ルイ・ヴィトン・マルティエのイヴ・カルセル氏。48年生まれ。89年にLVMHグループ入社、02年から現職=東京都港区、郭允撮影
グッチのマーク・リー氏。米国生まれ。05年から現職
エルメスのパトリック・トマ氏。47年フランス生まれ。ペルノリカール社などを経て04年から現職
ラグジュアリーブランドのビジネスが、曲がり角に立っている。消費行動の変化や、為替の変動に影響され、盤石とみられていた欧米や日本でも成長が鈍っている。中国をはじめ、拡大する新興市場への対応も急務だ。今後のかじ取りを、どうするか。ルイ・ヴィトン、グッチ、エルメスの本社最高経営責任者(CEO)に、世界戦略と日本市場の分析を聞いた。(編集委員・高橋牧子)
◇ルイ・ヴィトン 新しい驚き伝えたい
1854年の創業以来、ルイ・ヴィトンが守り続けてきたことが三つある。どんな商品も自社工場で作ること。商品は卸を通さずにすべて自社販売する。三つ目は、セールや値引きをしない。この大方針は今後も決して変えない。ラグジュアリーブランドには品質保持と、顧客との信頼関係が欠かせないからだ。
その一方で、今後は顧客に新しい驚きを伝えることがより重要になっている。現代アートの村上隆やリチャード・プリンス、音楽のファレル・ウィリアムスらとの積極的なコラボレーションや、映像やネット販売で若い層へのアピールをさらに強化していかなければならない。
もう一つの柱は、環境問題への取り組み。オフィスでの太陽光の利用や、輸送時のトラックからこぼれる燃料を濾過(ろか)する装置などのほか、最近では製品発注の際の紙を廃止した。
日本は高齢化やユーロ高、流行構造の変化などで厳しい状況にある。しかし、品質と新しさへの要求レベルが世界で最も高いので、我々にとっては新しい試みの実験場。今後も最重要マーケットと位置づけている。
◇グッチ 市場求め、拡大路線で
04年を起点に、7年後の売り上げを約30億ユーロ(約4800億円)に倍増させる計画が着々と進んでいる。07年までの過去3年で、売上高46%増。同年度の営業利益は6億4700万ユーロで、前年より12.5%伸び、利益率は約3割になった。
こうした成果の理由は、グッチというブランドの伝統とクリエーティブディレクター、フリーダ・ジャンニーニの現代的なセンス、それに商品開発のバランスがうまく取れているからだ。今後もこの手法で進んでいきたい。
今、世界の市場を大きく二つに分けて考えている。日本をはじめ、米英、イタリアなど成熟したマーケットでは、売り場の環境などを、よりぜいたくで、かつ新鮮なイメージにしなくてはならない。
一方、アジアや東欧などの新興市場では、これまでの先進的な市場で培ったやり方をあまり変えずに守っていくことが必要とされている。
日本を除くアジア太平洋地域の07年の第4四半期の成長率は前年同期比37%で、なかでも中国は130%増。世界の人口は70億人近くもいて、まだまだ私たちのブランドを待っている人がいると思っている。私たちは市場を探して、拡大していきます。
◇エルメス さらに「超高級」志向へ
07年はグループの売り上げが平均12.5%増加した。中国や欧米が大きく伸びたが、日本の伸び率が低く、約6%増にとどまった。世界一の市場だった日本での伸びの鈍化は、ユーロ高のため。この3年間に価格が4割も上がった。
だがその間に、日本では、質の高さを求める傾向が高まった。これは、歓迎すべきこと。なぜなら、エルメスは今後、これまでよりもさらに上の「超高級」を目指しているからだ。
ラグジュアリーブランドは今、ピラミッドの頂点と底辺に分かれつつある。今後生き残るのは、頂点のブランドだけ。最高の素材と老舗(しにせ)のノウハウに創造性を加算していく従来の方法に、より磨きをかけたい。
日本法人の元社長、齋藤峰明をパリ本社の幹部に任命したのも、日本での業績を元に、高級品のイメージをさらに発展させるため。今後は年間30%の売り上げ増など望めないはずだと思う。10%程度の伸びは狙うが、むしろトップに居続けることが目標だ。