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服の概念、問い直す試みも 2010年秋冬パリ・メンズ

2010年3月8日11時14分

写真:ドリス・ヴァン・ノッテン拡大ドリス・ヴァン・ノッテン

写真:ラフ・シモンズ拡大ラフ・シモンズ

写真:コムデギャルソン拡大コムデギャルソン

写真:ランバン拡大ランバン

写真:ケンゾー拡大ケンゾー

写真:イッセイミヤケ拡大イッセイミヤケ

写真:ティミスター=すべて大原広和氏撮影拡大ティミスター=すべて大原広和氏撮影

 1月下旬に開かれた2010年秋冬のパリ・メンズコレクションでは、服の形や機能性を問い直すような興味深い試みがいくつか目を引いた。また、この不透明な時代にひと息つこうという提案がある一方で、100年近く前の混迷にいまを重ねたデザイナーもいた。

 婦人服に比べて紳士服の様式は限られる。ジャケットやスーツといった完成された服は、ディテールや色柄を変えてもそれほど代わり映えするものではない。換骨奪胎するためにまず採りうる手法は、それらを解体してみることだ。

 ドリス・ヴァン・ノッテンは、英国のパブリックスクールの制服を思わせるストライプのジャケットの袖を切り落とした。前季のランバンのスーツでも見られたアイデアだが、インナーやパンツにまったく違う色や柄を組み合わせてまとめる技はさすが。袖なしのトレンチコートも披露した。

■解体と装備

 そのトレンチをラフ・シモンズはバラバラにした。一見、一着に見えるコートが実は上、中、下と三つに分かれ、組み合わせて着られる。ほかにもカラフルな面ファスナーで前ばかりか背中まで開くジャケットなど、既存の服の概念を壊すたくらみに切れ味を見せた。

 コムデギャルソンにはシモンズとは逆の驚きを感じた。一見、3ピースに見えるが、ベストは中で上着とつながっていて胸には硬いプラスチックの板が入っている。靴のつま先も二重に覆われ、ファー付きの帽子は頭をすっぽり覆う。

 デザイナーの川久保玲は「プロテクターの機能性と、制服としてのスーツを結合させた」と語る。無数の電波や情報が飛び交う都市を生き抜くための装備のような服には、精神を防御する意味も込められている。

 ランバンもスーツに“装備”を施した。ボタンがなくすっきりしたスーツをコルセットのようなベルトでさらに絞る。パンツは革靴に布を継いだようなブーツに収め、大きなリュックを背負う。肩口からは切り替えしのような袖。全体として洗練されて見えるバランスが見事だ。

 パリの洗練というより、フランス流のユーモアや日常を感じさせるコレクションもあった。ケンゾーはフランスの映画監督ジャック・タチが自作自演したキャラクター、ユロ氏のスタイルをモチーフにした。ややくすんだ色調の、様々な幾何学柄や格子柄を使ったニットやコートは懐かしい空気もまとう。

■平穏と混迷

 イッセイミヤケのテーマはカフェ。カジュアルだが社交の場でもある空間から想を得た遊び心のある服を並べた。デザイナーの藤原大は「厳しい時代、みな懸命に前に進もうとしてきたが、ここらでコーヒー一杯ぐらいの心の休憩をとってもいいのでは」と話す。

 そんな穏やかな日常の対極にある戦禍や混乱から想起した服が、コレクション最終日の夜を飾った。

 オートクチュールと合わせて発表したティミスターは、ロシア革命前夜の1915年をテーマに掲げた。当時の混迷をいまの時代状況の中に見たデザイナーが打ち出したのは赤く彩られたミリタリースタイル。つやめく深紅の優雅さと温かい鮮血の生々しさが同居する服は、どこか悲劇的で繊細な美しさを放っていた。(菅野俊秀)

◇写真はすべて大原広和氏撮影

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