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08年モード回顧 リアル追求、重苦しさに反発

2008年12月22日

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写真拡大ミュウミュウは穴だらけの粗野な麻のドレスを発表した。

写真拡大ボヘミアンスタイルが流行した(グッチ)=大原広和氏撮影

写真H&Mの原宿店の開店では、寒空の下で前夜から泊まり込みの行列ができた=08年11月

写真02年パリの引退ショーでイヴ・サンローラン(右)とカトリーヌ・ドヌーブ

写真米国でも街ではリアルクローズが人気。映画「セックス・アンド・ザ・シティ」の一場面。

 後で振り返ってみると、08年が分岐点だった――。今年のファッション界は、そんな変動の年だったのではないか。ここ20年ほど続いたビッグブランドの売り上げ増が止まり、季節ごとに変化していたトレンドが通年でシンプルで実質的な自然派スタイルに変わった。一方で、海外の低価格ブランドの店が長い行列のできるほどの人気。ひとつの時代にピリオドを打つかのように、20世紀を代表する巨匠イヴ・サンローランも逝った。(編集委員・高橋牧子)

 今年ほど「リアル」や「普通」が強調された年はなかった。華やかさを競うような形や装飾は影をひそめた。2月のパリ・コレクションで、シャネルは学生が着るようなくたっとしたセーターとほつれたデニムのスカートを発表した。クリスチャン・ディオールも無難な50〜60年代スタイル。

 華麗さが特徴だったミラノのドルチェ&ガッバーナも、地味な色形のツイードスーツを並べた。デザイナーは「心地よさや安らぎを」と説明した。秋には、ジュンヤ・ワタナベが繕い跡を残したジャケット、ミュウミュウは、虫食いだらけの麻袋のようなスーツで質素さをアピールした。

 街では、自然派のボヘミアンスタイルが1年を通じて流行した。春夏は粗野な麻のストール。秋冬はムートンのベストやアニマル柄。森の生活を思わせるような素朴な重ね着スタイルも登場した。

 重苦しい社会状況に反発するかのように、色や素材、デザインが軽やかになり、服の実重量も軽くなった。メンズでは、ショートパンツのビジネススーツが発表され話題を集めた。

 中国やロシアなどへの市場拡大で息をつないできた高級ブランドも、米国の金融破綻(はたん)に端を発した世界的経済不況で拡大路線の見直しを迫られた。経営刷新を狙って、グッチの社長が交代。高級ブランドの筆頭だったジル・サンダーは日本のオンワードが買収した。

 秋以降はカルティエやディオール、ルイ・ヴィトンなどが円高を理由に一斉に値下げした。ブランド同士のコラボレーションやアート展なども開催して消費の喚起を図ったが効果はいまひとつだった。12月、ルイ・ヴィトンは東京・銀座で計画していた世界最大級の旗艦店の出店を撤回した。

 一方、「安くてオシャレ」なブランドが話題を呼んだ。スウェーデン発のH&Mが秋、東京・銀座と原宿に出店。久しぶりに開店前の長蛇の列が見られた。英国のトップショップも店舗拡大策をとり始めた。どちらも、厳しい選択眼を持つ日本市場で、満を持しての出店だった。また、「軽く温かく手ごろな値段」が受けて、ユニクロのヒートテックが大人気となった。

 大物デザイナーの死去や引退も印象的だった。イヴ・サンローランやミラ・ショーンが亡くなり、ヴァレンティノが引退した。高級ブランドのアウラ(本物の存在感)で、香水や小物などを大量販売してきたファッションビジネスの構造にも大きな揺らぎが出てきたようだ。

 現代の産業社会は、イメージや記号性で大量消費を実現してきた。今年に強調された「リアルさ」とは、そうした社会の「非現実性」への、反語なのかもしれない。

 そういえば、ファッション界では末尾に8がつく年に大変化が始まることが多かった。第2次大戦後、1948年のディオールのニュールックの流行、68年のプレタポルテの台頭、78年のキャリアブーム……。

 来年以後は、「真のリアル」な装いが形を明確にしてくるに違いないと期待したい。

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