現在位置:asahi.com>ファッション&スタイル>ビューティー> 記事 シルエットを重視した無彩色の服 ルイ・ヴィトン2008年03月04日 08年秋冬パリ・コレクション最終日は、次のシーズンの全体の流れを方向付けるような注目ブランドのショーが多いので、最後まで気が抜けない。ふと気がつくと、セーヌ河畔のヤナギが柔らかく芽吹いていて、サクラに似たピンクの花がちらほらとかすみ、木立の間でレンギョウが黄色く咲き乱れている。日本のサクラのつぼみの大きさに思いをはせながら、あと1日乗り越えようと気を引き締めなおす。
過去2シーズン、カラフルな色をアピールしていたトレンドセッターのルイ・ヴィトンは、今回は一転してモノトーンに近い抑えた色調で、シルエットを重視したハードな感覚の服を発表した。スタッフもいつになく全員黒い服を着ていた。 会場は前回と同じルーブル中庭の特設テントだが、装飾は全くなく、舞台も砂漠の砂丘を思わせるなだらかなグレーの半円球に、青白いほのかな明かりがさす簡素な作りだ。 モデルの頭には、前衛的な現代建築のような黒いモロッコ帽のような髪飾りが乗せられている。服はフレアスカートやサテンのドレスなどベーシックなのだが、腰や背中に大きくタックを寄せたり、特殊なカッティングを施したりして、幾何学的なシルエットを作っている。音楽は破裂音のパーカッション。腰にワイヤのかごをつけてボリュームを出したスカートもある。ブラウスの襟も彫刻のようにくるくると巻かれた。 服は前衛的だが、全体として清潔な砂漠を思わせる、感傷を排除したような透明感があった。ガラスを多用して造形的な効果を重視するフランク・ゲーリーの建築を連想させた。デザイナーのマーク・ジェイコブスはバックステージで「シェイプ、シェイプ! そしてグラフィック」と語った。 前シーズンは会場をサーカス小屋のように仕立ててカラフルで楽しいショーを見せたランバンも、今回は素っ気ない舞台作りでシルエットを重視した無彩色の服を並べた。前回は子供っぽいアイスキャンデーを観客に配ったが、今回はバーのつまみの塩辛いピーナツだ。 服はリボンを重ねたドレスや繊細なドレープでボリューム感を出した黒のドレスが中心。どれもランバンの伝統やデザイナーのアルベール・エルバスの得意の手法を駆使したもので既視感はある。しかし、ウエストがぎゅっと絞られヒップが立体的に上がり、マリリン・モンローのように抜群の女性的なシルエットを作っている。シンプルだがエレガントで、不思議な現代性も感じさせた。 ニナ・リッチといえば正統派のお嬢様ブランドという印象が強いかも知れないが、パリ・コレ屈指の若手前衛派オリビエ・テイスケンスが手掛け始めた1年半前から、見逃せないブランドになった。 今回のランウエイは、ウィーンの画家クリムトの絵を思わせる、まだらのさびた金色。服も同じ色調で、黄や赤銅色などと組み合わされて、体全体がクリムトの絵のような色調に見える。 基本はサテンのブラウスと80年代風の肩が大きいソフトジャケット、ごく細身のパンツの組み合わせ。ジャケットは夏物かと思うほど薄く軽い。ゆるくしどけなく編んだ三つ編みヘアに、涙の跡のようなパンク風なアイメーク。今シーズンのひとつの傾向である、暗く退廃的なロマンチシズムをうまく表現している。 (編集委員・高橋牧子、写真は大原広和氏撮影)
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