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伊ブランド「D&G」日本撤退 先進国に「あふれる模倣」

2010年6月1日10時55分

写真:D&G10年春夏デニムシャツのスタイル=大原広和氏撮影拡大D&G10年春夏デニムシャツのスタイル=大原広和氏撮影

写真:「D&G」08年春夏の小花柄ドレス=大原広和氏撮影拡大「D&G」08年春夏の小花柄ドレス=大原広和氏撮影

 イタリアの人気ブランド「ドルチェ&ガッバーナ」のセカンドブランド「D&G」が、服と革製品の日本での販売を今年の秋冬物で取りやめる。来年1月末に直営16店を閉じ、従業員約100人は解雇するという。

 男女それぞれと子供の服を、百貨店内などに別々の店を構えて売る方針が災いしたようだ。近年の百貨店不振がひときわ影響しただろう。イタリア本国や中国、ロシアなどでは大都市に、効率が良くブランドイメージが伝わりやすい大型店を開いているが、日本は地価が高く、それも難しい。ただ、同社本国のクリスティアーナ・ルエラ常務取締役は、こうもコメントを寄せた。「日本市場に氾濫(はんらん)するD&Gの模倣品が大きな障害になっている」

 D&Gは1996年に日本市場に参入。ブランドロゴ入りTシャツや、小花柄のミニドレス、穴あきジーンズなどを次々ヒットさせた。日本国内の売上高は非公開だが、数十億円と推測される。卸が少なく世界でのシェアは3%だが、アジア市場では34%を占める。今年4月も前年同月比で約17%増だったという。

◆人気ブランドゆえの悩み

 一方で、こんな現象も起きた。近年、都心の「ギャル系」と呼ばれるファッションビルや、主要駅の駅ビルなどで、D&Gの新作とそっくりの服が、いくらでも目につくようになった。縞(しま)の間隔まで似たマリンドレス、フリルの寄せ具合が同じ小花柄のロングドレス、かすれた色が酷似する小さなデニムのシャツ……。

 国内のあるブランドのデザイナーは「D&Gを参考にしていれば、まず間違いない」と話し、著名ファッション雑誌が、「参考」を踏まえた服を「等身大のリアルなファッション」と薦める。

 同社の言う「模倣品」という表現の適否はひとまず置こう。ブランドロゴなどの、あからさまな盗用は分かりやすい。シャネルやルイ・ヴィトンなどの大ブランドは、専門チームを使って模倣品業者の摘発もしている。

 それに比べ、デザインの「模倣」や「盗用」の証明は簡単ではない。ファッションに限らないが、多くの作品には、先行する作品がある。「流行」との区別がつきにくい場合もある。有名ブランドには「模倣されてこそ本物」などと豪語する例もある。

 欧米でも一時期、ファストファッション企業の「デザインコピー」が問題になったが、企業責任が厳しく問われて激減した。D&Gが「模倣」をほのめかした日本国内のアパレルメーカーの多くは小規模で、デザイナーも若く、倫理観が未熟という事情もあるだろう。

 ひとつ言えることがある。D&Gが言う「模倣品」の「氾濫」は、本家D&Gに人気があるからこそ起きた。結果として、本家が居場所を失い、日本のファンの手に、届きにくいところに去る。

 いまや世界的なファッション先進国として自他ともに認める日本。アジアの新興市場を「コピー天国」などと揶揄(やゆ)する声も聞く。しかし、日本でも、人気ブランドが「模倣」を口にして去ってゆくのは、やはり残念でならない。作る側や売る側に矜持(きょうじ)を、着る側にはブランドやデザインの成り立ちにもう少し思いを致してほしい、と思うのだ。(編集委員・高橋牧子)

    ◇

◆セカンドブランド

 多くはデザイナーブランドが普及版として開発したブランド。デザイン感覚や高級感を残し、価格を抑えているのが特徴。ドルチェ&ガッバーナ社は「D&G」が「単なる普及版ではなくなった」という理由で「D&G」を「ヤングブランド」と呼んでいる。

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