブレにレジメンタルタイを締めているなんて、数シーズン前に想像できただろうか。基本は、ぴったりとしたシングルブレストのジャケットと典型的なビジネスマン風ネクタイという王道のスタイル。それをジュンヤ・ワタナベ流にカスタマイズしていく。ジャケットは一度仕立ててから解体し、背中にニットをはいだり、ジグザグ模様のボタンホールをつけたり。縫い目の強さなどで独特の味を出すために紳士服の工場ではなく、あえてワークウエア専門の工場で縫製したという。トラッドの老舗(しにせ)ブルックス・ブラザーズやダッフルコートで有名な英国グローバーオールとのコラボレーション作品でも、同様の解体を行った。極めて新しい手法や強いメッセージはないが、軽くてキュート。着る人にとって個人的な「いい服」になりそうな魅力がある。渡辺淳弥は「なんだかちゃんとした格好を自分でもしたくなったから。周りから見ても、気持ちいいじゃないですか」と話した。

 コムデギャルソンの会場は、ルーブル美術館近くのディスコ。デキシーランドジャズなどダンスホールを思わせる音楽を背景に、パンクやグランジ、スモーキングスタイルなど様々な要素をミックスした。タータンチェック地で切り替えたテーラードジャケットには、前がキルトスカートで後ろが半パンツのボトムを合わされ、えんび服のジャケットは裾が脱色されてぎざぎざに切り落とされた。ほとんどの服に張り付けられているのは、英国のパンクロック・バンド、セックス・ピストルズのアルバムデザインなどで知られるジェイミー・リードのグラフィカルな文字。反骨精神を暗く激しくではなく、明るく軽やかにあらわすリードの手法に似て、服の全体的な印象は楽しげだ。テーマは「タイム・フォー・マジック」。さあ、これから楽しい手品が始まりますよ、ということなのだろうか。デザイナーの川久保玲は「悪いことも多い世の中だけれど、楽しく良い方向に向かいましょうといいたかった」と舞台裏で語った。(編集委員・高橋牧子、写真は大原広和氏撮影) 

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