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ファッション界も「チェンジ」 新しさより「本質」追求

2009年2月5日

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写真拡大守本勝英撮影のアンダーカバーの作品

写真拡大デザイナーの高橋盾=松本敏之撮影

写真拡大プラダ=大原広和氏撮影

写真拡大コムデギャルソン=大原広和氏撮影

写真拡大シャネル=大原広和氏撮影

 改革から「チェンジ(転換)」の時代へ。ファッション界でも今年は、服づくりや表現の仕方をがらりと転換する動きが目につく。ショーをやめてアートや写真に踏み込むデザイナー、新しいデザインをあえて追わないブランド、着る人が形を決める服。これまでの仕組みからいったん離れ、物を作り表現する楽しさの基本に返って考えてみる。「自由」を見直そうとしている点で、時代と共鳴している。

    ◇

 昨年末の深夜。東京・青山の人気クラブで、ぬいぐるみ作りの即興ライブが始まった。金属の棒を土台に、みるみるうちにむくむくの不思議な動物ができ上がっていく。作り手は、東京の人気ブランド「アンダーカバー」のデザイナーの高橋盾だった。

 高橋は02年から参加してきたパリ・コレクションでのショーを08年秋に中止し、ぬいぐるみと服を写真家・守本勝英と共に撮った写真展を開いた。写真はSF映画のように壮大で幻想的。だが、大木が空中に浮かぶシーンもクレーンを使いすべて実写した。「費用も手間もショーの倍かかった」という。

 ショーのために新しさや見栄えを要求する既存のシステムは八方ふさがりと、高橋はみる。「抜け出すには表現の自由を徹底的に守るしかない。ショーの中止と写真展は、それを的確に表現するための方法だった。自分が本当に作りたいのは実際に着られる現実的な服なんです」

 パリ・コレに10年参加した永澤陽一も去年からショーをやめ、軸足を現代アートに移した。「ファッションデザインが消費社会をリードした時代は終わった。着ることを前提としない自由なデザインとは何かを探したかった」と永澤。

 エルメスは今年、「美しき逃避行」をメッセージとして掲げている。ブランドの原点の「軽やかな遊び心や旅」をみつめ直そうということなのかも知れない。

 今年の春夏の新作のテーマに、「本質」や「プリミティブ(根本的)」を掲げるブランドが多い。プラダは「物事の本質の追求」として、ごくシンプルな筒型ドレスを発表した。生地に金属糸が織り込んであり、服の形をある程度変えることができる。プラダの「本質」には、着る側の自由と、それを認める自由が含まれているようだ。

 パリの老舗(しにせ)クリスチャン・ディオールやランバン、凝った革細工で知られるイタリアのボッテガ・ヴェネタも、新しい形を狙わず、得意技をより丁寧に洗練させて見せた。日本のコムデギャルソンは、80年代に「原爆服」などと評され世界を驚かせた黒い服に再び立ち返った。

 シャネルのショーでは、ココ・シャネルが初めて作品を発表したパリ・カンボン通りの店を舞台にそっくり再現した。今年は出発点だったオートクチュールに特に力を注ぐという。

 過去のスタイルや作品を現代的にデザインし直すやり方は、これまで何度も試みられてきた。だが今回のように、既存の発表システムそのものから外れたり、デザインの新しさ自体を避けたりすることが、一斉に見られたことはなかった。

 「新しさ」が人々の夢や欲望を刺激して、ファッション産業は景気にあまり左右されない成長を長く続けてきた。しかし、そうした時代は急速に終わりかけている。そうした事実を、ファッションの作り手側がはっきりと意識しはじめたことの表れなのではないだろうか。(編集委員・高橋牧子)

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