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秋はバルドーとドヌーブが手本 銀幕クラシック再びトレンドに

2010年6月18日10時31分

写真:セリーヌのピーコート拡大セリーヌのピーコート

写真:ミュウミュウの60年代調ミニドレス=写真はいずれも大原広和氏撮影拡大ミュウミュウの60年代調ミニドレス=写真はいずれも大原広和氏撮影

 6月も半ば。そろそろ秋のトレンドを先取りしたスタイルが現れている。注目すべきは、1950〜60年代の銀幕の女優を思わせる、優雅で神秘的なクラシック。ニュールックやAライン、黒いサングラス……。何度か復活してきたシネモードだが、今年は、古き良き時代の美や装いを見つめ直し、楽しさや奥深さを継承しようという呼びかけに見える。

 今秋の特徴は、米国的なセクシーさのマリリン・モンロー、明るくキュートなオードリー・ヘプバーンなどとは違う。欧州名画のファム・ファタル(妖婦)や、神秘的なヒロインのイメージが色濃い。フランス女優の代表格であるブリジット・バルドーとカトリーヌ・ドヌーブを発想の源にするブランドが目立つ。

■「素直な悪女」

 ルイ・ヴィトンはバルドーの出世作「素直な悪女」(56年)のイメージ。貧しく奔放なヒロインから取り入れたのは、胸と腰がぴったりしたトップスや、裸足で歩いているような甲の浅いオペラパンプスなど、ちょっと小悪魔風のデザインだ。

 この作品のダンスホールの場面などで、他の女優たちが着ていた、フィット&フレアの50年代風ニュールックや、小さな細身のセーター、胸元を深く見せたコルセットに、ゆったりと広がるひざ下丈スカートなどもある。

 映画の設定は第2次大戦後。切実な日々にも、復興への活力が満ちていた。そんなエネルギーを感じさせる、当時のスタイルの凹凸を思い切り強調し、最新素材に置き換えた。淡い花柄のドレスは、日本のハイテク技術でパッチワーク風に見せる生地が、現代的な立体感を与えている。黒いサングラスや長手袋、小さなボストンバッグも、当時の女優らしい雰囲気。

■「シェルブールの雨傘」

 プラダはバルドーと、もう1人、やはり50年代に活躍した英国の女優ベリンダ・リーに焦点を当てた。フィルム・ノワールを思わせる暗い色調のドレスは、胸をダーツで強調し、スカートは裾(すそ)広がりのAライン。靴は先のとがったレトロなパンプス。分厚い毛糸のハイソックスを合わせるミスマッチ感覚は、新しい味付けだ。

 同じデザイナーが手掛けるミュウミュウは、若き日のドヌーブをほうふつさせるミニドレスが印象的。フリルのついた、オレンジや紫の60年代調Aラインドレスに、「シェルブールの雨傘」(64年)を思い出した。

■「昼顔」

 いま最も注目されるブランドのひとつ、セリーヌも「昼顔」(67年)のドヌーブを念頭に置いた。「厳格な人妻で背徳的な面も持つ、複雑で神秘的なイメージにひかれた」とデザイナー。かっちりしたピーコートは淑女風、フランスの高級レースで知られるカレー産の、透けるストレッチレースは妖(あや)しい色気が漂う。ルキノ・ビスコンティ監督の映画もアイデアの核にしたという。

 イヴ・サンローランの、肌の露出を抑えた黒衣の貴婦人スタイルも、ドヌーブを思い起こさせる。つばの広いキャプリーヌ帽にサングラス、短いマント。ドヌーブは喪服姿もよく似合う。

■グレタ・ガルボ

 マックスマーラは米国サスペンス映画「白い恐怖」(45年)のイングリッド・バーグマンや、「ドクトル・ジバゴ」(65年)のロシアンスタイルなどを参考にした。

 活躍した時代は20〜30年代だが、やはりミステリアスな美貌(びぼう)を持つグレタ・ガルボのスタイル展を今春、サルヴァトーレ・フェラガモがミラノで開いた。会場には彼女の服や靴、ワードローブまでが、往時そのままに展示された。キュレーターのステファニア・リッチさんは企画の意図を「ガルボの意志の強さや私生活を重視する姿勢が現代女性に通じる。古き良き時代に、彼女が何をまとい、何を思っていたのか。今と比べて想像してみて」と話していた。(編集委員・高橋牧子)

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