ブレゲ
グッチー=鎌田正平撮影
ブルガリ
シャネル
セイコー=鎌田正平撮影
高機能もファッション性も。スイスで4月に開かれた時計の2大見本市「バーゼルワールド2008」と「国際高級時計見本市」で、メーカーが女性向け商品にますます力を入れる様子がうかがえた。フォルムの美しさやトレンディーな色柄。男性向けと同じ本格的な機械式も採り入れる。顧客開拓の一策だが、時計にも創造的な装飾性や機能を求める女性たちの意向に沿う流れでもある。(編集委員・高橋牧子)
文字盤は、貝殻に繊細な彫り細工を入れたカメオ。煙るようなグレーの濃淡で3層に彫りこまれたヒマワリの花の中で、針が静かに時を刻んでいく。うっとりするほどロマンチックな、フランスの老舗(しにせ)ブレゲの新作。マリー・アントワネット王妃が「この世で最も美しく複雑な時計を」と注文したことでも知られるメーカーだが、女性物でこれほど工芸的で複雑な文字盤を作ったことは過去にないそうだ。
同社の金田福秀マーケティング・マネジャーは「時計というより、ファッション性の高いブレスレットの感覚。そんな位置づけの商品です」と解説した。
グッチは、服のデザイナー、フリーダ・ジャンニーニが手がけた造形的なフォルムの新作を発表した。モチーフは馬のひづめに打ち付けるくぎ。1960年代からこのブランドのシンボルのひとつでもあった。「服や靴などのファッション感度と合った時計を求める女性が増えたから」(広報担当者)という。
ルイ・ヴィトンも、デザイナーのマーク・ジェイコブスが初めて女性用の時計を手がけた。ディオールもジョン・ガリアーノが「ドレスや靴と同じ感覚の時計」として、幻想的な星空の柄を文字盤に使う。
スイスのボーム&メルシエは、女性デザイナーを起用した新ラインを発表した。シャープな流線形に加えて、「つめを傷つけないようにリュウズを大きくするなど、女性の使い勝手にも気を配った」という。
ブルガリは大人向けにデザイン性の高いジュエリーウオッチを充実させた。パテック・フィリップは、時計に指輪とイヤリングをセット販売する。
高級な機械式の導入も増えている。シャネルの新作は、複雑な機械式時計で有名なオーデマ・ピゲが機械部分を担当した。
女性向けらしい、小さくきゃしゃな商品も目につく。スイスのウブロやゼニスは男性用の人気モデルの女性版を発売する。ファッション性の追求と共に、働く若い女性でも頑張れば手が届く、20万〜40万円台の価格帯が増えた。
セイコーは06年にデビューさせたジュエリーウオッチラインの新作で、文字盤やベルトの色を軽やかなピンクや黄色などに変えた。ダイヤモンドの縁取りつきで税別48万円で発売する。このラインは出荷価格が昨年4〜12月の前年同期比で32%増だという。
同社で広報を担当する原教人さんは「ユーロ高で、日本製の人気が上向きになってきた。時計に限らず、国産の良いものを探そうとする最近の傾向が反映しているのでは」と話す。
高機能化について、スイスのブランパンの杉山知樹事業本部長はこう語る。「時計にも本物志向を求める女性は、これまで男性用をつけていた。そんな女性の需要にこたえたものです」