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究極のボヘミアン・ベーシック エルメス

2008年03月03日

 08年秋冬パリコレクションでよく使われている形容詞が、「Aristocratic(アリストクラティック)」。貴族趣味の、という意味だが、今シーズンは華美なイメージではなく、実は貴族の生活は意外に質実で、地味でも良い物を長く使うという傾向に対する理由からの言葉の使い方のようだ。

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エルメス(08〜09年秋冬パリコレクション)

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クロエ(08〜09年秋冬パリコレクション)

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ジョン・ガリアーノ(08〜09年秋冬パリコレクション)

 目立ちすぎず、一見は質素な感じがするけれど、よく見ると高級素材で粋な感じもして、長く着られる物。そんな指向を、そもそものブランドの立ち位置に戻って絶妙に表現したのが、3月1日にショーを行ったエルメスだ。

 ランウェイはペルシャじゅうたん。作品にもペイズリー模様などアラビア風のモチーフがたくさん使われている。しかし、服はいつもに増して上質なベーシックウエア。シンプルでシルエットにも何ひとつ過剰さのないテーラードコートや、革のトレンチコートだ。それに、カシミール模様のブラウスやニーハイブーツ、フリンジ付きの縄ベルトなど少し差し込むだけで、今シーズンらしいボヘミアンスタイルのムードを作る。

 色は黒、茶、モスグリーン、渋赤など地味だが、素材は極めて上質。圧巻はクロコダイルのスエードのジャケットだ。つやつやとした高価な革に惜しげもなくバフをかけて、さらに希少な品に変えて見せる。

 今季は全体的に服がシンプルな分小物のコーディネートが重要だが、エルメスは皮革製品を原点としたブランドとしてさらにバッグをアピールしようということだろう。モデルのほとんどが新作バッグを手にしていた。ミニケリーやスエードのボヘミアン調バッグ。フィナーレにいつものように走って登場したデザイナーのジャンポール・ゴルチエの肩には、珍しくバッグが斜めがけされていた。

 ジョン・ガリアーノの会場は、線香のにおいが立ちこもっていた。ハスの池の台座で回るお釈迦様の仏像や観音様、赤いちょうちん…東洋の宗教的な置物と共に、西洋的な天使の彫像なども少し置いてある。

 そんな大がかりな趣向にてっきりオリエンタルなスタイルが登場するのかと思っていたら、的がはずれた。ズアーブパンツなど少しは民族的な要素は入っているが、多くは、西洋のフェミニンなクラシックスタイル。ポール・ポワレを思わせる1910年代のコクーンシルエットのコートや、1930年代調のフェミニンドレス…

 きれいな色を少しだけくすませたハンカチーフヘムのドレスに、フリルを波打たせた毛皮のケープ。80年代の明るくパワフルな女性ボーカルの曲に乗って、バスマットで編んだカラフルなニット帽をかぶったモデルが、楽しげに品を作って歩いてくる。

 ガリアーノもまた、トレンドや時代に関係なく永続性のある服を作った。同時にデザインしているクリスチャン・ディオールで見せた60年代スタイルと違うのは、匂いたつような色気と自由さだ。

 パウロ・メリム・アンダーソンが手掛けるクロエは、いつものガーリーなスタイルに、メンズの要素をミックスした。透けるフリルのドレスに、ボーイフレンドから借りたようなチェックのジャケットや、ピンストライプのベストを羽織る。花のアプリケや刺繍など可愛らしいハンドテクニックをふんだんに施している。

靴はピンヒールで、バッグは高級感のある爬虫類革のクラッチだが、ヘアはゆるくまとめた三つ編み。ナチュラルでリラックス感のあるお出掛けスタイルは、今シーズンの典型的なトレンドだ。

(編集委員・高橋牧子、写真は大原広和氏写す)

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