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80年代スタイルが復活 明るい未来 求める時代

2009年6月8日12時17分

写真:大きな肩パッドがパワフルな80年代風ロングコート(ルイ・ヴィトン、09年秋冬)拡大大きな肩パッドがパワフルな80年代風ロングコート(ルイ・ヴィトン、09年秋冬)

写真:まさにイケイケのボディコンドレスをほうふつとさせる(バルマン、09年秋冬)拡大まさにイケイケのボディコンドレスをほうふつとさせる(バルマン、09年秋冬)

写真:当時流行したすそが細くなるペグトップパンツも(リミ・フゥ、09年秋冬)拡大当時流行したすそが細くなるペグトップパンツも(リミ・フゥ、09年秋冬)

写真:じゃらじゃらのネックレス(シャネル、09年春夏)=いずれも大原広和氏撮影拡大じゃらじゃらのネックレス(シャネル、09年春夏)=いずれも大原広和氏撮影

 パワフルな80年代スタイルがトレンドとして復活している。肩パッドや大胆な柄。初夏の街では、すそすぼまりのパンツやドルマン袖を着た人も。比較文明学などを研究する北山晴一立教大学教授に、なぜ今、80年代なのかを考察してもらった。

 ファッション関係者を中心に、80年代を懐かしむ声がよく聞かれる。じっさい、昨年くらいから、80年代的な傾向がいくつも再登場している。

 たとえば、今春のシャネル。「ラグジュアリー・ブランドよ、よみがえれ」とでもいいたいのであろうか、装飾過剰の傾向も針がほとんどマックスにふれている。といっても、デザインはカール・ラガーフェルド。彼がシャネルを手がけ始めたのが、83年。イネス・ドゥ・ラ・フレサンジュを登用してスーパーモデル・ブームの発端をつくった。

 他にもある。ボディーコンシャスの復活。09年秋冬のバルマン、シャネルの肩パッド入りのパワースーツは、その再来である。そういえば、80年代ファッションアイコンのひとりだったマドンナが、最近、ルイ・ヴィトンのミューズになっていた。

 そもそも、80年代を特徴づけるものが何であったか。ひとつは強い女性のイメージがマーケティングされたこと。もうひとつは、ブランドの市場が大きくなったことだ。

 ちなみに、ボディコンは、自分の幸せ感覚の重視であり、装飾・色使い・アクセサリー・ゴールド嗜好(しこう)は、明るい未来への期待。ブランド市場の拡大は、ライフスタイルの「多様性」への信頼に裏づけられたものであったろう。

 こうした80年代への振り返りは、何を意味するのか。消費社会論的に眺めてみたい。

 確かに80年代は、70年代までの変化を受けて、これからどのような社会を作っていくのかという、自問自答の時代であった。言い換えれば、プラスに出るかマイナスに出るかは分からないが、様々な可能性が開かれていた時代でもあったのである。

 残念ながら日本では、80年代が含み持っていた可能性をひとつひとつ潰(つぶ)してきたように思えてならない。

 すでに当時、格差の拡大・階層化への不安感が表明され、不公平問題への関心が高まっていた。にもかかわらず、どのような社会をつくっていくかという議論、生活の質を問う議論がどれだけなされただろうか。

 80年代の消費は、70年代までの生存のための消費から、個人の生き方に軸足を置いた消費へと転換した。周知のように家電製品を中心とする世帯消費が飽和状態に達し、経済成長を維持するためには、個人消費をターゲットとして開拓していく以外に方法がなかったからである。

 しかし、個人消費の積極的肯定が、結果として、人々の関心を社会や政治よりも自分のライフスタイルや家族へと向かわせ、自分中心の価値観「ミーイズム」を拡大させてしまった。「ミーイズム」はいわゆる個性消費、いいかえれば他者との差別化を可能にする商品の消費へと人々を巻き込み、個人主義の本来もつべき公的側面を欠落させた「快楽の個人主義」を膨張させ、バブルの90年代へと日本社会を引きずって行ったのではないか。人々が自らの生き方や働き方について、さらには社会の仕組みに関する議論をないがしろにしている間に、世の中は、「自己責任」の名のもとに、社会のセーフティーネットをことごとく壊してしまったように見える。

 なぜ、80年代か。今春、朝日新聞のファッション面で、「09年秋冬のニューヨークコレクション、不景気癒やす美の競演」との文言を見た。夢多き明るい時代だった80年代を再現してカラ元気でも出そう、といった角度からのみ80年代を解釈しているのであれば、あまりにも切ない。

 今回の金融不況に端を発した世界的な「不安トレンド」状況は、人々に考えることを教えたのだと思う。

 80年代を別の方法でたどり直すとしたならば、今度は分かれ道のところで、「ひとが生きやすい社会」のほうを選べるかもしれない。そんな期待が、80年代への注目の理由なのではないか。

    ◇

 北山晴一 立教大学教授

 きたやま・せいいち 44年、東京生まれ。パリ第3大学専任講師などをへて89年から現職。立教大大学院21世紀社会デザイン研究科委員長も務める。専門は社会デザイン論、消費社会論、モード論。主著に「おしゃれの社会史」「官能論」など。

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